十五通目 目玉取り換え屋

 古来より視力の弱い人間は一定数いた。彼らの多くはその視力の低さに見合った職に従事していたが、ではそれをよしとしない人間はどうしていたのだろうか。答えは決まっている。目玉取り換え屋から目玉を買っていたのだ。

 目玉取り換え屋は真夜中、山奥に来る。ある日突然、山道の中途にぼろぼろの屋台が現れる。そうして看板を一つ立てる。目玉あります。

 その噂を聞いた、目玉を欲しがる者たちが、真夜中にも関わらず息せき切ってやってくるのだ。ただし来る際も帰る際も決して明かりをつけてはいけない。行燈あんどんの一つでもつけると目玉取り換え屋はその者には見えなくなり、おまけに目玉を取られてしまうということだ。

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