元魔導少女の憂鬱
主様が亡くなって私の魔力が暴走し始めた
その時は封印の岩戸に籠るように主様か言われていた
封印の岩戸に来て魔力の暴走は多少なりとも抑えられたが 気持ちが落ち着かない
魔導人形である私に感情や心というものは無かった
ただ 主様と暮らすうちに喜怒哀楽が芽生え 主様を愛する心も発現した
私は祈った 長い長い時間を神に祈った
「私に魂をいうものを与えて下さり 次の世界でも主様と共にいられますように」と
祈りながら私の魔導人形としての身体は消え 眩しい場所に立っていた
「ユカリさん お世話になったね 君の願いを叶えるよ」
どこからか そんな声がして暖かいモノに包まれた
ハッとして目を覚ますとかわいい服を着せられ 親と思しき人に連れられ人が一杯いる所に着いた
「本日は清水幼稚園の入園式によくおいで下さいました 皆様の入園を歓迎します」
壇上から 太ったおじさんが挨拶をしている
キョロキョロしていると「見つけた!!」あの顔 あの雰囲気 主様だ
幼い主様を見つけて興奮するユカリ
隣を見ると大きな男性がいる 多分あの人は主様のお父さんで前使徒のゲン様かな?
(ああ 早く話したい)思ってるとゲン様と目が合い 微笑みながら私を手招きする
「こんにちは お名前は何て言うの?」腰を落とし目の高さを合わせてゲン様が聞く
「こんにちは 西園寺ユカリです」私が答えると
「ユカリちゃん 青龍が大人になるまで ユカリちゃんの秘密は話してはいけないよ 大丈夫かな?」
頭がこんがらかったけどゲンおじさんの目を見て 頷いた
それから セイちゃんと仲良くなり 小中高と同じ学校に通った
一緒にいる時間が長くなればなるほど セイちゃんに魅かれていった
この気持ちを伝えたい セイちゃんは結構モテてたから尚更に焦った
そして 高校入学から何日も経たない日に ゲンおじさんからセイちゃんが入院したと聞いた 私は学校が終わって面会時間ギリギリまでセイちゃんの手を握っていた
ゲンおじさんは「前世の君と今は旅をしてるだけだから心配は無いよ」と言うけど
あの頃のあたしは 感情や心が無かったし主様を不愉快にさせていないだろうか?
目覚めた時 私を嫌いになっていないだろうか?
いろいろな想いが交差する そもそも本当にあの世界に行ってるのだろうか?
病気なんかじゃないよね
人の身体と感情はこんなにも面倒なものなのかと自問するユカリ
待合室で休憩してると マミちゃんが走ってきて セイちゃんが起きたと教えてくれた
急いで病室に行くとセイちゃんが身体を起こしてボンヤリと私達を見ている
「セイちゃん!!」抱き着いて涙声で言う
まだボーっとしてるのか 少し間があって「ユカリ?」と掠れた声で言う
「そうです 主様 覚えていてくれたんですね!!」
「さっきまで 一緒だったのに忘れる訳ないだろ」主様は私を抱きしめてくれる
(ああ やっと本当に再会出来た)嬉し涙で顔がぐちゃぐちゃになる
「神様は元の時間に戻すって言ってたけど 桜は散ってしまったのか」
(少し 時間が経っちゃたけど ごめんね 青龍君)頭の中で神様の声が聞こえた
窓の外の葉桜を見ながらユカリに囁く
「今回もまたよろしくな ユカリ」
耳元で言われ 頷く私
「今回も主様に誠心誠意お仕えいたします」
「ありがとう ユカリ でも主従関係じゃなくてもっと素敵な関係になろう」
「はい」
魔導少女であった頃の あのもどかしく分からなかったモノをユカリは理解し また主様と一緒にいられる事を 岩戸で祈りを捧げた神様に感謝した
今度は限りある命をセイちゃんと一生懸命生きていこう そう誓った
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短い投稿でしたが 読んで頂きありがとうございました
「魔導少女の憂鬱」はこれにて完結です
魔導少女の憂鬱 @cow4
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