禁断の書物を追え!魔術師と学者の旅路
そらきち。
第1話
この星が終わりを告げる日に大いなる
預言書を解読するため各国からは名だたる研究者があつまった。どうしても解読できない文章もあった。古い言葉だった。解読は困難を極めた。今では話す者も読める者もいない。「これは彼に頼むしかないだろう」研究者のひとりで年長者のアルムの頭には1人の魔術師の名前が頭に浮んだ。
「あいつは変わり者で有名だ。いくら魔法がつかえるからと言っても信用ならない。あんなやつに、この書物を見せるわけにはいかないよ」1番若い研究者であるルークは息を巻いてわめいた。 アルムは「まて。この書物は魔法界のことが書かれてあることは間違いないのだ。わたしたちで解読するのは無理な話だ」
静かな眼差しでゆっくり話すアルムに皆は同調した。
次の日アルムは魔法界でも変わり者として有名なサイファを尋ねた。誰も寄りつかないような山奥の廃墟に住むサイファを尋ねて来る者は誰としていなかった。
孤独な魔法使いサイファは1人、滝に打たれながら修行に打ち込んでいた。
静かにその姿を見守っていたアルム。
滝行を終えたサイファに「久しぶりだな」と声をかけた。 「あなたは?」しばらく呆然と立ち尽くしていたが、走馬灯のように過去が流れてきた。アルムは町で足を挫いたサイファの母を背負ってこの廃墟のようなボロ屋まで送り届けてきてくれた恩人だった。人と話すなんて久しぶりだった。
アルムはサイファに例の予言書の解読に力をかしてくれないか?と頼んた。誰からも求められていないと思い込んでいたサイファにはアルムの言葉が胸に染みた。「やってみてもいいが私がそれを解読できるとはかぎらないぞ」サイファの答えにアルムは軽く頷き「頼むよ」と言い、サイファは必ず期待に応えてくれるだろうと思った。
数日が過ぎた時のこと。
大勢の研究者たちの好奇な眼差しを受け
サイファがゆっくり城に入っていく。
「よく来てくれたね。ありがとう」
アルムは礼を言いサイファを預言書のある部屋へと案内した。
研究者たちが歓迎していないことをサイファは悟った。
「私にできる事など限られているよ」薄笑いを浮かべて自虐したようにサイファは言い放った。
机に置かれた書物をゆっくり読み始めるサイファ。研究者の誰1人として読み解く事は不可能だった。
皆 興味津々にその様子を見守った。
「アルム これを最後まで読んでる時間はない。これを借りても良いだろう」そう言って予言書を抱えて歩き出した。
「何をするんだ!」研究者たちは皆慌ててサイファを止めた。大柄のサイファに敵うものなどいなかった。「だからあんな奴を呼ぶのは反対したんだ!」若いルークはサイファに殴りかかった。サイファはルークを軽くかわした。 「相手を選んで戦え」と一言いって立ち去った。
研究者たちが騒めく中、アルムは「私にまかせておけ。あいつは何かをあの預言書から感じとったのだろう。わたしが必ず預言書は守る。安心したまえ。」そういうとサイファのあとを追って城を後にした。
城から離れた高台にサイファは立っていた。「あなたが来るのは分かっていたよ」そう言ってアルムに話し始めた。
「あの予言書には古来から信じられている魔女の呪いがかかっている。それを解かないとならない。最後まで読んでいる暇なんてない。早くここを出発するんだ。」サイファの真剣な眼差しにアルムは頷くしかなかった。
夜が明けるのを待ち2人は山を降りた。
サイファは荷物を背中に担ぐと悠々と歩き始めた。
アルムはサイファについて歩くのが精一杯だった。険しい山を降りるのに学者であるアルムには体力がなかった。
それでも必死に2人は山を越えて行った。
「何か聞こえないか?」サイファがつぶやいた。
狼の遠吠えか、、、。
2人が歩き出したその先に光る鋭い眼差しがあった。
「どうする?狼だ。」
アルムは怯えた声で後ずさりした。
その狼はなぜか、悲しげで美しい瞳が泣いているように見えた。
サイファはそっと狼に近づき
静かに念じた。
そして 狼は目を閉じて静かに伏せをした。
「こいつは群れの中で生活していたみたいだが
仲間を人間に皆殺しにされたんだそうだ。
その想いが伝わってくる。苦しんできたみたいだね。」
サイファは荷物から少し食料を取り出し
狼に与えた。
何日も何も食べていない様子だった。
目を閉じると狼の声に耳を澄ませた。
サイファは手を合わせ念じ始めた。
狼は「おれの家族は人間に殺されたんだ。」
涙を浮かべてはっきりとした声がアルムにも聞こえた。
「大丈夫。1人きりなんだろう。一緒に旅に出ないか?1人よりはマシなんじゃないか?」
狼は「俺も一緒に行ってもいいのか?」
人間の言葉で話す狼にアルムは驚きを隠せなかった。
禁断の書物を追え!魔術師と学者の旅路 そらきち。 @mame12_neko
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