第4話

【場所:旧校舎地下倉庫】

変革達人クラブ、緊急会議中──


「おい、で、結局このSDカードに何が入ってるかって……」

「校長のアレだよ。たぶん自分から喜んでムチの先になってるアヘアヘしてるやつ……」

「いや、ちょっと待って、これ、ヘタしたら警察案件じゃね?」


そのとき、空気が変わった。

バサァ……。背後の扉が“意図せず”開いた。


……ズズン……ズズン……。


「ごきげんよう、坊やたち。保健室の時間ですわよ」


天井に髪が擦れそうなほどの威圧感。

2m40cmの美貌巨人、槙島カナエ。

だがこのときの彼女は、ただの保健の先生ではなかった。

瞳孔は若干開き、口元は笑っているのに目は笑っていない。

白衣はきちんとボタンまで締められているのに、なぜか“戦闘服”のように見える。


公知、硬直。

清水、絶句。

だがそのとき──空気を読めない一人が、言ってしまった。


「わあ、また来た!……ていうか、デカいなあ槙島先生……えーっと、なんだっけ、あれ……エッフェル……いや、違う。もっとスッとした感じ……そうだ!スカイツリー先生!」


……ピキッ。


空間が、凍った。


「……今、なんと?」


槙島の左眉が1ミリだけ跳ね上がった。

あれは、部活動記録上“槙島式・第一段階臨戦状態”の兆候である。


「い、いやほら、誉め言葉っていうか、こう、すらっとしてて、都会的で……」


「スカイツリー、ですって?」


白衣の内ポケットから、医療用ゴム手袋を取り出す。

装着音がなぜか“ズチュッ”と聞こえる。


「えっとその、ちょっと例えが……」

「そう、例えが雑。私は高さを競って生きてるわけじゃないの。**愛を支えるために立っているの。**スカイツリーではなく、“抱擁できる人間塔”でありたいのよ……わかるかしら?」


「なっ、何言って……!?」

「いやだって、それ言ったらもう塔じゃなくて生き物じゃ……あっやば、また言った……」


「言葉の選び方って、大切よ?」


ズズン……!


彼女の手がそっとストレッチベッドの下をまさぐる。

カチャ。何かのロックが外れた。


「この“保健用拘束ベルト”、試作品だけど……あなたたちで試してみようかしら?」


「逃げろ!!全力で逃げろ!!」


「待って、公知くんだけはそのままいてもいいのよ?あとで個別に指導するから……ふふふふふ」


その笑顔に、光はなかった。

ただ“高さと深さ”だけが、あった──。

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