ファレーゼは思った、全部任せてしまおうと
「何がなんだかさっぱりわからない、つまりどういうことなんだ?」
「ですから神聖帝国聖騎士団長のクソッたれの娘がアルベ州知事になりました。そして聖女フィデスがベッサ公爵領査察部長に就任したということです」
「…………なんでだ?」
「知りません」
オルガリア州知事ファレーゼ・オルガリアはオルガリア州副知事兼州知事秘書カーディ・ベルからの報告を聞いてただただ困惑していた。
「なんでそのような人間を州知事に?」
「改心した……にしては高い役職ですし、危険な場所を任せましたね。そのための聖女フィデスなのでは?」
「聖女フィデスだぞ?スケベッティ司祭は存在そのものが違法だがいいのか?まずくないか?」
「さすがにそんないやらしい顔はしてませんよ、まるでスケベッティ司祭が歩くわいせつ物みたいに。まぁわいせつ物頒布はしてますがあれは性教育の一環ですからね?」
「いや、折り合いが悪いだろうあの二人。非常に……」
「和解したではないですか、こちらにも通達が来たでしょう。それにルイーズ大公とベッサ公爵が任じたのだから問題ありませんよ」
顎に手を当てたファレーゼはうーんと唸ったあと性騎士団員のモウェフを呼ぶことにした。
モウェフはスケベッティに近しい人間であるがフィデスとも関係があり、妻がフィデスが救った人間だっためスケベッティとフィデスが協約を結んで今の関係になった際に尽力した人間の一人でもあった。
呼ばれた彼は情勢を聞いてととも複雑そうな顔をしていた。
「教祖様の摘発ではないと思います」
モウェフはきっぱりと言ったものの、オルガリアの商人あたりを狙ったとは言い出せなかった。実際のところオルガリア財政を支えているのは蜂起に協力した商人たちであり、それを拒んでいたり神聖帝国に癒着しきっていた商人たちはすでに物理的に吊し上げられていた。
モウェフは流石にファレーゼ自身の基盤となる商人たちをどうするかは読めなかったため反応を伺おうと一旦見送った。
「そうなると……うちの財政切り離しだろうか?まぁ商人か」
「かもしれません、そろそろ引き締めの時期ですからな」
「よろしいのですか?」
モウェフは恐る恐るといったようにファレーゼに確認した。
ファレーゼはあっけらかんとしており、何を言っているのかというような態度で答えた。
「よろしいも何も、緊急時は脱したのであればあとは身を慎む時期だろう。そのためのルブラン商会の出店であろうに。ベッサ領のお抱え商会になるのだから一括したほうがいいだろう」
「その場合財政的な基盤の喪失と独立性を維持できなくなりますが」
「私にはもう血族はいないからな。私がそれを守ったあとどうするのだ?既得権益化した商人の操り人形が好き勝手して戦火を比較的な逃れたオルガリアを焼け跡にするのか?そもそも州の上にベッサ公爵領がある以上は私はそんなものはすでに喪失していると思っている。大体にめどが付いたからな。そもそも私がベッサ公爵より長生きするとでも思うか?ルイーズ大公よりも?長寿記録更新だぞ?」
「それでは州知事は……問題ないということですか?」
「ないな。そもそもミガリアを見たまえ、軍港の建造に港拡張、帝国海軍が船団護衛と来たぞ。お膝元のベッサでもベッサリアでもなくだ。あの資本力に太刀打ちできるのかね?無駄だよ無駄、オルガリアという子供が駄菓子屋でみんなに奢っているところでベッサという大人が店どころか周辺区域を購入していくようなものだ。戦うという発想がないな、そもそも性騎士団は私の味方というわけではないだろう?」
「いえ、虐げられるものを守るためでは味方になりましょう」
その言葉を聞いたファレーゼはうんうんと頷いて腕を組んだ。
「つまり私の味方ではないわけだ。スケベッティ司祭と聖女フィデスが戦わないのであれば私が何をしようと殺されて終わりだろう。私だって戦えるがライヘンバッハ州軍司令とて私に味方するとも思えないな。私なら味方しない。商人を庇って死ぬなんて馬鹿らしい、彼等は不正をしたから摘発されるわけだし、してないのなら別段制限もかかるまいよ。つまりいなくなるのはなにかやっていた連中だ。そして私は緊急時であるから神聖帝国の支援や亡命の手伝いでもしてない限りはノータッチでね。経理不正であるならそれはもう自業自得ではないか。今はもう帝国で、情勢も落ち着いているのに不正経理をしてる方が悪い。この情報公表をしたあとやっていたらもう言い訳もできないからな。そもそもアルバ陥落時点でここが戦場になる可能性は大分減った。南は懸念ではあるが帝国海軍が出張ってきた以上は遅かれ早かれ落ち着く。つまり南部諸都市の商人はまだ不正も防衛費の捻出でごまかせるし、それをせざるをえなかった経験から理解は示されるだろう。ただ内陸部はいけないな。神聖帝国に協力してないから良いわけではないのだからね。正直こちらからやるのは面倒なことを言われるからもう少し調子に乗り始めて私が死ぬか、あるいは隠居して変わったシアに一気に借り尽くすと思ったのだが。まぁ少ないほうが良いと思ったが減らしすぎたくもないということだな。ルブラン商会がすべてを握るのはよろしくないというのか、それとも市場原理のことでも考えたか……。どちらでも良いか。とにかく査察官殿のほうが立場は上だ、私に陳情されも仕方ないだろう?」
そういうとファレーゼは協力した商会をまとめたものを準備してモウェフに渡した。
「私は君に渡したからね?頼んだよ」
モウェフは複雑な顔をしていたが実際来るのはそう大物ではないだろうと高をくくっていた。残念ながらそう甘くはなかったが。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます