友人A
あの子は、人と関わるのが嫌いでした。小学校からです。
それが原因でいじめが始まりました。
引っ込み思案というのはちょっと軽い気がします。もっと異質な雰囲気でした。
普通に話しかけても返事をすることはほぼないし、目を合わすこともあまりしていなかったです。子供ですから、そういう態度をとられるとこの子は自分のことが嫌いなのではないか? と思うようになるわけです。そして、あなたが嫌うなら私も嫌いってなるわけです。クラスの女子全員、この流れを辿りました。
最初は無視から始まりました。
まぁ、あの子から誰かに話しかけることなんてなかったので低学年の頃は成立していませんでしたけど。高学年になると存在を無視するという手法が使えるようになったので、いじめが際立ったのは五年生の頃からでした。
いじめについて道徳の授業で議題になった時、担任の先生は、あの子は緘黙症という病気なのだと言い張っていました。だからいじめるのはよくないって。
あの子ですか? その場にいましたよ。いつも通り俯いて、机とにらめっこしていましたけど。
まぁ、アグレッシブな先生でしたからね。子供の微妙な心理を読み解いて関わるというよりは、綺麗事を並べて勢いだけでまとめようとするタイプの。本当は根暗なくせに、何に影響されたのか、やたら熱血ぶっていましたね。
だからその発言がいじめを助長するなんて考えることはできなかったと思いますよ。自分を取り繕うだけで精一杯な先生ですから。
その道徳の授業を境に、いじめは無視から言葉の暴力に変わりました。「病気」という言葉に男子が反応して、いじめに加わりだしたからでしょうか。
「お前ビョーキってウイルスってこと?」
「来たぞ! バイキンが伝染するぞ!」
「ビョーキ! ビョーキ! ビョーキ!」
「病気だからやっぱり死ぬの?」
色々な酷い言葉を浴びせられる度、あの子はよく泣いていました。
声は上げず、恨めしそうに宙を見つめながら。
可哀想だと思うよりも、ちょっとびっくりしました。なんていうか、この子も泣いたりするのかと。常に表情とか言葉で感情を伝えてこない人って心が無いように見えるから。
こう言うと、まるでそれまでは人として認識していなかったように聞こえますね。
でも、実際そうだったのかなぁ。
正直、ロボットみたいに思っていたりしました。違いますよね。
ちゃんと悲しくて、ちゃんと苦しくて、ちゃんと怨んでいたでしょうね。
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