必殺!兄ちゃんカッター!

フレイルとアーティは怪物に捕まり空を飛んでいた。アーティは空を飛ぶなど初めての経験であり且つ怪物に捕まってしまい怖がっていた。

「アーティ?大丈夫?」

 フレイルはアーティが震えているのに気が付いた。フレイルがアーティに気を使えるのはこれまで何度も修羅場を潜り抜けてきたからだろう。勿論空を飛ぶのは初めてだが前世で飛行機に乗った事もある為アーティよりは冷静でいられた。

「は、はい、なんとかフレイル様」

 アーティの声は震えており今にも気を失いそうであった。

「くっくっくっ、そんなに怖がらなくてもいいですよ。貴方達はまだ生かしておかなければなりません」

 怪物が喋った。しかしフレイルは驚かない。

「あんたでしょ?カミガーナーに怪しいもんを渡したのは」

「怪しいもんとは心外ですね。主様の大いなる力を授けたというのに」

 フレイルは怪物との会話で何とか解決の糸口を見出そうとしていた。

「主様って邪竜のことでしょ?邪竜ってそんな事出来るんだ」

「随分我々の事を調べているようで感心しました」

「あらどうも、感心ついでに目的を教えてくれない?さっきから暇でしょうがないの」

「言う訳ないでしょう。我々と敵対している貴方に」

「それは私が邪竜を倒した初代国王の末裔だから?それとも何か私に個人的な恨みでも?」

「どちらでもいいでしょう。どうせ貴方の立場変わらないのですから」

「圧倒的に有利な状況なのに随分と余裕が無いのね」

「別に人質は一人で十分なのですよ?貴方をここから叩き落としても何も問題ないのです」

 怪物は明らかに声色が変わった。アーティはフレイルを見た。アーティはフレイルが危ない、そう思ったがフレイルは笑っていた。

「そう、じゃあ貴方の目的はオーズなのね」

 フレイルの発言に怪物は黙ってしまった。

「図星のようね。姫である私を落としていいなんておかしいもの。私だけじゃなくアーティまで攫ったのはオーズを呼び出す為。違わなくて?」

「やはり貴方はここで落としておいた方がよいようですね」

 フレイルの顔が険しくなる。情報は引き出せたがこれではまずい。アーティも何か出来ないかと必死に考えていると聞き覚えのある声が聞こえた。

「うわあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ」

 それはどこからともなく聞こえてきたオーズの絶叫だった。


 数刻前フレイルが買い物をしていた店の前は混乱していた。市民は右往左往と逃げ惑い兵士達も空飛び怪物に何も出来なかった。

 その中で唯一ソニアだけが自らの使命の為に動いていた。馬を馬車から切り離し乗馬して怪物を追うつもりであった。

「ソニアさん!自分はどうすれば」

 オーズはソニアに自分があるべき事を聞いた。オーズも土下座をしながら何をするべきか考えていた。

「オーズ殿はそのままで土下座を止めると姫様が危ない」

 ソニアの言う通りオーズは土下座を止めてはいけなかった。しかし土下座のままでは馬に乗れない。

「オーズ殿、緊急事態のため申し訳ありません」

 ソニアは土下座しているオーズの胴にロープを巻きつけた。そしてそのロープの先を馬の鞍に縛り付けると颯爽と馬に乗った。

「姫様の救出に向かう!道を開けろ!」

 ソニアの怒号に人波が割れた。ソニアは馬を走らせた。そしてオーズは馬に引き摺られながら街の中で土下座した。

「嘘だろぉぉぉお!」

 オーズは絶叫した。側から見たら完全に拷問である。しかし土下座を止めたらオーズはボロ雑巾の様になってしまう。オーズは恐怖と羞恥心と共に街の中を駆け抜けさせられた。

 街を出て人気の無い場所に向かう怪物をソニアは懸命に追った。


 上空で引き摺られるオーズ見た者の反応は三者三様であった。

 アーティは驚愕した。オーズが馬で引き摺られ絶叫しているのだから当然であろう。

 フレイルは爆笑した。オーズが馬で引き摺られ絶叫しているのだから当然であろう。

 怪物はドン引きした。オーズが馬で引き摺られ絶叫しているのだから当然であろう。

 怪物は敵ながらオーズに同情した。いくら土下座していたら無敵でもあんな扱いはあんまりだと思った。

 それでも怪物は逃げる事を止めることはできない。更に速度を上げて目的地へと向かった。

ソニアは地上から怪物を見ていた。

「む!速度を上げた様です。見失わないようにこちらも走ります」

 ソニアは馬に早く走るよう指示をして速度を上げた。

「やめてててええぇぇぇぇぇ!!」

 オーズの絶叫はソニアの心には届かなかった。


 怪物は森の中で廃墟となった小さな砦に着いた。そこの監視塔の最上階にフレイルとアーティを閉じ込めた。

「ここで大人しく待ってなさい」

 そう言った怪物は女の姿に変わっていた。女は扉から部屋から出て外から鍵を閉めた。

 二人は最上階に残されてしまった。

 フレイルは窓の外を見たり今自分ができる事をやっていた。アーティは身体を縮め震えている。

「アーティ、大丈夫だから。さっき見たでしょ?ソニアと兄ちゃんが追ってたの」

 フレイルはアーティを励ました。アーティは仕えるべき姫に励まされる自分が情けなかった。

「うーん、かなり高い塔みたい。下にも見張りがいるし飛び降りても無駄っぽい」

 フレイルは何とか脱出の糸口を見出そうとしていた。アーティは震える足で立ち上がった。

「姫様お手伝いします!」

 アーティも窓の外を見て自分のできる事を精一杯やった。震える足でヨタヨタと壁を伝いながら周囲を観察する。

「ねえ、兄ちゃんってどんな人なの?」

「え?」

 フレイルの突然の質問にアーティは戸惑った。フレイルなりに緊張をほぐす為の質問であった。

「えっと、今と全然変わらないです。ずっと一緒に居てくれて励ましてくれて。私のために一生懸命に働いてくれる人です」

「ふーんやっぱりそうなんだ」

 フレイルはアーティの答えに納得したのかしてないのか分からない態度をとった。

「あの、姫様はお兄ちゃんと前世で兄妹って言ってましたよね?前世のお兄ちゃんってどんな人だったんですか?」

 アーティは同じような質問をフレイルにしてみた。前世というものが何なのかいまいち分からないがずっと一緒に暮らしてきた兄の知らない一面があるのかと思った。

「何にも変わらない。今と一緒。いつも私の為に尽くしてくれて私の為に働いてくれてた。私の為ならどんな惨めな事もやってた」

「そうだったんですか」

「だから再会した時安心したの、兄ちゃん何にも変わってなくて。だから大丈夫、こっちの兄ちゃんも必ず助けに来てくれるから」

 フレイルは笑った。それは兄が来てくれると信じている一切の曇りの無い笑顔であった。そんな笑顔を見てアーティも笑った。根拠など無い兄が必ず助けに来てくれると確信した。アーティの震えはいつの間にか止まっていた。

 一方オーズは森の中を引き摺られていた。久しく人の往来が無い荒れた道を引き摺られていく。

「灯りが見えた!もうすぐ着くぞ」

 ソニアは後ろにいるオーズに声をかけた。

「え?何ですか?何にも聞こえないです!」

 馬の走る音に地面を擦る音でオーズの聴覚は何にも役に立たない。

 森を抜けて砦に着いた。砦の周りには数十人のフードを被った邪竜教徒が待ち構えていた。

 ソニアは馬を降り馬に結んでいたロープを解いた。これでようやくオーズは自由になった。

 オーズは顔を上げてずりずりと土下座の姿勢でソニアの横に並んだ。

 砦の中から女が出てきた。

「ようこそ我らのアジトへ。私の名はサマンサ・マサマー。邪竜様を信仰する敬虔なる信徒です」

 サマンサは薄気味悪い笑顔を浮かべながら自己紹介した。

「のこのこと追いかけてくれて呼び出す手間が省けてよかったわ」

 サマンサが合図すると教徒達が武器を取り出してジリジリと二人を取り囲もうとする。

 ソニアは剣を構えた。オーズは土下座するしか出来ない。

 塔の上から声が聞こえた。

「お兄ちゃん!」

 それはアーティの声だった。

「無事なのか!アーティ!姫様は!」

 オーズも叫んだ。すると窓からフレイルが顔を出した。

「大丈夫兄ちゃん!傷一つないから!」

 フレイルの無事にソニアは安心した。しかし状況は芳しく無い。

「お前らの目的はなんだ」

 ソニアがサマンサを問いただした。サマンサは薄気味悪い笑顔のまま口を開いた。

「邪竜様の復活よ」

 与太話のようだがサマンサの目は真剣であった。

「正気か?邪竜は伝説上の怪物ではないのか?」

 ソニアは邪竜の伝説を信じてはいない。いたとしてもただの竜だと思っていた。

「邪竜様は確かに存在する。しかし憎き女神により封印され、そのお身体は動けないでいるだけなの。私たち邪竜教は邪竜様を解き放ち改めてこの地を治めてもらうために存在するの」

 サマンサの言っている事は無茶苦茶であった。しかしこの場にいる邪竜教徒は皆邪竜を信仰している。今の話を間に受けているに違いないのだ。

「おしゃべりはもういいかしら?どうせ騎士団が追いつくまでの時間稼ぎでしょ?行きなさい」

 サマンサが掛け声に反応して教徒達はソニアに襲いかかってきた。オーズは土下座しており無敵だがソニアは違う。剣の振りを見てソニアは集団は素人であると分かったが多勢に無勢、このままでは押し切られてしまう。オーズは這いずり回りながら邪魔をする事しかできない。

 必死で教徒の剣を捌くソニアだが後ろからの攻撃に反応できなかった。剣は足を掠めてソニアは膝をついてしまった。

「ソニア!」

 フレイルは叫んだがどうする事もできない

「さあ終わりよ、男の方はどうせ土下座しか出来ないから縛り付けなさい」

 サマンサの指示によりオーズは拘束されそうになった。絶体絶命である。

 塔の上からアーティが手を伸ばして叫んだ。

「お兄ちゃん!」

 何が出来るわけでもないがアーティの必死の叫びであった。

 するとオーズの身体が浮き始め塔にいるアーティに向かって勢いよく飛んでいった。誰も何が起きたか分からない。

 一瞬の判断だった。ソニアはオーズの馬に引っ張られるように結んだロープを握った。ソニアもロープに捕まりながら宙に浮く。

 サマンサも教徒も呆気にとられた。

「どう言う事おおおぉぉぉ!」

 オーズは絶叫しながら窓に激突して部屋の中に入った。ソニアも勢いそのまま部屋の中に何とか入ることができた。

 塔の中の四人はお互いを見つめあった。そしてアーティを見た。

「もしかしてスキルの引き寄せる?」

 フレイルは一つの可能性を示したがそれしか考えられなかった。

「でも今まで使えなかったのに」

 アーティは狼狽えた。こんな土壇場に都合よくスキルが使えるようになるものなのかと。

「あの、もしかして引き寄せるられるのはオーズ殿だけなのでは?」

 ソニアは馬鹿げた考えだと思ったが思いついた事を伝えた。

「そんな限定的な事ってあるのか?」

 オーズはアーティのスキルの役の立たなさに驚きを隠せない。

 扉の向こうからドタドタと階段を登ってくる音が聞こえる。

「こうしてはいられません。姫様ここから飛び降りて逃げて下さい。オーズ殿が土下座していれば無事なはずです」

「それだとソニアさんが残ることになるじゃないですか!」

 アーティはソニアの考えの重大な欠陥を伝えた。

「ダメ!そんな事許さない」

「私の事はいいですから、どうぞご自分の身の安全を」

 ソニアは譲らない。しかしフレイルも譲る気は毛頭ない。

 しかし教徒達は待ってくれない。足音がドンドンと近づいてくる。フレイルは土下座するオーズを見た。オーズはフレイルの何か恐ろしい視線に気づいた。フレイルはニヤリと笑顔を浮かべた。

 

 螺旋階段の下ではサマンサが指揮を取っていた。

「早くあいつらを拘束しなさい、女騎士は殺していい。男は必ず生かしなさい!」

 サマンサは勝利を確信していた。逃げ場のない塔の上では何もできないはずであり騎士団が到着しても姫はこちらの手の内にある。

 サマンサがゆっくりと階段を登っていると上の方から悲鳴が聞こえた。その声はどんどん大きくなってきた。そして悲鳴と共に勢いよく部下達が階段を降りてくる。

「何をしている!」

 サマンサは怒ったが部下達はサマンサをすり抜け下に降りていく。

「お逃げ下さいサマンサ・マサマー様!」

 部下の一人がそう言ったが何のことかサマンサは分からなかった。上を見ると悲鳴と何が擦れる様な音が聞こえた。

 見ると土下座をした状態でオーズが勢いよくすべり降りてきている。そのオーズの上にはロープを手綱の様に持っているフレイルが笑いながらソリの様に座っていた。

 フレイルはオーズをソリにして螺旋階段を下って来たのだ。

 サマンサは事態の深刻性に気付いた。

「「うああああああぁぁぁぁ!!」」

 サマンサはオーズと共に悲鳴を上げた。

「どけどけどけどけ!死にたいやつから前に出ろ!姫様直々に地獄に送ってやるよ!」

 フレイルは暴走族のように叫んでいる。サマンサは階段を下っていく。逃げ場などない一階まで一気に駆け下る。

「高貴なフレイル様を誘拐した罰だ!豚箱直通のジェットコースターだ!全員叩き込んでやる!」

 フレイルは実に楽しそうであった。サマンサが下を見ると部下達が扉の前で固まっていた。一つしか無い扉に我先にと人が押し寄せたため出れずにいるのだ。

「早く退きなさい!」

 サマンサが叫ぶが集団は一向に外に出れない。後ろからは暴走族が迫ってきている。

「死ねーーーーーーーー!!」

 フレイルの物騒な雄叫びを聞いたサマンサは一か八か壁に張り付き通り過ぎるのを祈った。

 物凄いスピードでサマンサの背中をフレイルが通り過ぎた。そして扉の前でワタワタしていた集団にオーズは土下座のまま激突した。

 激突した衝撃で外に集団が溢れ出す。その一人一人が白目を剥き倒れ込んだ。外に逃げ切れた者は恐怖した。

 扉からフレイルがオーズを担ぎながら出てきた。その顔は邪悪な笑顔をしており誰一人逃がさずぶちのめす、そう物語っていた。

 教徒達は震える足で逃げ始めた。腰を抜かして四つん這いになりながらも何とか逃げようとする者もいる。しかしそんな事はフレイルには関係ない。

「逃げろ!逃げろ!何処までも追いかけて叩き潰してやるからよ!」

 フレイルは塔の最上階から一気に駆け下ってきたのでとてつもない高揚感で溢れていた。

 フレイルはオーズを振り回し近場の教徒を殴りつける。教徒は情けない悲鳴を上げながら一人また一人と倒れていった。

 何人かは森に逃げてしまったがフレイルの周りには殴打された教徒達がうずくまりながら倒れていた。

 砦の中からサマンサが出てきた。フレイルはサマンサを笑顔で迎えた。

「あらサマンサさん無事でしたのね?私心配していたの、リーダー格の貴方がこそこそドブネズミの様に逃げたのではないかって。これで下水道を探す手間が省けたわ」

 フレイルは捕まえられた恨みを言葉にしてぶつけた。

「あまり調子に乗らない方がいいですよ?まだ私には主様の力があるのですから」

 サマンサがそう言うと懐から黒いカケラを取り出して飲み込んだ。

 サマンサの姿はメキメキと音を立てながら変わっていき翼の生えた怪物に変身した。

「うわ!あいつだったのか」

 オーズはサマンサが怪物の正体だと今知った。

「口閉じて!舌噛むよ!」

 フレイルはオーズを振り回した。しかしサマンサは簡単に避けてしまう。サマンサも大きな腕で叩きつけるがフレイルもオーズも無傷のままである。

 サマンサは空を飛びフレイルの攻撃を避けその隙に攻撃をする、両者その繰り返しだった。

 そうこうしているうちに後を追ってきた騎士団が砦に到着した。この時点でサマンサの勝利はほぼ無くなったと言えた。

「さあこれでお終いね」

 フレイルはサマンサに勝利宣言をした。それは油断ではなく確信によるものであった。

 サマンサの表情は悔しそうであった。

「そうね、今日のところは引き下がろうかしら。ただしお土産は持ってかないとね」

 サマンサは塔の最上階まで飛び上がった。最上階にはまだアーティと負傷したソニアが居た。サマンサは窓に手を伸ばし中にいるアーティを掴んだ。ソニアも必死で切りつけるがまるで効いていない。

 サマンサは腕を窓から引きアーティを連れて飛んで行こうとしている。

「アーティ!」

 オーズは土下座をしながら叫んだ。

「それじゃあねお姫様、そしてオーズ君」

 サマンサが逃げようとしたその時アーティが叫んだ。

「姫様!お兄ちゃんを投げて!」

 オーズはアーティが何を言っているか分からなかった。しかしフレイルは一瞬でアーティの考えを理解した。フレイルはその場でオーズを振り回しながら回転した。まるでハンマー投げの投球フォームであった。

 十分遠心力をつけてフレイルは叫びながらオーズを放り投げた。

「必殺!兄ちゃんカッター!」

 アーティはオーズに向かって手を伸ばした。

「お兄ちゃん!来て!」

 アーティは叫んだ。

「うあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 オーズも叫んだ。

 兄ちゃんカッターはフレイルの振り回すスキルとアーティの引き寄せるスキルによる合体技である。

 オーズはアーティに引き寄せられた。それは同時にサマンサの下へ突っ込んで行くことになる。

 サマンサは絶望感溢れる表情で叫んだ。

「いやあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 オーズは空を飛びながら思った。

 ――嫌なのは俺のほうだよ

 オーズはサマンサに激突した。サマンサは気絶したのか力無く空から地に堕ちていく。

 アーティは目を瞑った。無敵だと分かっていても怖いのだ。

 オーズは目を疑った。無敵だと分かっていても放り投げたフレイルに。

 そんなフレイルは満面の笑みであった。一発でサマンサに当たったからだ。周りの騎士達はオーズを同情の目で見ていた。

 ドスンと大きな音を立ててサマンサ達は地面に激突した。

 フレイルと騎士達は急いで落下地点に向かった。そこには変身が解けて女の姿になったサマンサと無事を喜んでいるアーティと土下座をしたまま固まっているオーズがいた。

「姫様!」

 アーティはフレイルの下に駆け寄った。

「よくやったわねアーティ。それでこそ私の側仕えですわ」

 フレイルはアーティを威厳たっぷりに褒めた。本当は抱き付きたかったが騎士達の手前踏みとどまった。

「それにオーズもよく頑張りましたね。もう土下座を止めてもいいですよ」

 フレイルは一応オーズも褒めた。フレイルの指示により街からずっと土下座をし続けたオーズはようやく立つことができた。

 その顔は無傷であるが焦燥しきっており。戦いに勝利した者とは思えなかった。

 オーズは思った。

 ――アーティもヤバい奴なのでは?

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