第45話 パワードスーツの分解 14


 エルメアーナは、梱包箱の蓋に並べるように置いた角材の上に中板を置くと角材の位置に合わせて釘で止めて始めると、その様子をヒュェルリーンが不思議そうに眺めている。

 一番端の角材に一本の釘を打ち付け終わった。

「ねえ、さっき、工具を置いて角材を何本も並べていたみたいだけど、角材は端だけで構わなくない?」

 言われてエルメアーナは、自分の作業を止めて考える。

「うん、確かにそうだ。蓋にポケットを作るだけだから、両脇だけで構わないな」

 そう言うと、同じ角材の部分に数本の釘を打ち付けて固定すると、反対側の端の角材と板を打ち付ける。

 一通り打ち付けると、持ち上げて角材の打ち付け具合を確認すると、蓋の上に残っていた角材を取り除き角材を打ち付けた板を蓋の上に乗せて上下左右の隙間を確認する。

 位置が決まると、その板を手で押さえるようにしつつ下の梱包箱の蓋の下に手を入れ、両方から押さえつけるように持ってひっくり返すと、両端の角材の位置を確認しつつ釘を打ち付けていく。

 完了すると自身の仕事を確認するように眺める。

「ねえ、どちらか片方の穴を埋めなくても良いの?」

 作業を見ていたアイカユラが聞く。

「ああ、立てた状態なら必要だっただろうけど、梱包された時、ここの穴は、両脇の板に隠されてしまうからな。それに、梱包材を使って動かないようにして固定しておくだけでいいだろう」

 それを聞いてアイカユラも納得したという表情をする。

「ヒェルに言われなかったら何本も角材を使っていただろうけど、これなら簡単に入れられるし出す時も楽になるだろうな」

 そう言うと、エルメアーナは左手をアイカユラに差し出して何かをよこせと言うような仕草をした。

「ああ、梱包材ね。小さい方で良いかしら?」

「ああ、頼む」

 渡された梱包材に工具を押し当てるようにして、蓋に作ったポケットの中に工具を押し込んでいく。

 一通りの工具が入ると治具を見た。

「こっちの治具は、ちょっと、この中には入りそうもないな」

「そっちは、外部装甲を入れて余ったスペースに入れてしまえばいいんじゃないかしら」

 先程、分解した時に使った治具は工具とは違い厚みも有ったので、蓋に作ったポケットに入れられる物では無かった。

「うん。それもそうだな。治具はジュネスの機体でもアリーシャの機体でも使えるから、これ一つあれば十分なら、アリーシャの機体の物が都合が良いのか」

 自身を納得させるように言うとウンウンと頷いた。

「さすがヒェルだ。良い提案だよ」

 エルメアーナの上から目線の言い方にアイカユラは少し驚いたような表情をしたが、ヒュェルリーンは何食わぬ顔で聞いていた。

「やはり、人が増えると出てくるアイデアも増えると言うことか」

 そう言うとエルメアーナは、治具を持って梱包材の方に行くと、治具を梱包材で覆うようにすると、棚に移動して紐を取り出し梱包材に覆われた治具を巻き始めた。

「うん、これで良し」

 そう言って梱包箱を確認して入れられそうな場所に収めようとしてから二人に見せた。

「そこにある残りの治具も、これと同じように梱包してくれ。多少外から見えるようでも構わないが、何かに当たっても平気なように角を覆うようにしてくれれば大丈夫だ」

 二人は言われるがまま、作業台の治具を手に取って同じように梱包材で覆うと棚の紐を取って縛り同じように梱包箱に収納した。

 全ての治具を入れても隙間が埋まらない部分が有る。

「アリーシャは、胸は有るが身長は無いから隙間が多いな」

 エルメアーナは、そう言うとヒュェルリーンの胸を覗き込んだので、ヒュェルリーンは少し恥ずかしそうな表情をする。

「あんな小さな体でもヒェルと同じ位の大きさが有ったからなぁ」

 そう言うと自分の胸を持ち上げるようにした。

「背の高いヒェルと一番小さいアリーシャで同じ位大きいのに、何で私のは大きくならないんだ。それにフィルランカも大きかった」

 残念そうに手を軽く持ち上げるように動かしながら言うと、ヒュェルリーンは困ったような表情をした。

「うーん、こればかりは、何とも言えないわね」

「親次第なんじゃ無いかしら。娘はお母さんに似るって言うじゃない」

 アイカユラが、何気なく言うとヒュェルリーンは鋭い視線を向けたので、何かまずい事を言ってしまったのかと思ったように表情を変えた。

「うーん、母親かぁ」

 エルメアーナは、特に気にするような様子もなく答えた。

「記憶ってあまり無いんだ。小さい時の記憶だから、顔もよく覚えてないんだ。時々、店に来たヒェルの方が記憶に残っている。昔も今も殆ど変わってない。小さい時はヒェルに抱っこしてもらって触ってた。私もこんなになるのかと思ったけど、今でもこんなもんだ」

 エルメアーナが、気にする様子も無く自身の胸を持ち上げるようにして語ると、ヒュェルリーンは、少し楽な表情になった。

「ごめん」

 アイカユラは申し訳なさそうに言う。

「いや、気にしてない。それより、アイカはヒェルの大きさが欲しいと思わないのか?」

「えっ! うーん、まぁ、有った方が、いい、かな」

 困った様子で答える。

「それより、ここら辺で食事を取りましょうよ。少し昼を回っているんじゃ無いかしら」

 ヒュェルリーンは、話題をすり替えようとした。

「あ、そうですね。直ぐ支度します」

「じゃあ、手伝う。一人で支度するより二人の方が早い」

「だったら、三人で作りましょう。私も二人がどんな食事をしているのか気になるわ」

 アイカユラを手伝おうとしたエルメアーナに、ヒュェルリーンも便乗してきた。

「まあ、そうですね。でも、簡単な物だけになりますよ」

「構わないわ」

 アイカユラは、上司で有るヒュェルリーンに粗末と思われてもと思ったのか、軽い言い訳のように言ったようだが、そんな事は特に気にしていないと言うようにヒュェルリーンは答えた。

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