卒業式真っ只中の天才の僕

京極道真  

第1話  卒業式・迷走する僕

今日、3年生の卒業式だ。

背が高く大きく感じていた部活の先輩たちが、卒業する。

壇上に上がり卒業証書を校長先生から名前を呼ばれて誇らしくいただくスローモーション。

同じ景色が脳裏から離れない。高2の僕。

景色がビヨーンとねじれる。

気づくと壇上の下、僕は在校生側に立っているのになぜが壇上にいる。

「卒業、梅木つばさ君」「はい。」

そうだ。今日は僕の卒業式だった。

卒業証書を受け取り、壇上から見下ろす在校生達は幼い。

ほんのわずかな時間。

まだある時間を持つ彼らがうらやましい。

時間は戻らない。

僕は壇上からチラリと在校生をにらんだ。

たぶん誰も気づかない。

『ばーか。気づいているぞ。』誰かの声。

在校生側から声が聞こえた。

『誰だ。』

声は耳からではなく頭の中に響いた。

壇上の階段を下りながら目を凝らす。”いた。

”彼だ。”僕だ。”

僕が、高2の僕が在校生の2-Cクラスにまぎれて座っている。

僕は僕に『お前何やっているんだ。高2の僕は今日はもういない。』

『そうか。あれからもう1年が過ぎたのか。』

『当たり前だ。今日は高3の僕の卒業式だ。』

『えへっ。』

『何、ごまかしているんだ。女子じゃあるまいし、えへっ?可愛くないぞ。』

『高3の僕、そんなにカリカリしないでくれよ。今日は卒業式。お祝いだろう。』

『お祝い、ふざけるな』

『だって、ほらその制服に着けてる胸の花。

祝おめでとうってついてる。』

言われた胸の祝いの花をぐしゃっとつかみそうになったがやめた。

こらえて卒業生の席に着いた。

脳内の言葉は続く。

『高3の僕。なぜ花をつぶすのやめたんだ。

お前は第一志望校を落ちた。

今は卒業式どころじゃなんだろう。

彼女にもふられた。

お前は、ぼろぼろのはずだ。

現に受験落ちで卒業式休みの奴もいるぞ。』

『僕だって。僕だってこの場にいたくない。

逃げたい。時空を超えてお前と代わりたい。

この座っている椅子さえ投げつけたい。』

『誰に投げるんだ。誰のせいにするんだ。』と高2の僕、もっともらしいことを言う。

『Woo---!この場で今すぐ叫びたい。

が今は耐える。耐えるぞ。

すべて僕が僕に投げつける。

僕は僕の脳内を壊す。

過去は変えれない。未来はこの手で

思いのままに僕の力で変えてやる。

僕は未来をねじ伏せる。』

高2も高3もどちらも僕だ。

僕の未来は明るい。ハハハ。




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