第25話 本当のこと
翌日、いつの間にか寝入ってしまった私のそばにはリアムの姿はなかった。
仕事に向かったのかと思っていたが、リアムの事で話があると、部屋に訪れた父と兄達の話でリアムが屋敷にいない事を知る。
朝食後、兄達と事業の話をする為に執務室にいた時、リアムが父の元を訪ね、三日でいいからお暇させて欲しいと願い出たそうだ。
そして、自分が魔女の末裔である事を打ち明けたという。
父を始め、その場にいた兄達もその言葉に驚いてはいたが、定期的に里帰りと称してはいたが、リアムが森へと行っていたことは近隣を警備している警備隊から報告を受けていたのもあって、その事実を受け入れる事ができたそうだ。
私は昨晩のリアムの話を思い出しながら、きっと私の為に森へ行ったのだと悟る。
「ラファエル、お前は知っていたのだな?」
ベットの側にある椅子に座る父は、どこか不安そうな表情をしていた。
「はい・・・リアムが初めて里帰りをしたいと申し出た時に、リアムから聞いていました」
「そうか・・・ラファエル、私達領主が代々受け継いでいる決まり事を知っているな?」
父のその言葉に、私は俯き小さく頷く。
「リアムの話で、まだあの森に魔女達が数人暮らしている事はわかった。だからこそ、尚更、決まり事は例外なく報告すべきだった。私達も森の近くで何度か見かけていると報告は受けていたものの、お前からもリアムからも何も話がなかったから、ただ近隣に故郷があるのだと事実を伏せていた。いずれ話してくれるだろうと・・・」
父の言葉に俯いたまま小さく申し訳ないと言葉を溢す。
森にいる魔女達とは一切関わらないという決まり事があるのは知っていた。
もし関わってしまった場合、速やかに報告をする事を領民達にも義務付けていた。
そして、その内容によっては処罰されることもある。
害をもたらす場合は牢へ行くが、ほとんどは今後一切関与しない、領地に踏み入る事はできないという規約と共に追放される。
その際には森へも通達が行く。屋敷の離れにある厳重に監視された部屋にある水晶玉によって森の代表者と交信ができるのだ。
だが、領地民はこの領地も私達領主も慕ってくれているからこそ、自ら罰を受ける行為はしない。だから、もう何年もその部屋の扉は開かれる事はなかった。
「ラファエル、私達はお前を責めている訳ではない」
いつの間にはベットに腰を下ろしたバルドルが、そっと私の髪を撫でながら声をかける。
そして、同様に足元の方のベットに腰を下ろすヘリオスが小さく頷く。
「お父様も私達も心配をしているのだ。リアムが事実を話してくれた内容にも驚きだが、森へ行き、魔女頭を連れてくると言っていたのだ」
「え・・・・?」
バルドルの言葉に、私は顔を上げバルドルの顔を見つめた後、ゆっくりと父へと顔を向ける。
「もちろんそれは許されない事だ。だが、リアムがお前が助かる方法がわかるかもしれないと言うのだ」
眉を顰めたまま父はそう言葉を溢す。
すると、ヘリオスが私の手を取り、言葉をかける。
「ラファエル、話してくれないか?」
「話・・・とは・・?」
「リアムが言ったんだ。リアムとお前には遠い記憶があると・・・」
その言葉に私の鼓動が大きく跳ねる。どう答えればいいのかわからず、私はまた俯く。
それを見たバルドルがまた、ゆっくりと私の髪を撫でた。
「詳しい話は聞いていない。それはラファエルが判断する事だと・・・。ただ、その記憶をとり戻す為に、リアムはずっと森に通っていた。それはラファエルを救う事にもなるからだと言っていた。森からラファエルの状態を見ていたが、森全体に結界を張っているからか、それが邪魔をして大まかにしか今のラファエルの状態が見れていないそうだ。ずっとリアムの記憶から見てはいたが、会えばきっとクリアになる。
だからこそ、リアムが魔女頭を説得して連れて来ると・・・きっとラファエルが助かる方法が見つかるはずだと・・・」
バルドルが話し終えた後、父が私の足を優しく摩る。
「魔女頭が来るという事は、どういう事なのかわかっているな?本来なら到底許される事ではない。いくら領主でも許されない。だが、私は領主の前にお前の父だ。
そしてお前は、バルドルやヘリオス同様、大切な愛しい息子だ。なんとしてもお前を救いたい。それはお前の兄達や母も同じ想いだ。何よりリアムが心底願っている。
後の責任は父である私が引き受けよう。お前がこの先も笑顔で生きながらえるなら、容易い事だ」
そう微笑む父を、私は涙を流しながら見つめて小さく微笑んだ。
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数字に囚われる 颯風 こゆき @koyuichi
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