23話 地下の先


 階段を降りると廊下。

 一本道の薄暗い廊下を歩いていると、やはり色々と気づくことがある。先へ進むたびに感じるヒヤリとした空気や光で照らされている埃たち。


 あー、めっちゃ言いてぇ。

 「ここちゃんと掃除してんのか?」とか言ったり、「もし何か出てきたら俺が守ってやるぜ!」とかふざけたい。


 だが、言えない。何故ならこの地下には月の雫も来ているから。不用意な発言をすればきっと怒られるだろう。

 いや、怒られるだけで済むだろうか? 


「どうしたんだよ、グレン。なんかいつもより口数少ないけど」


「いや、別になんでもない」


「絶対なんかあるだろ。お前はどんな時でも基本ふざけてるんだから」


 その評価はどうなんだ? 俺だって真面目な時はちゃんと真面目だよ。


「彼も緊張してるんじゃない? 何があるのか分からない時に警戒するのは良いことだよ」


 いや、別に緊張している訳じゃないんです。ただ、貴方たちがついてきたせいで不用意に喋れないだけです。


「別に彼が緊張した所で何もできないので変わりませんよ。そもそもステラが危険がないか確認に行ってるので無駄です」


 まぁ、その通りなんですけど。カーラさん、なんか当たりキツくないですか? 


 いや、男嫌いだからこんなものか。

 ちょっとリズの距離感のせいで感覚が麻痺してたな。



「……はぁ」


「おい、本当に大丈夫か?」


 スピナーが本気で心配してくれている。けど、俺がこんなしょうもないことで悩んでいると言ったらどんな顔するんだろう。

 いや、それだけじゃ済まないな。たぶん、殴られる。そんな気がする。


「大丈夫だ。ちょっとアレがあれなだけだから」


「そ、そうか。本当に辛くなったら俺の後ろにいても良いし、なんなら外で待機しても良いからな」



 あぁ、スピナーは男らしい上に優しいなぁ。だからこそ余計に言いづらい。



「あら、行き止まりだ」


 これ以上は進めないと言わんばかりに壁があった。どうやらここで終わりらしい。


「ぐ、グレン。ちょっと壁を照らしてみてくれないか?」


「壁を?」


「あぁ」


 なんか気になることでもあるのだろうか。言われた通り照らしてみると、何か変な絵が描かれていた。



「下手な絵だなぁ」



 茶色い絵が薄く伸ばされていて、変なでかい物が描かれているだけ。

 これ、もしかして生き物か? よく見れば足とか頭らしきものがある。まぁ、どちらにせよ下手くそな絵だ。

 これなら俺の描いた絵の方が上手い気がする。

 いや、もしかしてこれがアートなのか?


「なぁ、これってもしかしてアー」


 スピナーに尋ねようとしたが、そこに姿はなかった。

 スピナーは壁画に近寄り、触りながら眺めていた。


「これは一体、何を表しているんだ?」


「他に、何か手掛かりになりそうなものはないね」


「みたいですね。念の為に写しておきます」


 カーラが自身の魔法袋から真っ白な紙を取り出した。何かしらの魔法を使ったのか、紙は空中で止まり、あの壁画と全く同じ絵が浮かび上がった。


 俺だけ訳も分からず置いてけぼりだ。


「これで、完了です」


「じゃあ、出ようか」


「だね。ここ埃っぽいから毛について困るなぁ」



 みんな戻っていく。けど、未だスピナーだけは絵をじっと見ていた。


「なにしてんだよ、行かないのか?」


「……あぁ、今行く」


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