第49話 最終決戦6
「ふう、やはりあの奥義は、少々負担がかかるな……。アレを受けて、まだ破壊しきれていないタフさは、賞賛にあたいする……。しかし、いよいよ最期の
デス畳は、タミ、タミ、と満足げに笑う。
「ん? キサマは……二度までも
目をほそめ、“お嬢さま”を見やる。
「楽しませてもらった礼に、せめて、苦しまずに
ズン、と地を揺らすように、デス畳が歩を進めた。
“お嬢さま”には、もはや、抵抗しようというようすもない。
「たみ!」
そこへ立ちはだかったのは、ミニ畳であった。
畳でありながら、ふにゃふにゃと波打っている。
おそらく、立っていられぬほどの恐怖のためであろう。
「キサマは……ジャマするなら、ただではおかんぞ。
「ミニさま、いいのです。あなただけでもお逃げあそばせ……!」
“お嬢さま”の制止もきこえぬもののように、あるいはとどいた声を振りきるように、ミニ畳は胸を張って少しでもからだを大きく見せようとした。
デス畳は、無視してまた一歩“お嬢さま”へ近づく。
ミニ畳は押しかえそうとこころみるが、デス畳とはまったくパワーがちがっており、なんの妨げにもならぬ。
「……タミッ」
蚊でもはらうように、デス畳は軽くはたいた。
たったそれだけでミニ畳は吹き飛ぶ。
めそめそと、すすり泣くようなようすを見せたミニ畳であったが、いよいよデス畳が“お嬢さま”の前に立ち、
「……さらばだ」
と両の畳ですくう段になると、
「たみ、たみ、たみー!!」
と絶叫し、ためにためたバネがはじけるように床から
「ぬ、ご……っ」
ふいを打たれたデス畳は
「キ、サマ……ッ!」
と
猛スピードで壁へと激突したミニ畳は、たった一撃でボロボロになってしまう。
「キサマは、しょせん、
目を吊りあげて怒鳴りつつバサバサと
そのまま
「やめなさい、わたくしたちだけで、じゅうぶんでしょう……!」
“お嬢さま”が、必死に首をもちあげながら言うが、デス畳の圧力はゆるまない。
「たみ~」
とミニ畳は苦しそうに、嘆き悲しむような声をあげる。
さらに「たみ」と、弱々しく、いずこかへと呼びかけた。
『あなたは……』
そうもらしたのはメカ畳であったが、両者のあいだにどのような意思疎通があったのかは、人の身にはわからない。
メキ、メキとミニ畳のからだが少しずつ損壊していく。
「たみ、たみぃ……」
ひと声ごとに、ミニ畳の声が弱まっていく。
そのとき、ふと――デス畳の動きが停止した。
そのあと、
「ふん、キサマのような
床へとたおれるミニ畳を蹴り捨てて、背をむける。
「
改めて、“お嬢さま”へとむかった。
(せめて生きていてくれれば、いいけれど……)
“お嬢さま”は
(なにもできなくて、ごめんなさい……)
力の入らなくなってしまったからだで、そっと目をつむる。
真っ暗ななかに、ただ、いとしい人の姿だけがまぶたの裏へうつっている。
(最期は、あなたのその笑顔といっしょに……)
デス畳がすぐ目のまえで、グパッと口をひらくけはいがした。
暗やみのなか、ふわりと自分のからだが浮くような浮遊感があり、その耳に――
「……“お嬢さま”、遅くなってしまって、すまない」
そう、自分に詫びる声がきこえた。
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