12. 旨し糧、鍛えし体
「……
ふと、あの顔面たわし男の
「ということで、お前ら全員には
彼が背中を向けながら手を空へと
◇
私達が寝ていた長屋から少し離れた場所。
前世の日本で生きていた頃の私なら、正直物足りなく見える食事だろう。だが、今の私にとっては久しぶりの温かい飯だ。正直、湯気すらご
どこからか
「全員、眼の前に飯はあるかー?……よぅし、行き渡ったみたいだな」
あのたわし男の声が聞こえた。この部屋の全員の前に食事が行き渡ったのを確認し終えた彼は、そのまま全員に聞こえるような声で再び話し始めた。
「んじゃ遅れたが自己紹介と行くか!!俺の名は
たわし頭の彼――いや、カンザンの自己紹介を聞いた瞬間、この場の全員が彼の方を見た。ここは食堂で、彼はいわゆる料理人。つまり、この飯を作った男……
どうしよう。さっきまでは
このままでは内心で
「んで、まずお前らに
彼の説明を前に、この場の奴隷がざわめく。というか
そんな
「
それまでざわざわと活気があった場が一気に静まった。カンザン表情もそれまでの
「……脅すような言い方をしたな。ただ、これはお前らの為でもある。これからお前らが飛び込む迷宮は、何が起きても自己責任の……
「そして、お前たちが戻ってくる限り、俺はお前らに飯を出す!夏は
「「「「「「はい!!!!!」」」」」
私達に対しての彼なりのエールに対し、私達は出せるだけの大声で返事を返した。
「はぁー……
カンザンの掛け声で全員が、一斉に目前のお椀へと突っ込んだ。
「飯を食い終わった後は交代で風呂にぶち込むぞ!!こびり付いた
あんなふうに
◇
「……んの……クソぁ……!」
あちこちからうめき声が聞こえる。私もこの
なんとか耐えようと食いしばるせいか、顔が
「……
あの雑炊を口にしてから早くも二ヶ月ほどが経った。私達も含めここに来た奴隷の多くが
ちなみに個人的なおすすめは小魚の
そしてそんな食事が一日三食になった二週間前、私達はこうして広場に集められ、朝から夕までトレーニング
「あ゛ぁ゛~……づがれ゛だぁ゛~……」
私の隣、アマガエルのようなダミ声でミールがぼやいた。顔を向ければ、ミールも私と同じように、顔だけは横に向けつつうつ伏せで倒れこんでいた。ただし、そこには
というのも、私も含め多くの奴隷はあの日以降、順に
改めてミールを見直す。あの伸び切った天パの赤毛は両耳が軽く見える程度に短く整えられており、少し太めに整えられた眉毛が前髪の間からちらりと見えた。私よりも少し
「……どしたのアズサ?わたしのことジ――――――――――――――ッと見て」
「……いや、肉付きよくなったなぁって」
「うん、言い方ってあると思うんだ」
流石に
まともな食事に日々の筋トレ、
「まぁ良いけどさー……でも邪魔なんだよ?これ」
「……」
体を起こし、あぐらをしながらミールが
別になんの
「……いる?」
「いるかっ!!」
両手で軽く胸を持ち上げたミールに反射的にツッコむ。というか、あーた胸以前にそもそも筋肉つくスピードも
そんな負け犬めいたことを
「先週からも伝えていたが、本日から午後は
「この後、二十分後に一度目の
「「「「「「はいッ!」」」」」」
「よぉーし、では一同解散ッ!!!!」
そしてこの
「あ゛ー!!!終わったー!!!早くお風呂行こ、アズサ!!」
「ん、そだね……」
さっきまで溶けていたはずなのに、その元気はどこから
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