第五話
義妹との日常
ルーンが護衛騎士に加わりオーズの日常は変化した。
護衛騎士が三人になった事によりオーズの負担が減った。少なからず休日も増え、羽を伸ばすことが出来るようになった。
オーズにとっては城の人間の目が無いところは居心地がいい。やはり下町生まれは城の生活は合わないのだ。そう思っていた。
城から離れて一人リラックスしようとしたがオーズの噂は下町にも広がっていた。その原因はフレイルを追って馬で市中を引き摺り回された事に他ならない。
オーズを知るものからは、
「お前処刑されたって聞いたぞ!」「酷い拷問を受けたって?」「何を城でやらかしたんだ!」
半ば極悪人の如く、もしくは死人の様に扱われた。こんな扱いなら城で哀れみの目で見られる方がましであった。
そういうこともあり下町で過ごすのは諦めて、休日はもっぱら自室でゴロゴロする様になった。オーズ自身も何かあれば直ぐに駆け付けられるしそれでいいかと、投げやりに納得する事にした。
休日にも関わらずフレイルはオーズの部屋に訪れて時間を潰した。殆ど仕事と同じに見えるがオーズとしては貴重な妹の時間である。今まで別れている時間を埋めるかのように二人は談笑した。
個室に二人きりになるのは問題があるので勿論その場にはソニアにルーン、アーティがいる。
オーズは新たなに家族になったルーンとも積極的に話し掛けた。ぎこちない会話だがルーンの誤解も解けたので以前よりも話しやすくなっていた。ソニアは相変わらずであり、義兄になった事による対応の変化などはない。
アーティはルーンと直ぐに仲良くなった。やはり女の子同士話が合うのだろう。
一日のスケジュールにルーンの訓練も追加された。
オーズの訓練は中庭でやっていたが、流石に中庭でドンドンパンパン爆発させる訳にもいかないので騎士の訓練所まで行き訓練する事になった。
勿論フレイルを残す訳にもいかないのでフレイルも訓練所に行く事になり訓練を見学している。
フレイルが訓練場に来るようになったおかげ騎士達のやる気が上がり、これまでより気合を入れて訓練に励む様になった。そんな騎士達にフレイルは優しい笑顔で対応していく。笑顔を振りまいたことで騎士達はより訓練に励む様になった。
ルーンとソニアによる剣での訓練は流石の腕前であった。周りの騎士もその様子を見学する程である。そして何よりオーズが土下座をする事により本番さながらに剣を振る事が出来るようになった。見てるこっちがヒヤヒヤする様な急所への攻撃が頻繁に行われた。殆ど実戦である。
そして剣での訓練が終わるとルーンのスキルの訓練が始まる。その事を察すると周りで見学していた騎士達は用事を思い出したと言わんばかりにそそくさとその場を離れていった。
長らくスキルを使わないでいたルーンはその威力を調整するのに苦労した。力加減を間違えたルーンはその場で大爆発を起こすこともしばしばあった。そんなルーンの近くで騎士は訓練など出来ない。爆発に巻き込まれない様に騎士達は遠目に見守る事しか出来なかった。
そんな中でもフレイルは優雅にお茶を楽しんでいた。アーティは最初は爆発に驚き戸惑っていたぎ次第に爆発になれ、大爆発を起こすたびに持っている日傘でフレイルを爆風から守った。
オーズは当然ながらフレイルの近くで訓練中はずっと土下座をしている。
ルーンの訓練が終わると今度はオーズの訓練へと移る。そうすると遠巻きで見ていた騎士達もゾロゾロと集まりだした。
オーズの剣技は騎士と比べるとそれはそれは酷いがこれまでのソニアの特訓により何とか見れる様になっていた。騎士達もオーズと快く訓練をしてくれて、オーズに友達とまではいかないが多くの知り合いができた。
そして訓練が終わると爆発によりボコボコになった地面を平らにする作業が騎士達に追加された。流石のフレイルも申し訳ないと思ったか騎士達に特別手立てを支給した。特別手当てと言っても現物支給であり、メイド達に軽食を作らせて振る舞ってもらった。
これが好評であり騎士とメイドの仲を取り持ち、お付き合いしだした男女がいたとかいないとか。
オーズの日常に変化があったと言えば、フレイルは何かを作ってもらう為に何処かと頻繁に連絡をとっているぐらいだ。
オーズが質問すると、
「内緒、後でのお楽しみ」
とだけ言って何も教えてくれなかった。
オーズはフレイルがする事なので何か意味がありつつ、どうしょうもない事なのだろうと考えないようにした。いわば現実逃避だが、どうせ直面する問題なので逃げても何も問題はない。
そんな風に邪竜教徒の襲撃に備え、新たな情報を待っているとフレイル宛に一通の手紙が届いた。
手紙の封蝋を見た瞬間フレイルは固まった。そしてその表情は何だか嫌そうな顔していた。
「どうしました?フレイル様?」
ルーンが場を読まずにフレイルに質問した。
「お婆様からの手紙よ」
フレイルのお婆様、つまり先代の女王である。前の国王と女王は崩御しているがフレイルが即位していない為、現状は先代の女王という扱いになる。
フレイルは恐る恐る封を切り手紙を読み始めた。
「……お婆様が来る」
そうポツリと漏らしてたガタガタ震えだした。ルーンは慌てて肩に掛ける物を持ってきてフレイルに掛け温めた。その場にいた者は多分そうではないと思っていたが、フレイルが何も言わずにアワアワ震えているだけなので黙って見守る事しかできなかった。
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