第 3話 バザ~ルでござ~る
翌日
「こんにちは~ 長老さん」
「おぉ、解決策は見つかったのかい?」
「まぁ一応は… どれかは当たるでしょ」
「呑気じゃのぅ… さりとて、私らには打つ手が無いからなぁ…
畑を止めてどないするんじゃ?」
「昨日は止めたらって言ったけどさ 違う場所で畑やればいいじゃん
食べる分は採れるんじゃないの? 知らないけど…
他の案はきっちり説明するからちゃんと聞いてよね
その前に… レモネン水です どうぞ」
「レモネン水!? グビグビ… ひゃ~ ちべたくて美味しい!」
「まず先に聞きたいのは… 村の人もみんなお肉は好き?」
「肉? そうじゃな… 好きじゃな」
「どんなお肉が好きなの?」
「どんな肉も好きじゃよ…」
「ふ~ん… 鶏肉は?」
「もちろん好きじゃ 鳥肉ならなんでも美味いぞ」
「良かった この辺で獲れる美味しい鳥って何がおすすめ?」
「そうじゃのぅ… ウェイキーバードが一番じゃな 次にゲレロチャボ
その次はシルキルキーかのぅ… あくまで私の好みじゃがな…
ブルーラビットの肉は、鳥肉のような味わいじゃ それも頻繁に食うぞ」
「うさぎねぇ… 人気なんだ」
「そうじゃな… 肉の好みなんか聞いてどうするんじゃ?」
「お肉で商売を始めたら、良いんじゃないかって考えたのよ」
「そんなんで、上手くいくのかのぅ?」
「やってみてダメなら、他の手を考えればいいじゃない!
今回収穫したじゃがたらいもはどうするのよ?」
「半分をハルヨシ村に売りに行く予定じゃが…」
「私も行ってみたいんだけど どんな物が売ってるのか調べたいし」
「別にええよ」
「向こうに行ったら、どんなスケジュールなの?」
「明日の朝6時に出発して、到着が小一時間じゃな 7時から7時半くらいに着く
以前は結構時間が掛かってたんじゃが、ノア様の馬は速くて大助かりじゃ
商品を市場で買い取ってもらって、その金で必要な物を買って帰ってくる
そんだけじゃよ だから、あっと言う間に帰ってくるっちゅう段取りじゃな」
「大体の物は、市場で買える?」
「買えるぞ 商店もそれなりにあるんでな
時間は掛かっても良いから、色々と見たらええ 知らんけど」
「ありがとう 長老さんも行くの?」
「私は行かんよ ハーランドとサンダースっちゅう兄弟じゃ
2台の馬車で売りに行く 我が村の精鋭じゃ 戦わんけど」
「なにそれ… まあいいや 分かった 今何時?」
「今は… 14時20分じゃな、大体」
「大体? はっきりと分からないの?」
「5分10分はな… そんなもんじゃろ 知らんけど」
「まぁ良いや、明日の6時ね 私が来るまで行かないでよ」
「分かった」
ちせは部屋に戻った・・・
「大体の異世界アニメなら、村に入った途端に一悶着あったりするからね
そこんとこは抜かりなく、アレをポケットに入れといて…」
翌日のじゃがたらいも売却に備え、準備に勤しむちせであった
翌日
「おはよう長老さん」
「おぉ、ティセ 遅れずに来たか」
「そんで、私とスリーマンセルを組む精鋭は?」
「もうすぐ来るじゃろ…」
暫く待っていると、男が2人訪れた
「君がティセかいな?」
「そうだよ」
「俺はハーランド よろしくな」
「よろしく~ もう1人は?」
「表で待ってるで そろそろ行こか」
「そうね」
長老の家を出てハーランドの弟と合流したちせ
2人は2台の荷馬車に乗り、ちせはハーランドの弟が操る馬車に同乗した
「君がティセやな 僕はサンダース よろしゅうな」
「よろしく~ ねぇ、馬車ってもっと"ちんたら"ガタゴト行くと思ったら、
結構なスピードなのね… ビックリしちゃった」
「普通の馬なら、ティセの言う通りやな ノア様の馬は"眷属"や
せやから、速さの桁がちゃうで」
「"眷属"・・・ 分からないけど はい、お水どうぞ
兄貴にはさっきあげたから」
「ありがとう… なんや… 凄く透き通ってて綺麗な水やなぁ しかも冷たい…
ん… ちょっと凍ってるのか… こんな気温なのに???
君も魔法が使えるんか?」
「私は使えないけど、頭脳明晰なこの頭があるから(どーん!)」
「ほな賢者やな そんで畑をやらんでもええように何か考えてるんやろ?
大したもんやな」
「まぁね… 適当にやってれば、結果は付いてくるもんだから」
「言葉の意味は分からんけど、とにかくすごい自信や…」
「"君も"って事は、長老以外で魔法使える2人ってば、貴方たちの事なの」
「そやで、兄貴は水で僕は火や そやけど、魔物を倒せる程でもないからなぁ
威力は大した事あらへんで」
「でも使えるんだからスゲェじゃん」
「自分褒め上手やな…」
そんな他愛もない話をしながら、1時間程度でハルヨシ村に到着した
ノア男爵本領 ハルヨシ村 人口約2200人 規模:小
「ちょっと…!? 全然お店が開いてなくてすっからかんじゃない! プンスカ!」
「そやで こんな時間に誰が買いに来るんや… 今の時間は商売人が仕入れる時間や
商店が開くのは早くて8時頃からぽつぽつ開いてくで 大体は10時頃やな」
「それじゃあ、今の時間しか仕入れる事ができないワケ?」
「仲卸は朝晩売り買いできるで 朝は4時からで、夜は8時までやな」
「ふ~ん…」
馬車は緩やかなスピードで進んでいく…
「村にしては街くらい大きいやろ ここが村の中心地 バザールや」
「へぇ~ これがバザ~るでござ~るか! 賑わいはまぁまぁだけども」
「まだ時間が早いからなぁ ・・・・・・ここや ここで買い取ってもらうんや」
「ほほぅ~」
「こんちわ~ A-65535 タカミ村 サンダースです
今回も2台です よろしゅう」
「よ~しストップ! 2台とも馬を外して、荷物を降ろして計量だ」
「はい…」
ハーランドとサンダースは、馬車からじゃがたらいもを降ろし計量した
「今日は幾らになってます?」
「今日の買取は… (1Kg)250だ」
「250か・・・ 前回とほぼ同じや」
「え~72.3(Kg) ・・・1万だな」
「1万!? ちょ、ちょっと待ってくれや… 1万って安す過ぎやろ…」
「ああ~ん! よく見ろよ、ほぼD(級※)じゃねぇか
本来なら半額のところ、これでもオマケしてやってんだぜ
嫌なら持って帰るか、自分で捌くしかねぇな」
※買取品目の等級があり、味よりも大きさで価格が異なる
A級品.通常より大きく、見栄えが良い物 通常品の2割増し
B級品.通常品 ここが基本の価格
C級品.通常品より小ぶりな物 通常品の2割減
D級品.規格外 C級品より更に小さかったり、見栄えの悪い物
基本価格の半額以下、または買取り不可
「兄貴、1万だとよ どうするよ…?」
「参った こんなん想定せんやろ・・・」
「どうしたの?」
「想定より大分安かったんや… 半額まではいかんけど、それくらい安いんや」
「買い物も全部は買えへん… どないしよ…」
「やっぱり問題が起こった これは私の想定内なんだから…
そんでさ、ここって何でも買い取るの?」
「あぁ ここは食べ物関連だったら買い取ってくれるで… そやけどなぁ…」
「ねぇおじさん コショーは幾ら?」
「コショーだって!? そんなもん… だははは!
10gで即金なら1万だ ここで競売なら、落札額の3割を貰うから7割だ
ジュリアに行って競売の代行なら4割貰う 売主は6割だな」
「ちょっと待ってて・・・ ジュリアって何よ?」
「ジュリアっちゅ~のは、泡沫国の王都や 王様も住んでるで
バザールのバザールみたいな所やな それぞれの国の特産品やらあるやろ
そこで仕入れた物を、このバザールで売ってるんや」
「はぁ~ なるほどね! そこは遠いの?」
「おいティセ… そんな事聞いてどないするんや… まさか行くんか?」
「代行で4割取られちゃうんだよ… 勿体ないじゃん」
「そうやけど… 15里(約60キロメートル)先やから、3時間くらいやな…」
「私たちは出品できないの?」
「できるで… 兄貴、どないする?」
「ええんちゃう やった事ないけどな… ティセがええなら
1万じゃ買い物でけへんのやで」
「コショーなんて高価な物… ホンマに売ってええんか?」
「別に良いよ じゃあ、いも売っちゃって」
「ティセに策があるんやろ… ほな売るか」
「おじさん、このいも1万で売るわ」
「毎度あり~♪ はい1万ね」
「そんで、この"コショー"売るの止めるね」
「!!! !? コショー!? 本当に持ってたの? お嬢さんが?」
「うん、ほら」
ちせは、一般的なスーパーやコンビニで買える"コショー"を取り出した
「そ、そ、そ、それ… 本当に"コショー"なのかい? 噓でしょ?」
「おじさんこそ、コショーって扱った事あんの?」
「そりゃあ、2度あるよ…」
「それなら、匂いとかで分かるでしょ 嗅いでみそ」
「クンクン… 確かにコショーだ 間違いない しかもキメが細かい
黒い外皮が殆ど入ってない こりゃあ高級品だ・・・ 量は?」
「中身だけで… 確か50g 入れ物も高価だよ(嘘)
だけど代行で4割はがめついんじゃない? だからや~めた!」
「ええぇ~… そんなぁ~…」
「私たちが直で出すからさぁ… ごめんね」
「分かった分かったお嬢さん… 手数料は5分(5%)で良いよ
直で出しても個人は3割手数料は取られるけど、セラーが出せば2割で済む
それでこっちの取り分は5分なら多少はお得だろ? 頼むよ…なぁ…」
「手数料は2割で、おじさんの方は1割の半分の5分だね?
それで間違いない?」
「そう、その通り 間違いない!」
「じゃあそれでやってよ」
「ひゃっほい! やったぜ! 今から競売したいのは山々なんだけどさ…
今日中に出品情報流すけど、近隣諸国からもお客さんに呼び掛けたい訳じゃんよ…
コショー目当てで来たお客さんが、バザールに金を落としていくって寸法なんだ
だから、ハルヨシ村で競売を開催したいから、アナウンスの時間くれよ~
明日の昼か夜開催だったらどっちがいい?」
「えぇ!? 明日… ねぇどうする? そうなると今日帰れないよ」
「そんな事はないけどな… 1時間で村に着くんやで 一旦帰れるやん…
泊まりたいなら、それでもええけどな」
「メンドイから泊まろうよ 売上の半分あげるから」
「ホンマかいな・・・」「正気か・・・」
「じゃあどっちか… 村に戻って長老に言わないと」
「それなら俺が報告に行こか(ハーランド)」
「ありがとう 大変だけどお願いね
明日こっちに来る時は、またこの馬車で来てよ」
「荷台は預けて馬で戻るから大丈夫やで サンダース、宿はどこにするんや?」
「そうやな… "ルイーゼの酒場"で」
「ルイーゼの酒場やな 分かった」
ハーランドはタカミ村に戻った
「おじさん、明日のお昼開催でお願い」
「あいよ! 預かり証を書くから待っててよ」
「ねぇおじさん、売主は私って事ナイショにしてくれない?
あんまり目立ちたくないからさぁ」
「それに関しては任せろよ 今回の売主はバザールにしておく
出所ってのは、俺らには関係ないんでね」
「ちなみになんだけど、"砂糖"ってのはハウマッチ?」
「だははは!砂糖だって? コショーより高いよ」
「この
サンダース、ちょいと市場調査しますか」
「おぉ、ええで」
ちせとサンダースは預かり証を受け取り、
仲卸からの買取価格をバザール(市場)で、販売価格などの市場調査を始めた
「仲卸の買い取りと商店に卸売 そんで商店の小売り、面白いね」
「そうか? オモロイかね…」
「やっぱり夏野菜が多いな… おっ! ちょっとアレ… 1個買って」
「これかいな おばちゃん、これ1個ちょうだいな」
「はいよ このままで良い?」
「ああ、ええよ」
「ちょっと食べるわ モグモグ(マズッ!!!)
おばさま… これはおばさまの所で育ててるのかしら?」
「そうだよ、美味しいだろ うちの自慢の品だよ
そこらへんの店には負けないよ!」
「(クソマジぃ)そうでござんすね おほほほ それじゃあごきげんよう…」
「(小声で)ねぇサンダース… これ食ってみ」
「食うの… モグモグ まぁ… こんなんやろどこも」
「嘘よ… 嘘って言って… こんな不味いの食ってんのかよ…
じゃあ… コレを1個」
「おじさん、1個くれや」
「はいよ」
「あ~んグックッ (スッペェ~ なんじゃこれ…)」
「甘くて美味しいだろ? うちのは飲食店でも使われてんだぜ」
「そうですね… おほほほ! イカン!バイトの時間だ 失礼します」
ちせは走って逃げた
「ティセ… 一体どうしたんや…」
「はぁはぁ… 何よ… 全部不味いじゃない! プンスカ!」
「そんなん言うたかて…」
「なにか美味しいの知らないの?」
「そうやなぁ~・・・ それやったら、アレはどないやろう」
ちょっと歩いて・・・
「これや ブルーラビットの串焼き これは美味いで
おじさん、2本ちょうだい」
「あいよ、ちょっと待っててね」
「あぁ… 長老が美味いって言ってたよ これかぁ…」
しばらくして出来上がった
「頂きま~す モグモグ… モグモグ… ふ~ん… そうね」
「どうや? 美味いやろ?」
「ちょっとあっちで…」
2人は場所を変えた
「そうね… お肉は美味しいと思うけど、味付けが薄いし… パンチが無い」
「えらい厳しいな…」
「塩コショウだけでも良いし、もっとスパイシーでも大丈夫
レモンをかけても美味しいかも知んない」
「料理の事は分からん…」
「レモンと言えば… やっぱレモネン売ってないね」
「そりゃあそうやろ… 売れんのやから」
「売れないから売ってない…
ねぇサンダース レモネンって、ハルヨシ村の近くでも採れるのかしら?」
「レモネン… あぁ採れるで でもハルヨシ村から少し北に行ったその先から、
王都近くまで森が途切れるからそこら辺は無いで
あれだけ自生してるんやから、王都のそばにもあるとは思うけどな?」
「あのさぁ、"独占契約"ってできないかな」
「"独占契約"… なんやそれ?」
「私たち以外… タカミ村の住人以外は、レモネンを採ってはいけないって契約
領主様にお金を払って、独り占めするってワケよ」
「どうやろなぁ… でも… 本来貰えない金が入って来る訳やから…
できるんとちゃうか?」
「それなら… 本当は1万でも良いんだけど、最初は毎月5000払うって
それで契約できれば上出来よ」
「5000でも多いけどな・・・」
「じゃあ2000にしとく?」
「いや・・・ 5000でええ…」
「任せるよ」
「そうか・・・」
「だけどもし契約出来たら、取り締まってもらわないとダメだからね
勝手に採ったら捕まえてもらわないと
つまり… バザールで扱えるのは、私たちだけって事
仲卸経由で他に出回ってたら、バザールのオヤジも捕まるって寸法
勿論個人の販売もダメ 市場に出回るのは、独占契約してる物だけよ」
「結構な
「黒幕は隠れてるから、サンダース頼んだよ」
「はぁ… 分かった 近い内に話持ってく」
「ちーと内密な話が続くんで、お宿を取ってよ」
「そうやな… そんじゃあ行こか」
ちせとサンダースは、宿泊するルイーゼの酒場へ向かった
「こんちわー 2部屋お願いします」
「は~い どうぞ お2階へ
・・・こことこちらの2部屋です どうぞ」
「おおきに」
「お夜食はお付けしますか?」
「はい、付けて下さい」
「2部屋とお食事で3000ヨーになります」
「はい、3000…」
「毎度どうも!」
「まぁ、そこそこね 悪くはない」
「せやろ そんでどんな計画やるん?」
「レモネンみたいに、物が有り余ってるのに価値が無い そこが狙い目なの
後から入って来ても、遅いよって事なのよ」
「そりゃあ理屈は分かるけどな… その無い価値を、どうやって上げるんや?」
「レモネンって酸っぱいでしょ? その酸っぱさってのが、実は料理によく合うの
その酸っぱさを少し抑えてあげれば、飲み物にもなるの
もちろん酸っぱいのが好きな人もいるからね その辺はお好みで
次に、レモネンが虫よけになるって事 この温暖な気候じゃない
虫が多くて嫌でしょ それを多少なりとも防ぐ事ができる それに健康に良い
レモネンって良い事ずくめなのに、庶民はまだ知らないだけなの」
「僕の頭じゃ分からん話や…」
「今は畑がダメだから、自力で儲けるしかないでしょ?
商売が上手くいけば、欲しい物が買えるんだから どう? 最高じゃない」
「さっきも言ったけどな、理屈は分かる 問題は結果や 夢は幾らでも語れるんやで
僕を含めて村人の今後に関わる事なんやで・・・」
「領主様は、ここ(村)に居るんでしょ?」
「そやな、ここに居るはずや」
「明日… 売り上げが入るでしょ あのオヤジの言い方だけどね…
"即金なら10gで1万"って言ったの 覚えてる?」
「あぁ、覚えてるで」
「あれは50gある だから最低で5万は確定 あの入れ物で1万確定
つー事は、私の見立てで最低落札価格は6万は堅い 間違い無く
各国に声をかけるって言ったでしょ それで更にアップ
恐らく8万はいくんじゃないかな?」
「そないいったらええけどなぁ~」
「まだ早い時間だからさ 今持ってる5000で、領主様に話してきなよ」
「ホンマか… 村の買い物できへんよ…」
「大丈夫だって もしもの時はまだ隠し玉はあるから」
「"かくしだま"ってなんやねん…
まぁ言いたい事は分かった ほんなら行って来るで」
「ちゃんと"取り締まり"の事、言わないとダメだからね
あと"お金は要らない"って言われても、ちゃんと払ってよ
そこが大事なんだから バザールの件もね」
「分かってるって ほな」
サンダースは、領主ノアの元に向かった
約1時間半後・・・ サンダースは戻ってきた
「ただいま~ ノア様と話すと、流石に緊張するわ・・・」
「結構掛かったけど、どうだった?」
「それがな… 時間は掛かったけど、案外すんなり了解が出たんよ
問題は"処罰"の話なんやけどな…」
「どんなふうに?」
「レモネンは森にある訳やん 言わば自然の物やな
自然に生えてる物を採って処罰される、それってどうなん?って話や
そこで毎月5000支払うってのが、効いてくるんやけどな
ティセが言ってたように、ノア様は最初"金は要らん"って言うたんよ
要らんけど"好きにしたらええ"ってな
そんで説明したがな… "独占契約"って話で、その為のお金やからって…
そしたら配下の方何人かが味方になってくれてな
"お金を支払う訳だから、支払った者は優遇されるべき"って言ってくれたんや
考えてみりゃそうやん、ノア様には毎月黙ってても5000入る訳やろ
それなら貰った方がええやろ 多少仕事は増えるかも知れんけど…」
「どっちも分かるよ だけど独占じゃないと、すぐにマネされるからね
やっぱ1万の方が、インパクトあったかもね…」
「せやから、"1万にしましょうか"って言うたんよ そしたら…
"やはり自然の物やから"って事で、僕らと同条件(毎月5000)なら、
販売するのは認めるっちゅう事で落ち着いたんやけどな あかんかったか?」
「いや… それで良いよ ちゃんとした領主様じゃない」
「せやな… 公平な御方や」
「それで罪はどんな感じ?」
「物が物だけに、そない重い罪にはならへんよ 個人は、販売した額の倍の罰金
バザール内の仲卸は、指定契約者からのみ買い取りができる
指定契約者以外から買い取る行為、または交換など全て禁止
違反した場合、売買額の3倍の罰金と営業停止3日
同違反3回で、仲卸の資格取り消し そんなとこや」
「上出来! それで良いよ いつから?」
「公布は今日中にする言うてた 施行は来月からや
せやから支払った5000は、来月の分になるな」
「でもね… これを公布するって事は、鋭い奴らは間違い無く乗ってくるよ…」
「乗って来ても、マネでけへんのやろ?」
「そうだね マネできないから関係無いんけどね ゲラゲラ!」
「関係無いんかい… そんで、今後、、、っちゅうか、来月からどうするん?」
「タカミ村の大人は、何人いるのよ?」
「子供を除いたら… 3じゅう…人ちょいやな、多分…」
「できれば、ハルヨシ村に定住する人が必要なんだよねぇ~
それか、毎日往復2時間掛けて通うかだね」
「まぁそれは、まとまった話を村に持って帰ってからこっちで決めるで」
「そう? それならこの話は一旦置いとこう」
「僕らは従うだけやから、具体的な役割を教えてくれへんと…」
「じゃあ、簡単に説明するよ…
1.レモネンの採取
2.虫よけの販売
3.飲食店(屋台)
4.レモネンの加工食品の生産と販売
5.レモネンの販売
この5つね 5は直ぐにやるワケじゃないの
2~4で庶民の需要が高まった後に、いよいよ販売するって段取り
3の飲食店だけど、当然レモネンを使う料理や飲み物を出すお店ね」
「なるほどな… こんな短時間で、よくもここまで考えられるな…
流石の賢者様やな…」
「まぁ待ちなさいよ、サンダースとやら… 感心するのは、成功してからやで
我々が経済を回していこうじゃないか・・・」
「黒く禍々しいオーラが見えるような… 恐ろしい… 禿げそうやで…」
色々と構想を語りながら・・・ 夕方
「ねぇサンダース もうすぐ(午後)6時半でしょ
もう一回バザール見に行こうよ
他の食べ物もまだまだあるだろうし、それ以外の商品も色々あるんでしょ?」
「そやな、色々あるで ほないこか」
ちせとサンダースは、再びバザールへと向かった
「・・・・・・さっきの説明だけどハーランドにも伝えてよ」
「あぁ、しっかりと伝えるで 任せとき」
再度到着 バザール食品エリア
「さっきより、人通りが多いね」
「もうすぐ夜食やからな 売り切りたい物も安くなってたりするんやで」
「ほほぅ…(アメ横の魚屋的な、全部売り切るスタイルね)
それはそれは 消費者に優しいシステムだこと」
「ほら、アレみてみぃ… ウェイキーバードがごっつ安うなっとるで
でも気ぃ付けなアカンで… 腐りかけや既に腐ってる物も中にはあるからな…
生モノは危ないからな… 生モノでなければ、売り切りはお買い得やな」
「そうね… 安さだけに釣られないで、気を付けないとね…
おっ! スパイスなのに安い…(多分:コショーとの比較)
ん!?ローズマリーじゃん こっちはシナモンとナツメグ
へぇ~ あるねぇ~ 値段はちょい高い? けど良いよ」
「ここら辺の料理は、肉を焼くかスープの2択なんや それにパンが付く
ほとんどの料理にスパイス(ハーブ)が入ってる 肉の臭い消しの為やな
コショーは別格やけど、それ以外なら結構安価で取り引きされてるで」
「そうなんだ~(4大スパイスはどないなっとんねん…)
ギャ~… クローブ(和名:チョウジ) 安っ!!!
そんじゃあ庶民の家にも、スパイスって結構使われてるんだね」
「いや… 説明が足りひんかったな・・・
スパイスを使うのは、宿屋や酒場の料理でな
庶民は金を出してまで買わへんよ
肉なら味付けは塩のみ スープなら多少入れるかも知れへんけどな
基本は、塩に野菜と肉の旨味やな」
「そっか… だからさっき食べた"ブルーラビットの串焼き"も味が薄かったのね…
塩のみねぇ… 味が濃かったら、もっと美味しいのに… 勿体ない」
「味に拘るのは、一部の金持ちやろ 庶民は喰えればそれでええのやから」
「食の楽しみが余りないのね 寂しいじゃない…」
「何事も"先立つ物"があっての話やからな しゃーない…」
「ところで、この"クローブ(チョウジ)"買ってよ」
「えっ!?買うん! 300gで1500… じゃがたらいも6Kg分やで…」
「ほら、早く!」
「分かった… おじさん、コレちょうだい」
「あいよ!」
「いよいよ金が尽きる… どないしよ… もう、村には帰れへん・・・」
「心配召されるな 私に任せなさい 今度はあっちに行ってみよう」
「あっ! そっちは・・・」
「良いじゃない 折角来たんだから」
「いや… アカンと思うで…」
「おっ! 檻がある 動物も売ってるのね」
「動物… 確かに動物やけどなぁ…」
「何売ってんの? 鳥とか豚とかの家畜?」
檻に近づいて行くちせとサンダース
「にゃんこかな? にゃ~」
「お嬢様… 私を買って下さいませ… 」
「ひ、人!? そんな・・・」
次回 第4話 『奴隷商:エドワード』
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