15. 慣れない杖、破れたマメ
「腕で振るな!!突き手と
「「「「「「はいっ!!!!!!」」」」」」
白く照らされた広場に、ツツギの
ツツギが迷宮探査員としての私たちの未来を包み隠さず言った後、私たちは4つのグループに
それから私たちは十回ほど、
だが、私たち奴隷は慣れないながらもこれといった不満も言わず(というか言えず)、型稽古に勤しんでいた。
「………型やめぇッ!!!各自、休憩!」
ツツギの一声で全員が手をとめた。というよりかは、ようやくかと言った具合で脱力しその場に座りこんだ、と言った方が正しかった。
私もその例に漏れず、その場にへたり込んで息を整える。ただ、私の意識は息を整えることよりも、少し前から感じていた両手の嫌な痛みの方がずっと気になっていた。
両手を自分の顔に対面させると、案の定、そこにはマメが出来ている私の手があった。人差し指から小指の下にかけて、小さくもまぁーきれいに横並びで居座っていやがる。そのうちの一つ、左手の小指下にあるマメに
そんな
「ッ〜〜!……ったぁ〜」
思い切って、その皮を引き千切った。
この処置が正しいかは分からないし、軽く手を振るだけでも赤々としたマメの跡がヒリヒリと痛む。ぶっちゃけ、しなきゃよかったって今更後悔しつつある。
それでも、このまま皮を残したままにしておくのも、それはそれでいい気分はしないし、残した皮のせいで余計に悪化させるよりかはマシだと思いたい。
そう自分に言い訳をしながら、朱色のマメ跡を手を振りながら乾かしつつ、私は周囲を見渡した。
小さく
だが、それでも人以下の扱いを受けていたあの小屋に比べれば、なんと平和で健全なんだろう、そう思ってしまうのもまた事実だった。
「喉乾いたやつは俺んところに来いよなー!」
ふと大きな声が聞こえてきた。ツツギの声だった。というか、彼以外のざわめきも同じ方から聞こえてくる。気になった私は上半身を彼の方に向けた。
そこには、
よく見れば、その
まるで夏場のプール施設にあるシャワーに群がる子供みたい。……いや全員子供ではあるか。
……ん?てか待てよ。あれ魔術だよな。よくよく考えたら、あれ地味にすごくない?多分だけど、あれ一つでサバイバルするときの水問題、ほぼ解決しそうじゃん。
え、てかあれ魔術ならどこでもシャワーし放題ってことじゃんアレ。え、万能すぎやん魔術、ヤバぁ。てか待って、私もあれ使えるってこと?てか使えないとヤバくね多分。いや分かんないけどさ……
だが、そんな私の思考を遮るかのように、体がシグナルを発し始めた。
今更気づいたが、
まるで不快感が
「……私も水、
疲れと
正直もう少しダラっと休みたい思いもあるが、このまま放置して脱水症状、果ては熱中症で天に召されるのだけは勘弁したい。
それにだ。今もツツギの横でドヴァドヴァ出まくっているあの水を見ろ、あの水量を。私程度の体なら、
そんなことを心の内でぼやきつつも、私も他の奴隷らの群れに混ざろうと手に持った杖をその場に置き、ツツギの元へと歩き出した。
◇
「あ゛ぁ゛〜……スッキリしたぁ〜……」
ツツギと奴隷のワニャワニャゾーンを背に、私は思わず風呂上がりのおっさんみたいな声を漏らしていた。
でも仕方ないじゃん。この炎天下で冷えた水飲んで、全身を冷水でさっぱり汗とか流せたんだもん、そりゃ誰でもこうなる。
おまけにだ、戻る直前には魔術で服も髪も乾かしてくれてるんだぞ。なんというホスピタリティ、現代でも実現すれば
……まぁ私にとっては前世だから実現しても体験は出来ないけれど。
と、爽やかな心地よさに浮かれていたのも束の間、相変わらずの日照りを前に、その爽快感はあまりにも
すでに頭から
そう思うと、私は口をへの字にしがら、ため息を一つ吐かざるを得なかった。
軽く肩を落としながら、元いた場所へ戻ろうと歩き出す。と同時に、私は己の手のひらを再び見つめていた。
「……
今の私の両手は、マメがある
「お、マメか?包帯なら自分で巻いてくれな」
彼はあの
ただ、自慢することではないが私はテーピングをするような部活には入ったことが無い。
つまりは、まごう事なき文系インドア人間だった。
そんな私にとって、包帯の巻き方なんてもちろん知る
それに、今は前世みたいに手元のスマホで調べるなんてことも当然出来ない
結局、四苦八苦しながら
地味だけど、前世でもしてそうでしなかった経験。そして素人目に見てもまぁ下手くそな巻き方に見える
ただ、それに対してちょっとした
言葉にするのは難しいけど、なんというか……ここまで魔術に対して
「……
ふと、私の足元に転がっている木の
このまま行ったらいつか真っ黒になるんじゃないか……?と思いつつ、私はその
「……よーし、一旦こっちに注目してくれ」
杖を拾い上げると同時、ツツギが少し声を張りながら呼びかけた。
私は手に巻いた包帯が
「よーし全員向いたな。……時間は十一時半、ちぃと早いが今日の
「ったぁ〜〜〜……やっと終わったぁ〜〜〜……」
その言葉を聞いた私は思わず声を漏らした。いやだってフッツーにキツイのいやだもん。あとこれ以上汗かきたくない。
それに私以外の子も同じような反応を見せている。なんなら視界の
そりゃそうよな、そんな
「……ゥオッホン!!」
ツツギのわざとらしい
「……ただし!お前らは明日以降、これまで通りの
「えぇ……やだ……」
「おいそこ、ヤダって言うなヤダって。俺だって毎朝付き合うの
思わず
「とりあえ、ず!今日の
「「「「「「「ハイッ!!!!!!」」」」」」」
「よし!以上、
私たちの振り
なんだよ、言い忘れたことがあるなら早く言ってくれ。先走り気味に駆け出そうとした子らを見なさいよ。早く帰りたそうに顔だけ向けて待っているじゃんか。
「危ねぇ、忘れるとこだったわ……午後についての連絡だ。
「「「「「「「……ハイッ!!!」」」」」」」」
「よーし、じゃあ今度こそ解散!!!」
今度こそ言い切ったツツギの言葉で、他の奴隷たちは
しかし、私はそんな彼ら彼女らが私の横を走り抜けていく中を逆らうように、ツツギの方へ歩き出していた。
「んぉ、なんだ……って、
私に気づいたツツギは相変わらずの気だるそうな声で軽く話しかけてきた。
そして意外にも私のことを覚えていた様子。こんな良い加減そうな雰囲気の割に記憶力は良いのか……
しかし改めて近くで
「はい。あの時はありがとうございました」
「いやなに、あれも仕事だからな。で、赤髪の子は……
「はい。何しているのかは知りませんけど」
「そりゃそうだ!まぁこの後どうせ会うんだろ?そんと聞ききゃあいいさ。で、えーっと……」
あれ、名前教えてかったっけ?いや、あの時に言った気もするけど……まぁいいか。
それに聞きたいことも一つだけだ。とっとと名前言って、すぐ聞いて早く帰ろう。
「アズサです」
「ん、アズサか。で、なんか用か?」
「あ。はい!と言っても
私の問いに対し、
そんな様子で表情をコロコロと変えながらも、彼は私に問いに答えてくれた。
「あ?そりゃぁ何って……
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