第27通 郵便屋さんの一大イベント。 年末繁忙期編10 〜地獄の2丁目〜

※今回、馬や竿といった専門用語が出ます。詳しくは第18通 郵便屋さんの一大イベント。年末繁忙期編4 〜年賀レイアウト〜をご覧ください。


私の担当区の順立て済みの年賀状が収まっている馬を見ていた先輩が驚きの表情で、大区分中の私に話しかけてきました。

「おい!?お前、順立て済みの年賀状のチェックってしとるか??」

「いえ?見てないですけど?」

「ちゃんと見てみ?」とニヤリと笑います。


え?どういう事?


と、確認してみると…


では、ここで年末年始の内務アルバイトの仕事を紹介したいと思います。


年末年始の内務アルバイトは大きく二つに分かれます。

一つは郵便課での内務アルバイト。

これは大人のアルバイトが中心で、郵便課に上がってきた年賀状を県外、県内などに仕分けをしたり、郵便課の内務作業のお手伝いをするアルバイトで昼間から深夜まで働きます。

もう一つは集配課に配属される女子高生が中心になる年賀状の順立て要員のアルバイトです。


女子高生バイトの内務作業はどういった作業なのか?

まず、郵便局員が大区分している年賀状を大区分棚のマスから取り出し、既に大区分されて馬に掛かっている竿に収まっている未着手の年賀状と合わせて抜き出します。

次に横に1から16まで番号が書かれた16マスに仕切られ、さらにそれが上下半分に仕切られている長方形の箱型の年賀状順立て用の箱に順立てファイルを立てます。

順立てファイルに左から右へ1から16まで配達順路の順番に番号が書かれているので、その書かれている番号と年賀状の宛名を照らし合わせて年賀状用の順立て箱の同じ番号のマスにその年賀状を入れていきます。

順立てが完成するとそれぞれのマスに入っている年賀状に黄色い細いゴムを掛けて左から右へ1から16まで書かれているマスの順番通りにまとめて、順立て済みの竿に青い仕切り板と一緒に竿に収めます。

ちなみに、順立て未着手の年賀状は順立て済み年賀状と区分けするために赤い仕切り板で仕切られて竿に収められています。


全ての大区分棚の道順組み立てを一巡すると、二巡目に順立てをした年賀状をすでに完成されている一巡目の順立て済みの年賀状に組み足して輪ゴムを掛け直す。

そういう作業を繰り返していくわけなんですが、ここでトラブルが発生する場合があるのです。


今回先輩に指摘された事が今から紹介するトラブルです。


一番多いトラブルが、一巡した順立て済みの年賀状に二巡目に順立てをした年賀状を組み足さずに、一巡目の順立てした年賀状の束の後ろに置いていくのです。


これを気づかないとどうなるか?


同じ道順組み立て済みの束が二つ出来てしまうのです。

それが二つどころか三つ続くと最悪です。

我々は二つの重複束を「ダブル」

三つの重複束を「トリプル」と読んでました。


それを発見すると重複束を一つにまとめるのに余分な労力を費やす事になるんです。トリプルなんて涙ものです。


もう一つのトラブルが、完成された道順組み立て済みの年賀状の向きが違うトラブルです。

基本的に順立て作業は年賀状を立てると左側に宛名が来る様にまとめて束にして、青い仕切り板と一緒に竿に収めます。

この作業が左利きの子だと順立て箱にハガキを入れる向きが右利きと逆に入れてしまい、宛名が右側にまとめてしまう子がいるのです。


この「逆向き」も厄介で、逆向き順立て済みをされている年賀状を今度は右利きの違う担当者が作業すると最悪の場合、組み足した時に左向きと右向きとごちゃ混ぜの束が出来上がる場合があるのです。


そのトラブルの「ダブル」と「逆向き」が重なると、修正するのに大変どころでは無くなります。泣きたくなりますよ?ホントに。


今回はその「ダブル」が複数発見されたのです。

慌ててその「ダブル」を作った女の子に再度作業を説明し理解してもらえました。

のですが…

後日にまたもや先輩の声が。

「おーい!ここと、このマスにダブルあるぞ!?」

「… マジっすか?」

確認すると先日指導した子が作業していた所です。


我々局員は大忙しの年末年始の作業を円滑に行いたいのでアルバイトの学生達には外務も内務も極力分かりやすく親切丁寧に教える事を心掛けます。

ですが、その学生アルバイトのスキルにも個人差があり、ベテラン顔負けの作業を出来る子もいれば、何度教えても理解できない子もいるのです。


結果的にその女の子は新人の私が受け持つには荷が重く、他のベテラン班員の区に回され要領の良い子が私の区に配属されました。


年末年始のアルバイト募集の時期にはいろいろなタイプのアルバイトが採用されるのですが、外務アルバイトでもひと癖あるバイト員がいました。

次回はそのお話しをしましょう。


今回もご愛読いただきありがとうございました。

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