第46話 パワードスーツの分解 15


 食事を終わらせてきた三人が工房に戻ってくると、梱包されたアリアリーシャのパーツに分けて梱包されている箱を閉じる作業から始めた。

 梱包箱の蓋を乗せてエルメアーナが閉じていく。

 三つの箱の蓋を閉じるとアイカユラが台車を持ってくると、エルメアーナとヒュェルリーンは梱包箱を重そうに持ち上げると、その下に台車を差し込んだ。

「重かった」

 エルメアーナがボヤく。

「仕方ないわよ。金属で出来た物を入れているのだから。でも、分解しているから二人だけで持ち上げられたじゃないの」

 ヒュェルリーンの言葉を聞いて、エルメアーナは、壁際に立っているレィオーンパードのパワードスーツを見た。

「確かにそうだな」

「ねえ、これ出荷するんでしょ」

「ああ、そうだ。裏庭側の扉の近くに置いておく。その方が出荷が楽になる」

 そう言うと、荷物の出し入れ用の扉の方を見た。

 工房は、製品の搬出や材料や設備の搬入も考えて店舗の反対側に裏から搬入搬出ができるように建てられている。

 裏庭には扉を開ければ搬入と搬出が可能なように作られていたので、その扉の脇をエルメアーナは示すと、アイカユラは台車を押していくと二人も後をついていき、扉の脇に来ると二人は梱包箱の取っ手を持ち台車を抜いてもらい床に下ろした。

「ねえ、アリーシャの箱は三箱有るけど、箱だけ見たら全部同じよ。それにレオンの箱も揃ったら、中を開けないと確認できないんじゃないの?」

「ああ、このままならそうだ。一応、印をしておく予定だ」

「でも、分からなくなる前に印をしておいた方が良いと思うけど」

「うん、それもそうだな」

 エルメアーナは、ヒュェルリーンの意見に賛同すると棚からペンキと筆を持ってくる。

「これは、アリーシャのだから20番台で、胴体だから」

 そう言うと、箱の蓋に21と大きく書くと、しゃがみ込んで側面にも同じように21と書いていった。

 蓋と側面の四枚に同じ番号を書き込んでいく。

「ねえ、数字にも意味があるの?」

「ああ、アリーシャは20番台で、レオンは、10番台を使う。胴体は1で、脚は2、腕は3にしてあるから、21・22・23を使う」

「ああ、その番号を見たら何が入っているのか分かるようにしてあるのね」

「まあ、メインのパーツだけを決めてある。外部装甲や他のパーツは適当に入れる。上に配置するから取り出したらシュレが魔法紋を描いてくれるはずだ」

 その説明にヒュェルリーンは納得する。

 数字を書き終わる。

「ねえ、そこで数字を書くより運ぶ前に書いた方が良いんじゃない。あっちの方が場所も広いから書きやすいでしょ」

「そうだな」

 アイカユラに指摘されると、エルメアーナは残りの箱に数字を書いていった。

「じゃあ、運んでしまおう」

 エルメアーナは、道具を元に戻しながら二人に促すと残りの箱を運ぶ準備をし、エルメアーナが戻ると同じように箱を運ぶ。

 梱包箱を三箱運び終わると、完成しているレィオーンパードのパワードスーツを移動させて作業台の横に持ってきた。

 同じ要領で作業を進めていき分解していく。

 一度行った作業だった事もあり、要領良く進んだ事から、二台目のパワードスーツの分解と梱包は早く終わった。

 六箱の分解されたパワードスーツの部品を入れた梱包箱は床に並べて置かれている。

 それを見たアイカユラは微妙な表情をする。

「ねえ、重ねなくて良かったの?」

「ジュネス達、男手があったら重ねても良かったんだが、私達だけで持ち上げるのはどうかと思うんだ。それに、直ぐに発送になる」

 それを聞いてアイカユラは難しい顔をした。

「ねえ、出荷は業者を頼むのよね」

 アイカユラは、エルメアーナの顔を見つつ話すとヒュェルリーンを見た。

 そして、壁に立っている残り三台の外装骨格のみのパワードスーツを見た。

 その視線をヒュェルリーンも追うと、ヒュェルリーンも難しい表情になった。

「そうね。これは、少し不味いかもしれないわね」

「積み込む時、荷物を移動させないといけないから、中に入る事になると思います。その時、残りの三台を見せるのは良くないのではないでしょうか」

「ええ」

 二人が困ったような表情をしている。

「それなら、シーツを掛けてしまえばどうだ?」

「シーツねぇ」

「シーツかぁ」

 エルメアーナの提案に二人は、あまり良い提案とは思えないと言うように答えるので、その空気を読むように、また考え出す。

「だったら、廊下に出しておくってのはどうだ?」

「廊下が狭くなるのは嫌よ。建具も含めて案外大きいわよ」

「搬入の時だけ出しておけば問題ないんじゃないか」

 アイカユラは乗り気ではなかった。

「それなら店舗に置くってのはどうなんだ? 今は、客も少ないから」

「ダメよ。お客もゼロじゃないし、運送業者の人が声を掛けるなら、店に顔を出すはずよ」

「じゃあ、リビングしか無いな」

「そうね。用意している運送業者には急いで運んでもらう事になっているから積み込みを行ったら直ぐに出発する予定なのよね」

 ヒュェルリーンの言葉にアイカユラは納得するように頷いた。

(輸送日数が長い方が、魔物に襲われるリスクも、盗賊に襲われるリスクも増えるって事を考えているのか。輸送中の事故や事件で届けられなかったら、ジュネス達に申し訳ないものね)

「まあ、護衛の用意も有るから、今日明日って訳にはいかないけど、明後日の朝には出発できるかしら。護衛はギルドに頼むとして、輸送はうちの商会系列の高速馬車を地竜ので移動だから、ジュネスの到着予定より早く届けられそうだわ」

 アイカユラは、驚いたように目を見開くと荷造りの終わった輸送用の箱を見た。

(地竜の八頭立てって、この六箱を運ぶのに使うの? なんて贅沢な使い方? 護衛を乗せてとなったら、そうなってしまうのか)

 そして、納得するような表情をした。

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