第38話 パワードスーツの分解 7
エルメアーナは、建具の部品を外す。
「二人とも、こっちの腕も梱包させるから持ってくれなか」
そう言い外装骨格の前、エルメアーナの立っている両脇に来るように促した。
「それじゃあ、ゆっくり倒すから、二人で腕を支えてくれ。今度の方が重くないから」
そう言うと建具の部品で固定されている手首の部分を中心に、持っていた肩の部分を倒していくと、二人が左右から両手を差し出して支えてくれた。
腕が地面に水平になる。
「それじゃあ、私の方に引き抜くから、しっかり持っていてくれ」
エルメアーナは、そう言うと自分の方に手に持った肩パーツを引っ張ると建具の部品から外れると、二人は重さを感じて力を入れて落ちないようにした。
「やっぱり、意外と、重いわ、ね」
「腕と言っても、金属で、作られて、いますから」
エルメアーナに、脚よりは軽いと言われていたが、二人は、思っていたより重く感じていたようだ。
「それじゃあ、二つ目の箱に運ぶ」
そう言うとエルメアーナは誘導するように後ずさるように歩き出して、目的の箱の横に来る。
「それじゃあ、ヒェルは腕の方を持ってくれ」
言われるがまま、手を動かして外装骨格の手首に移動する。
「それじゃあ、箱に入れる」
三人は外装骨格の腕を箱の上になるように移動すると、ゆっくり、下ろして梱包箱の中に収めた。
「ふーっ、案外、重かったわね」
「ええ、もう少し軽いかと思っていました」
二人は梱包箱の中に収めた腕を覗き込みつつ言葉にするが、エルメアーナは、そんな二人を気にする事なく、もう一方の腕の取り外しの為戻っていった。
同じように工具でボルトを外し始める。
「やっぱり、軽い合金と言っても金属で作られているから、それなりの重さは有るわね」
「そうですね。ギルドの新開発の軽合金と言っても鉄よりは軽いでしょうけど、それなりの重さが有りますね」
梱包箱の中に入れた外装骨格の腕を見ながら二人は、感心しつつお互いの意見を述べている。
「おい、こっちの腕も外すから手伝ってくれ」
言われて二人は慌ててエルメアーナの元に来る。
エルメアーナは、内側のボルトを外し終わり取り外し用の治具を胸と背中側から固定されていた金属の板の間に差し込むところだった。
ダイヤルを回すと徐々に楔が入り込み、徐々に肩が外側に押し出されていき、外れると軽く腕が下がった。
「よし、これを入れたら後は胴体だけだ」
そう言うと腕を先程の要領で残りの腕を運び梱包箱に収納する。
梱包箱内には、上下逆さまに置いた腕が置かれている。
梱包箱は全て同じ大きさに作っているので、腕だけの箱と脚だけの箱では残ったスペースが違っていた。
この形に合わせて、板に切り込みを入れて固定する予定になっていたが、アイカユラは何か気になったような表情をした。
(この後、エルメアーナが板を加工すると言っていたけど、これって、案外グラグラするわね。馬車に揺られて運ばれた時に揺れないかしら?)
アイカユラ一人が、梱包箱を見ていたが、エルメアーナは気にする事なく、残っている空箱をヒュェルリーンと一緒に建具に残った胴体の前に運び胴体の下に置いた。
「ここに置くと言う事は、重いから三人で移動させなくても良いようにって事なのかしら?」
ヒュェルリーンは、胴体は重そうだと思って聞いたようだ。
しかし、エルメアーナは重さを気にする様子は無い。
「いや、胴体は簡単なんだ。こっちは建具が工夫されているから楽に収納できる」
胸から肩にかけての装甲のようになっている部分背骨も人の背骨より大きいブロック上の金属が積み重なっており、背骨が接続される腰の部分は、上半身を支える部分は分厚く股関節の代用機能と腰を広く開ける為の開閉機構も有る。
脚も腕も左右片側ずつに分解されていてもヒュェルリーンには重く感じていた。
胴体部分は、今までよりも重いだろう事は想像がついたので、エルメアーナの回答が気になった。
「建具は、基本的に同じ作りになっている。一番大きいジュネスの物も、ここに有るアリーシャの物も同じなんだ」
ヒュェルリーンは、まだ、理解できずにいた。
「ジュネスの身長はヒェルと同じ位の180センチだろ」
自身の身長を言われて面白くなさそうな表情をするが、エルメアーナは気にする事は無かった。
「でも、アリーシャは、ウサギの亜人では大柄だけど、130センチと人としては小柄な部類に入る」
「だから、どうだと言うの?」
面白くなさそうにヒュェルリーンが答える。
「ほら、建具の後ろに大きなハンドルが付いているだろ、あれは身長差をカバーするために付けてある。だから、あのハンドルを回すと固定位置が上下するから、一番下に下げれば、腰は底面の板まで下げられるんだ」
「なる程、それなら下まで降りたらズラしながら梱包箱に入れられるのね。後ろの支柱の部分に変なギザギザが付いていたのは、その為だったのね」
ヒュェルリーンが理解してくれた事にエルメアーナは満足そうに笑みを浮かべた。
「そういう事だ。まあ、これもジュネスが考えてくれたんだ」
その答えに、ヒュェルリーンは、やっぱりというように納得した。
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