第29話 ジェシカとシャロリア
私、エリム
フロンティア学園の生徒だ。
「おはよう」
今日も教室に入る。
すると
「何よ!私の方が合ってるわよ!」
「いいえ。私の方が正しいです」
同級生のジェシカとシャロリアが喧嘩していた。
この2人は仲が悪いと学園でもよく聞く話だ。
「うわまた…」
喧嘩しているところはよく見るので珍しくもないが、相変わらずなので頭を抱えそうになった。
ジェシカもシャロリアも私の大事な友達なので正直、喧嘩はしないでほしい。
「あの…おはよう…」
タイミングが悪いかもしれないが、一応挨拶はする。
「おはよう。エリム、聞いてよ!シャロリアが!」
「おはようございます。エリム、聞いてください。ジェシカがですね」
2人が私の方を見てくる。
今、話しかけるべきではなかったかもしれない。
「まぁまぁ2人とも落ち着いて…仲良くしよ?仲良く」
2人とも感情的になってしまっているので一旦落ち着いてほしくて止めようとする。
が。
「何よ!私は大丈夫よ!」
「えぇ…私は至って普通です」
逆効果だった。
「にしてもエリムはシャロリアには似合わないお友達なんじゃな〜い?」
「そうですか?ジェシカこそ。エリムに近付きすぎじゃないですか?」
今度は私のことで喧嘩し始めた。
「お願いだから2人とも喧嘩は…」
「エリム、分かって。これはエリムの為なのよ」
「はい。私はエリムの為に喧嘩するのです」
私の為とは?
というかシャロリアは喧嘩って認めちゃってるよ。
「もうちょっとさ…平和的に解決できない?」
言い争ってもキリがないので平和的な解決策がないかどうかを2人に聞いてみる。
「平和的…それならこれね」
「そうですね」
ジェシカとシャロリアは杖を出した。
間違いない。
魔法を使って戦って決着をつけるつもりだ。
「いやいや待ってよ!?」
ここで戦ってしまえば下手すればどちらかが大怪我してしまうのでそれは絶対良くない。
「何よ?平和的に終わるわよ。私が一瞬で…」
「それが良くないんだって!」
私は慌てて杖を持つ2人の前に出た。
「何よ?じゃあどういうのならいいのよ?」
ジェシカは聞いてきた。
何が良いだろうか?平和的に解決するのは?
そこで私は思いついた。
「お料理…どうかな?」
料理対決ならお互い、大怪我せずに済むかもしれないと思い、提案してみた。
「それなら...ありね」
「えぇ。エリムに賛成です」
2人は賛成してくれた。
そして。
「作るわよ!」
「はい」
授業を終えた後、私たち3人はシャロリアの家のキッチンに来た。
「何作るの?」
私はジェシカとシャロリアが一体何を作るのかが気になり、聞いてみた。
「ケーキよ」
「私もです。最後にエリムが食べてみてどちらが美味しかったかを決めてください」
どうやら2人はケーキを作り、どちらが美味しかったかを私が決めて判断させる対決にするらしい。
つまり、私の一言で全てが決まる訳なので慎重に食べよう。
「いくわよ!」
「えぇ」
ジェシカもシャロリアも作り始めた。
そして
「できたわ!」
「できました」
お互い、作っていたケーキが完成した。
「私のケーキはエリムが好きそうな材料を選んで作り、愛情を込めたジェシカケーキよ!」
ジェシカのケーキ、材料にこだわりを持って選んで作ったからか、とても美味しそうだ。
しかも愛情が見るからに伝わってくる。
「私のケーキは高級食材を使いに使った極上のケーキになっています。愛情を込めて作りました」
「おぉ...」
シャロリアのケーキは見るからに高級感が溢れ出ている。
そして愛情が伝わってくる。
「さぁ!召し上がれ!」
「エリム、召し上がれ」
2人は私の前にケーキを出してきた。
「それじゃあ...食べるよ!」
最初にジェシカが作ってくれたケーキを食べてみる。
「ジェシカの美味しいね!」
かなり材料を選んで作ったのが食べてみてよく分かる。
「ありがとう!作った甲斐があったわ」
ジェシカは喜んでいる。
褒めたのもあるからか、とても可愛い反応を見せてくれる。
「では次は私のを」
次はシャロリアが作ってくれたケーキを食べてみる。
「こ、これは!」
この味は凄い。
高級感が舌に伝わって来るぐらい、美味しい。
まさにお姫様が作ったケーキといった感じだ。
「美味しいよこれ!」
「ありがとうございます」
シャロリアは喜ぶ。
「さぁ...エリム、どっちのケーキが好きか決めて」
「エリム、お願いします」
「...」
困った。
どっちの味も好きだ。
私にはどちらかを選ぶのはかなり難しい。
2人は真剣な眼差しで私を見てくる。
「私は...」
選ばなければいけない。
どちらかを。
「私は!」
決まった。
「どっちの味も...好き」
「え?」
「はい?」
2人は困惑している。
しかし、両方とも美味しかったし、2人とも私に向けて愛情を込めて作ってくれてそれが食べて伝わってきたので、どちらかだなんて私には選ぶのが困難だった。
なので、この選択をした。
「まぁ...エリムらしいわね」
「そうですね。そういったところがあるから私たちはエリムに惹かれたのかもしれませんね...」
「引き分けよ」
「はい」
2人とも納得はしてくれたみたいだ。
料理対決は引き分けで終わった。
「シャロリア、喧嘩したりして悪かったわね。これからは仲良くエリムと仲良くしましょう」
「そうですね。ジェシカ、2人で仲良くエリムと仲良くすればきっと楽しいと思います」
しかも仲直りしてくれたみたいだ。
「じゃあ私は...」
話は終わったみたいなので私は帰ろうとした。
ここで。
「あら?エリム、まだ帰るんじゃないわよ?」
「そうですよ?」
「え?」
私は帰ろうとしたら2人に止められた。
「はい。あーん」
「エリム、あーん。してください」
2人はケーキを私の口元に運んできた。
「2人ったら〜」
私はジェシカとシャロリア、2人から愛されて幸せだ。
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