猫を飼わない方針だった家庭に、偶然現れた茅野子が少しずつ家族の一員になっていく過程が、装飾を抑えた筆致で綴られているのが印象的でした。レビューにもある通り、祖父母や姉との関わりを通して家族の絆が深まっていく様子は、ペットを飼った経験がある人なら誰もが心当たりのある温かさを持っています。
「褒めて褒めて」という奥儀や3回の手術といった具体的なエピソードが、茅野子という一匹の猫の個性をしっかり立たせていて、単なる思い出の記録に終わらせていません。最終章の「命は受け継がれ次の命を育んで行く」というタイトルからも、終わりではなく繋がっていくものとして死を捉えようとする作者の姿勢が感じられます。
事実のみを書きたいという作者の言葉どおりの誠実さが、9,622文字という短さの中に凝縮された、猫好きでなくても心に残る一作だと思います。