第24話 動き出す関係性

宇佐美の体調も良くなって、再び登校出来るようになる。


相変わらず微妙に勉強が出来ない俺に対して、宇佐美が軽く教えてくれたりして少しずつどこが出来ていないのか、どこが追いつけていないのかが分かってくる。


その辺が分かってくる様にもなれば、勉強にも楽しさを見出し始める事が出来て、そのまま気づけば1時間程の時間が経ってたりする。


「今度のテスト終わったら、私バイトしようかなって」


宇佐美は俺の勉強がひと段落ついた所で声をかけてきた。


「バイト…?お小遣いとか欲しい感じ?」

「まぁ、うん…そうだね、そんな感じ」

「そっか…何のバイトにすんの」

「コンビニとか…?」

「あー、良いね…どの辺のコンビニ?」

「私の家の近くにしようかなって…」

「宇佐美の…?」


宇佐美の家から近いコンビニで働くという事は、それは恐らく俺の家から出る予定があるという事なのだと感じた。俺は宇佐美を勝手に心配して聞いてみる。


「良いの…?それって…宇佐美が自分の家に戻るって事だよね」

「……うん、ずっと居るのも悪いし」

「まぁ……宇佐美が良いなら良いけど…あの義父の人とは仲良く出来そう?」

「多分…だいじょぶ」

「ほんとかよ…まぁ、なんかあったらまたいつでも来て良いから」

「ありがと…」


そうして少し重い空気の中勉強を終えて、体調も特に悪くならなさそうなので、橘に連絡を入れて土曜日に備える。


◇ ◇ ◇

『橘、やっぱ普通に土曜一緒に勉強しよう』

『体調普通に大丈夫そうだ』


梅からのメッセージが来てスマホのバイブレーションが鳴る。通知の所からどんな内容が来たか分かったけれど、すぐに返事は返さない。


だってすぐに返したら、変に思われるかもしれないから。


「う〜…早く返信したい…」


そんなちょっとおかしな事に悩まされながら、私は勉強を進めようとするけど、すぐに梅の事が頭に出てきてしまう。返事を事前に考えて、少しでも多く話せるように話題を考える…


『分かった!』

『梅って普段どんなマンガ読んでるの?』


とりあえず返信をして、すぐに勉強を再開する…こういう会話をしちゃった後はほんとに勉強に集中出来なくなる。


授業中もなんか気づいたら梅の方見ちゃうし…


『俺は色んなの読むよ、恋愛系とか戦闘系とか』


バイブレーションが鳴れば、すぐさまスマホを手に取って返信しようか悩むけど、少し時間を置いてから返信する…


『そーなんだ!おすすめとかある?』

『恋愛系とかの方が良いと思うし、「宮本の恋愛模様」とかおすすめ』


(恋愛系が良いって何!?私は恋愛しろってこと!?絶対違う!)


その後も何回か会話をした後、息抜きにおすすめされた作品を読んだりして、土曜日を楽しみに待つ。


土曜日の為に、家に帰れば色んなメイクの動画を見漁って、放課後は紗奈や優香と一緒に色んなお店で化粧品を見て回ったり


そして美容室で髪も切り、自分の身だしなみを整えていって自分自身を磨いていく…


「メイク…あんまり濃いと良くないよね…」


何度もネットでデート時のメイクについて調べて、ゆっくりと決めていく。普段からそれ程あまり濃いメイクはしていないので、いつも通りの方が良いのかもしれない…


「やっぱナチュラルメイクかなぁ…薄めの色のリップクリームと、目も少しちゃんとした方が良いかな…」


方向性を決めながら、メイクが出来れば自撮りをして、写真で出来栄えを見て決めていく…服にもかなり悩みながら、明るい色を基調にしようと思ったけど、私の場合は茶色系統の方が合うと思い、茶色系統の服にした。


夏に入り始めたこの時期、茶色だと暗い印象を抱かれるかもしれないけど、肌を少し多めに露出して、明るさを保ちつつズボンで茶色の落ち着いた雰囲気にする。


バレー部に入った影響で足が少し気になるので、明るめの茶色のワイドパンツでカバーしつつ、上は黒のノースリーブでボトムスインしてスタイルを良く見せつつ、腕の露出で明るさを見せる…


当日行く服装に着替えて、姿見に映った自分の写真を取って、優香や紗奈に聞きながら撮った写真を送る。


『可愛い〜香織はやっぱり落ち着いた色めっちゃ似合う』

『それ!あたしもそーいう系着たいけど、あんまり合わないから羨ましい』

『紗奈も絶対似合うよ!』

『ありがと2人とも!ちょー自信つく!』


そんな事をしていればあっという間に土曜日になって、梅と一緒に勉強をする日になる…

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