臆病者同士の恋って分かったのがついさっき
片思いも長い間続くと拗れてしまう。
なんで好きになったの?とか周りの友達に言われても何も答えられないのは不思議。
好きになったばかりの時はちゃんと答えられたのに全く今はどうしてなのかなぁ?と曖昧な回答をするようになった。
好きな人との出会いは高校で私が高校1年生彼が3年生の時に出会った。
委員会でたまたま一緒で助けて貰って一目惚れというなんともロマンチック…とは思わないがつまらない出会いだ。
「拗れてるねぇ」
「私が一番理解してる」
友達が呆れたように私を見ているが、いつも通りで何も思わない。
「先輩を好きになって何年?」
「…私が今高校3年生だから、2年」
「でも大学一緒だから会えるでしょ」
「…彼女いるでしょ」
1度だけ勇気を振り絞って告白をした。
その時は「ごめん、そういうのはまだ考えてない」で終わった。
それでも好きでいるのは良くないよなって理解していても片思いをしている。
「先輩に聞けばいいのに」
「聞けたら苦労しないって」
近所のファストフード店でバイトをしている先輩にあった時は驚いた。
たまに行くとサービスしてくれるし、毎回仕事終わるまで待っててって言ってくれて送ってくれる。
「はぁ…好きだけどうん…」
「悩むくらいなら諦めなよ」
「お前は勇気を出して告白して成功してるから言えんの」
「実行してないそっちが良くない」
正論とは心の傷を思いっきりえぐるものである。
「心が痛てぇよぉ…」
「馬鹿なこと言ってないで真面目にやりな?」
「明日も学校来るからサボっても…?」
「明日までしかこないんだからお前の貯めに貯めた置き勉たちを今日中に何とかすんぞ」
「そんなぁ〜」
私が悪いのは分かってはいるので渋々片付けをする。
わざわざ監視のために来てくれているのだからやらないと友達が可哀想…てか殺される。
「肩が…外れる…」
「計画的に持っていかないからそうなる」
「寄付しようと思って…」
「去年の教科書なんて誰が使うの?」
また正論である。
やめて!私の心はボロボロです!
「これさえ終われば明日学校来なくて済むんだから」
「いや明日も行く」
「あ、帰り道だっけ?あんたの大好きな先輩のバイト先」
そうなんだけどはっきり言われるとちょっと恥ずかしい。
「大学一緒だからいつでも会えるもんねー?」
「学部違うし会う機会減るって」
「じゃあ今のうちに会っておきなよ」
「もう私大学生になるんだからずっと恋してる訳にはいかないって」
「何をしたら大人になれんのかね」
私はその言葉にどう返せば良いのか分からなくて合間に返答した。
人の手を借りるのは本当に効率が良い。
大人になってもちゃんと頼ろうなんて思いながら帰路についた。
子供っぽい私と先輩じゃあ釣り合わないよねって思ったら今日は先輩に会いに行くことは無かった。
今日来なくても…ずっと来なくても先輩は何と思わないだろうし大丈夫。
でもちょっとは気にかけてくれたっていいじゃんとか思って悲しくなった。
時間はあっという間に過ぎて卒業式の日になってしまった。
私は先輩に会いに行くことがなくなり、登校日は家と学校の往復になっていた。
クラスメイトと談笑してお別れをして最後の下校をしている。
もうこの道を歩くことがないと考えるとなんだか不思議と寂しさを感じる。
卒業式効果なのかな?
「ぐえっ」
突然首根っこを掴まれて私の寂しさが誰かによって苦しさに変わってしまった。
首根っこはやめてください苦しいので。
「連絡無視するとはいい度胸だな」
好きな人の声なのだから私はギョッとして後ろを向いた。
そこには見た事のないくらい不機嫌そうな顔をした先輩の姿があった。
「先輩?どうしたんですか?」
「俺メッセージ送ったよね?」
「そうなんですか?」
私は慌ててスマホを見る。
昨日の夜から今の今までバタバタしててスマホを見る余裕がなかったから気づきもしなかった。
「す、すみません…スマホ見る時間なくて」
「今日は暇なの?」
「このまま家に帰って、寝ますけど…」
「じゃあ暇だな」
それを聞いて機嫌の良くなる先輩が分からないが着いていくことにした。
「ご飯でも奢ってくれるんですか?」
「ん?まぁいいけど」
「どこに行くつもりなんですか?」
お昼頃だしカフェとかの軽食なら食べたいかもと思いつつ先輩がこんな行動するとは思わなくて戸惑っていた。
行先はちょっとオシャレなカフェだった。
喧嘩しながらも仕事してるカップルがいるというちょっと有名なお店。
「てっきり職場だと割引あるからとか言ってそこ行くのかと思ってました」
「俺がどケチに見えるか…?」
「いえそうではなくて、ただの後輩にそこまでするのはもったいないような気がするので」
私が淡々と言うと、彼はなんとも言えない顔をしてメニュー表を私に差し出した。
「好きなの頼めよ」
「ありがとうございます、じゃあコーヒーで」
「…それだけ?」
「はい」
「ケーキとか食べてもいいのに」
「人の金でケーキ食べるのは…」
「奢るの承諾して連れてきてもこれかよ…?」
そう言われてもそういうことは初めてでどうしたらいいのか分からないのだ。
「こういう時はどうするのが正解なんでしょうか…?」
「素直に食べたいのを言えばいいと思うけど」
「素直に…」
素直になれるならとっくの昔にそうしている。
最初の頃の純粋な好きという気持ちは薄れている訳では無いが時間が経つにつれて、現実を見なくてはいけないと感じてしまうようになった。
「言っても怒りませんか?」
「怒らないって、ほら言ってみ?」
私は、蚊の鳴くような声で言った。
「チーズケーキ…」
「後は?」
「ティラミス…食べたいけどいっぱいだから半分こしたい…です」
「ん、よくできたな」
私の小さな声でもしっかりと聞いて、頭を撫でてくれた。
その優しさにふわふわした気持ちになる。
店員さんに注文したあと話すことがなくて気まずくはないけど静かになる。
「…次に行く時はさ初めから遠慮しないで言えよ」
「え?次があるんですか?」
私は反射的にそう返した。
「そんな悲しいこと言うか普通?!」
「あ、その…ごめんなさい…?」
嬉しくて表情が緩んでしまっている。
それを見られたくなくて私は俯いて見えないようにした。
「俺…ええ…そんな風に思われてたの…??」
「学部違うから会うことないし、先輩が私と会う理由がないじゃないですか?」
「会えばいいだろう?!」
「理由もないのに会ってくれるんですか?」
「好きなんだからそりゃあ…あれ?これ言っていいやつ?」
先輩は自分の言った言葉で何故か顔を赤くしている。
すき…??
先輩が?私を?
「それ、は…どうしたらいいんですか?」
だってそんな顔赤くして言ったらlikeじゃない方のすきなんじゃないかって思ってしまう。
「返事くれると…嬉しい…けど、こんな形で言うつもりなかったからやり直したいっていうのはちょっとある…」
気まづくなったのかどんどん声が小さくなる彼を見て私は吹き出した。
「ひ、人が真面目に考えてるのに笑うやつがいるか?!」
「いや、弱々しい先輩を見てたら面白くなってきて…ば、バカにしてるって訳じゃなくて先輩も私と一緒で怖がってたんだなぁって」
なんだ聞けるじゃん。
「先輩、今彼女っていますか?」
私はこの心に蓋をしたかった 赤猫 @akaneko3779
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