金猫と魔女
25話 全力で逃げるタイプの奴
街へと帰還した。
スピナーの言う通り、罰ゲームに相応しい過酷なクエストだった。
だが、それも昨日で終わった。俺はこれから自由の身。
今日から普通の依頼を受けるのだ。
「さーて、なんにするかなぁ」
掲示板に貼られている依頼書を吟味する。最近はもっぱらついてない。
ここら辺で報酬の良い依頼で、稼いでおきたい。
「ん〜、これにするか」
『アプトトスの角の採取』に決定した。
こいつは戦闘能力こそないものの、見つけにくいことと、逃げ足の速さで難易度が高い。
が、報酬はなんと金貨3枚だ。
「ん?」
ザワザワと少し周りが騒がしい。
まさか? と思い後ろを振り向くと月の雫がいた。あいつら、ほんと分かりやすいよね。
「………あ」
リズが俺を見てトンチキな声を出す。思わず下を向いた。
駄目だ。こんな所で話しかけられたら絶対に周りの野郎どもが黙っておかない。
そう、なるべく、なるべく自然にギルドを出る。あいつらに接近しないように遠回りをしながらーー
「おはよう、グレン」
気づけばリズが近くにいた。
話しかけてくんじゃねー! と、心の中で叫ぶが、現実では笑顔を作る。
もちろん、作り笑いだ。
「よぉ、リズ。じゃあ、俺はこれから依頼あるから」
「……なんの依頼?」
「アプトトスの採取だけど」
早く行かせてください。さっきから周りの奴らの目がすごいんです。下か、お前の目くらいしか俺の目線の安全場所がないんです。
「……私も、行っていい?」
何かを握りつぶしたような音があちこちから聞こえた。もう、怖くてあいつらの方見れないよ。
恐怖に震えていると、思わぬ援軍が登場した。
「ちょ、ちょっとリズ! 駄目ですよ! 男の人について行くなんて絶対に駄目です!」
「なんで? グレンは良い人。他の男の人たちとは違う」
いや、俺も他の男達と一緒ですが?
「そもそも今日は昨日の報告の為に来たんでしょ?」
「報告は1人いれば充分」
カーラはたじたじになってしまう。
負けるなカーラ! まだだ! お前の力はそんなもんじゃない!
「別に良いんじゃない? 彼」
そこで思わぬリズへの援護射撃。俺にとっての追撃を行ったのはステラだ。
「そもそも彼は中堅くらいのランクなんでしょ? なら、万が一も起こらないと思うし、なんなら私もついて行くよ」
「それは……」
カーラは一度、冷ややかな目で俺を見た。何かしたら、殺すと目が物語っている。
それに、そこらじゅうから武器を研ぐ音が聞こえる。こんな状況でお前らとクエストに行けって? 馬鹿か?
俺を殺したいのか?
「……はぁー。分かりました。ですけど、ちゃんと気をつけてくださいよ?」
「分かってるよ」
何やら、話がまとまったようだな。うんうん、良かった良かった。
「じゃあ、俺はこれからクエストなんで!」
俺はギルドから全力で逃げた。
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