第33話 パワードスーツの分解 2 〜インナー〜
アイカユラとヒュェルリーンが手伝ってくれ事になり重い胴体等を分解する人足も手に入った。
よってきたヒュェルリーンはエルメアーナを見るが、アイカユラは作業台に整然と置いてある工具を見ていた。
「それじゃあ、分解する前に内部のインナーをパワードスーツから外すのを手伝ってくれ」
「それで、どの工具を使うの?」
「いや、工具は使わない。内側に手を入れてホックを外すだけだ」
アイカユラは、少しガッカリした様子で視線をエルメアーナに向けたが、ヒュェルリーンは、何の事だというように不思議そうな表情をした。
「ねえ、そのインナーって何?」
「ああ、パワードスーツと中の人と密着させる為の物だ。ほら、足首の大きさのままにサイズを決めたら出入りの時に踵が狭くて入らないだろ」
それを聞いて納得するように頷いた。
「ああ、脚にフィットするブーツだと脱いだり履いたりする時に引っかかるわね。履いた後に靴紐で縛って足首を細くするものね」
「そうですね。ブーツの靴紐で縛った状態だと脱げませんし、ブラウスだって手首にある袖のボタンを外さないと抜けないですね」
ヒュェルリーンの言葉にアイカユラも同意するように答えると、エルメアーナは悦にいった表情をした。
「パワードスーツは出入りも上手く考えてある。出入りする時は、腕や足を抜き差しするようになる場合は隙間を広くなるようにして、装着後は密着度を増して変な場所に身体がズレないようにしている。パワードスーツと内部の人の関節の位置が連動できるように固定させるが、脱着は足首と踵、手首と手のように先の方が大きい箇所も有るから、それをインナーが補ってくれているんだ」
「確かにそうね。脱着の時に足首の部分の固定を外すのが手動だと大変な事になるわね」
「そうですね。ブーツの紐を解く時って、椅子に座って緩めないと倒れてしまう。椅子に座ってパワードスーツのように外部装甲に覆われた状態で足首の固定を外すとなったら何かに座らないと難しそう」
「そうなると、パワードスーツの重量を支える必要があるわ。いくらギルドの新合金が軽量だと言っても金属で出来ているのだから、人の座る椅子じゃあ難しそうね」
「石の上に座るなんてどうでしょう」
「そんなに都合良く座れる石が見つかるとは思えないわ。……。ああ、だから内部のインナーを工夫して簡単に出入りできるようにしているのね。インナーに空気を入れて密着度を上げるなら、出る時はインナーの空気を抜く事で出入り用に隙間が開くって事なのね」
エルメアーナは、二人の会話を満足そうに聞いていた。
「それじゃあ、理解できたところで、作業を始めようか」
二人はエルメアーナを見る。
「なんだか、変な気分だわ」
「そうね」
二人は面白くなさそうに答えた。
「じゃあ、ヒェル。首から手を入れて腰と脚を繋ぐインナーのホックを外してくれ。これは手の長いヒェルの方が適任だ」
言われるがまま、アリアリーシャのパワードスーツの上に空いている頭が出るように穴の空いたスペースに手を入れた。
長身のヒュェルリーンならば、長い腕なので、身長130センチのアリアリーシャ用のパワードスーツなら腰の辺りなら容易に手が入る。
しかし、手を入れて直ぐに疑問が浮かんだようだ。
「ねえ、私、ホックと言われても、何処に有るのか、どんな形で、どうやって外すかも分からないわ」
「そうよ。あなたのように製造に携わっていた訳じゃないのだから、ホックを外せと言われて簡単に外せないわよ。しかも手探りじゃないの」
言われてエルメアーナは納得すると、棚の方に歩いていき、箱を一つ持ってきた。
中に入っている加工された布のような物を確認しながら一つ取り出すとヒュェルリーンに渡した。
「これは、アリーシャのインナーだ。アリーシャもヒェルと一緒で出るものが大きいから、インナーも何個か作り直している。これはダメ出しを食らった右脚用のインナーだ。取り付けられている部分は、こうやって穴が空いている。特に股間の部分はシュレと二人で相談して直しを入れてた」
エルメアーナの説明を聞きつつ、右脚用のインナーを確認して自身の右脚の前に当てて確認する。
「ああ、そうね。デリケートな部分も有るから脚と脚の間は女子ならこだわるのか」
「仰るとおりです。硬い部分とかがあって変な部分に当たるのも困りますものね」
「アリーシャって、下着とかにも拘っていたわね。特に尻尾の出る部分は大変だったのかもしれないわね」
「ああ、尻尾はケツ穴の直ぐ上に有るから、尻尾の出し方とか、細かくシュレに注文してたな。時々、ジュネスが、話を聞いてしまって困った様子で顔を赤くしてたぞ」
二人に割り込んだエルメアーナの話を聞いて、二人は自分の事のように恥ずかしそうに顔を赤くした。
「あんなに短い尻尾なのに、うるさく注文してたからな。時々、ジュネスの存在を忘れて話していたぞ。時々、具体的に股間の間の当たり具合とか、前の方の当たり具合とか夢中になって話していたから、横で話を聞いているジュネスの顔は、何とも言えない表情をしていたから笑えたぞ」
そう言ってニヤニヤと思い出し笑いをするのを、二人はなんとも言えない表情で聞いていた。
「ねえ、そんな話、ジュネスに聞かせたの」
アイカユラが恐る恐る聞くが、エルメアーナはニヤけた表情を崩す事は無かった。
「ああ、とても恥ずかしそうにしていた」
「「……」」
ヒュェルリーンとアイカユラは信じられないというように顔を見合わせた。
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