16. 食堂での一憂
時間は少し経って昼下がりの十二時。時刻を知らせる
そのうねる様な
いつもなら大急ぎで風呂場に向かっている頃だが、
それにこの食堂も、いつもなら座る場所もギリギリなくらい人でごった返しているはずだ。
だけど、今は私と同じ魔術師枠になった子らで半分程度が埋まっているぐらいだった。
たった一時間でこんなにも気楽なんだからさ、これからずっと今日みたいな時間割にしてくんないかなぁ〜……まぁ無理よな、分かってるよそんくらい。
そう心の内で少しだけぼやきながら、私は中央付近にある
今日の
……若干塩分過多かもしれないけど、汗をかきまくっているこの時期ならむしろ丁度いいと思うことにしよう、うん。
「んじゃ……いただきぁーす」
雑な食前の
この料理を毎日作ってくれているカンザンには失礼だが、彼の見た目と反してこの食堂の料理は優しい味付けだ。そして毎日、日替わりのメニューを振る舞ってくれるのも、空きが来ることがない。
だからか、こうして毎日彼の料理を食べることは、ここでの生活において数少ない楽しみでもあった。
だが、なんだかんだ慣れたこの生活リズムとこの食事を食べている時、私の中でなにかが引っかかった。
落ち着いた食堂の中で感じたそれは
もちろん料理になにかあるわけじゃないのは、食べている私が一番理解している。じゃあ…この感覚はどこから来ているんだ?
そう思った私は
そうして数秒ほどたってから、私はひとつの気づきに辿り着いた。
「あ……そっか、そうだよ」
この食事……違和感がなかったから何も疑わなかったけど、それがそもそもおかしいんだ。
そう、なんとなくだが奴隷に出すにしても、そうでないにしても……この昼食、外と比べてもかなり近代的すぎる。
ご飯こそドカ盛りの玄米ではあるけれど、肉や魚の
前世の記憶を遡り、現代社会で比較的近いモノをあげるとすれば、家庭科の授業で見た昭和中期ぐらいの食事がおそらく一番近い様に思える。
対して、あの
すくなくとも……明治とか、大正時代くらい?の農村みたいな、色々な
というか……よくよく考えれば、この学院自体がそうじゃないか。
いくら
それこそ子供の奴隷が
それだけじゃない。二十四時間刻みの時刻を知らせる
そのくせ、
……アカン、考えれば考えるほど違和感が増してきた。なんというか……冷たい日本茶の中に溶けてないオレンジジュースの氷が浮かんでいるみたいな感覚だ。とにかく、
異世界転生かつ日本語っぽい言語ってだけでも結構なご都合主義って感じがしてたのに、ごく一部だけ文化水準が高いとなるといよいよもってなろう作品っぽく感じてしまう。どうすんだこの感覚。なんなんだこの世界……!?
「アーズサっ!なーに考えてるのっ!」
「っうぉわぁっ!!!」
あまりの
「もぉー……驚かせないでよミール……」
「えー?そっちが考え込んでただけじゃん」
「いやまぁ……うん、そうなんだけどさ」
「まぁいいや、隣座るねー」
「あ、うん」
ごもっともな言葉で私を
……あれ、いつもなら向かいに座ってなかったっけ?そう思いつつも
軽く見渡せば、さっきまで程よい人数だった食堂はいつものように私たち奴隷でギッチギチに賑わっていた。
「それじゃ、いっただきまーす!!」
元気な声で食事前の
「……今日も相変わらずご飯は
「ん?うん。お腹減るじゃん」
「いや減るにしてもじゃない?
「そうかなぁ〜……ぁーんっ」
なんだかんだで数ヶ月間、彼女とこうして食事を一緒にしてきたが、ここに来てからのミールの食欲は
ここに来たばかりのまだ
それでいて、いつもニコニコしながら美味しそうに食べる彼女の姿はどこか愛らしく、最初の驚きや心配はいつしか
そんなことを思いながらも、ふと
「……ミールが幸せだったら、私それでいっかなぁ」
「ん〜?……アズサも一緒じゃなきゃヤダよ?」
「……んえ?」
あ、やっば。口に出てたわ。はっず。
「だーかーら、アズサもだって。私だけ奴隷じゃなくなっても、一人じゃ
「ぁ……うん!!そうだね!!二人一緒に奴隷から脱出だー!!」
その言葉を聞いたミールはというと、若干ジト目気味にこちらを持つ目ながらも、しばらくするとまた箸を動かし始めた。
そんな彼女の姿を見つつ、私はふと思い
……さっきまでは色々考えちゃってたけど、別にどうすることなくない?
今はそもそもとして奴隷の身、それもこれから
逆に言えば、今の生存に必要じゃないであろうこの世界に対しての違和感たちは、それこそもろもろが終わってからでも考えられる。
なんなら、
「……なーんか余計なこと考えすぎてたかもなぁ」
「んぉ?
「んー?なんでもないよー」
口にご飯を含みながら
まずは二人で生き残ること、そのために私たちはここに来たんだろ?じゃあ今はそれだけでいい、そう自分に言い聞かせる。
色々と考えすぎてブレていた目標を再認識できたのもあってか、気づけばさっきまでの嫌な
まるで
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます