最終話【TRPGはカスでもある】

「カスかよ」

 宇辻は珍しくTRPGのイベントに参加していた。

 TRPGのイベントはネット上では定期的に行われているもので、利用すれば自分が好きなTRPGに辿り着くこともたやすい良いイベント。なはずだった。

 宇辻は既に頭抱えていた。

 誰かの卓に参加するのが億劫でGMとして参加したのがそもそも悪かった。

 かなりエモーショナルなシナリオが出来たと、ルンルン気分でイベントに参加したというのに既に頭が痛い。

「なんでこのPC1。家族を蔑ろにするんだ?」

 PC1。いわゆる主人公ポジションであり、今回のシナリオではかなりPC1の家族問題で動いているシナリオなのだが、このPC1が破壊的であり、正直言って何故このPC1に来たのか意味が分からない。

「希望がPC1なんだよなぁ」

 誰かがやらずになぁなぁでPC1をやるというなら多少気持ちも分かるが、自分から希望してPC1をやっている人間のやるRPではない事を現在までしている。

 軽くその所業をまとめて見よう。


・姉の忠告を無視する。というか姉に対しても態度が悪い(姉は味方キャラ)。

・他PCの事を完全無視。

・家族の事に対してリアクションが薄い。

・悪い意味で唯我独尊。誰の事も考えず他人の苦労も理解しようとしない。

・RP下手。


 この中で特に姉に対しての態度はかなりいただけない。

 軽く忠告しても無視して進むその態度には、昔の自分を思い出して嫌になる宇辻。

 他の人たちはちゃんとシナリオを楽しんでくれており、PC1の人がかき乱すだけかき乱し、雰囲気を悪くしているのが本当にきつい。

「(こういう人がいるからなんだよなぁ)」

 そう、TRPG事態に罪はない。罪があるとすれば、それは――

「こういう調和が出来ない人なんだよな……」

 改めて思い知る。TRPGを良くも悪くもするのは人次第なのだと。

 だからこそ、こういう時に宇辻がすることは決まっている。

 今日は”イベント”なのだ。

「……迷惑プレイヤーとして運営に通報しよう」

 そうすると同時に自分の心の中のブラックリストに登録し、二度と卓を囲まないように努める。

 そう、良いTRPGライフを送る為にはこれは必須技能なのだ。

「迷惑プレイヤーはBAN」


 TRPGは所詮遊びである。ただ、遊びだからこそ、どうしても『カス!!!』と言いたくなる時はどうしても訪れる。

 それでも皆と調和した時、皆と笑い合えた時。

 そんな『カス』な事がどうでも良いぐらい楽しめる時がTRPGにはある。

 宇辻はそれを求める。永遠に。

 TRPGという深い沼に堕ちながら。

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TRPGボッチ 天野 @xcgd4

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