3: 攻力
急いで野草を採っていた場所に戻ろうと走っていた。
「ハァハァ……日が落ちるのが早いなぁ。あと少し!」
──「ギィィィイ‼︎」
〈この声は……⁉︎〉
不気味な鳴き声が聞こえてきたので、慌てて近くにある木の陰に隠れた。木の陰から少しだけ顔を覗かせて様子を窺う。
〈なっ⁉︎〉
……野草が入っている籠を影獣が壊している。
「あ、あいつ、おれが頑張って採った野草を散らかしやがって! 許さねぇ!」
腰に佩けてあった剣を抜き、影獣が落ち着くまで静かに待つことにした。よく見てみると、初めて見る黒色の鳥のような影獣だ。
〈何だ? こんな影獣見たことがない。昼のやつらとは違う類なのか⁉︎〉
「ギィィィイイイ‼︎」
何故か鳥のような影獣がこちらに向かって走って来る。まさか自分の気配に気付いたのだろうか。
「ゲッ、嘘だろ⁉︎ 何で分かったんだ⁉︎」
慌てて両手でグリップを握り剣を構えた。鳥のような影獣の足の爪はかなり鋭く見える……油断すれば、一瞬で身体を引き裂かれるだろう。
〈足の爪に気をつけて攻撃をするしかない!〉
攻力を使える者は、自身の腕力と脚力を瞬時に増強することができる。
だが、まだ自分はしっかりと攻力を使えてはいない……急に攻力が解け、力が抜けてしまうことがある。
〈上手く使える自信はないけど、今は戦うしかないんだ!〉
「来い‼︎」
「ギィィイイイ‼︎」
やはり前足の爪で攻撃をしてきた。
「ぐっ‼︎」
慌てて剣で爪の攻撃を受け止める。だが、予想していた以上に鳥のような影獣の力が強く、剣を持っている右手が震え始めてしまう。
〈嘘だろ⁉︎ なんて力だ……くそっ!〉
再び腕に強く力を入れた。
「うぉらぁああああ‼︎」
剣と爪のぶつかり合う音が辺りに響く。一瞬、鳥のような影獣がよろけた瞬間を見逃さなかった。鳥のような影獣の前足に目掛けて攻撃を仕掛ける。
──ザッ!
「ギィィイァアアアア‼︎」
前足に剣を刺すと、鳥のような影獣はその場に倒れ込んで影となり消えていった。
「ハァハァ……よ、よかった。力が急に抜けていたら危なかった。ハァァァ〜……」
安堵すると地面に座り込んでしまった。
──ガサガサガサ
「え」
目が点になる。
前にある茂みから、先程と同じような鳥の影獣が三体も出てきた。どうやら仲間の悲鳴を聞きつけてこちらへと来てしまったようだ。
「ハハ……冗談だよな?」
急いで立ち上がり再び剣を構えるが、先程のダメージがあるのか右腕が震えて力が入らない。
〈くそっ、何で力が入らないんだ⁉︎ このままじゃ……!〉
三体の影獣は自分に目掛けて前足の爪で攻撃を仕掛けてきた。
「くっ!」
恐怖で目を閉じてしまう。
──「あんれぇ? 何でこんな時間に人がいるんださ?」
声が聞こえたので、閉じていた目をあける。茂みの前に、小指を立てて左脚を僅かに上げ変なポーズをしている太った中年の男性が立っていた。
〈……ひ、人? 嘘だろ、気配を感じなかったぞ⁉︎〉
三体の影獣の爪が太った中年の男性に迫っている。
「お、おいっ! 危ないぞ、おっさん!」
剣を構えて太った中年の男性の前に立とうとした瞬間、服を強く引っ張られ後方へと投げられた。
「いって‼︎」
「おんめぇ、何か必要な物はあるかさ?」
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