ひそひそ話〈ゴーストトーク〉は教室の隅で

春(はる)

プロローグ

あの日、

 あの日、私の平穏無事な日々は様変わりしてしまった。

 それまでの常識は覆り、穏やかな時間はいとも簡単に破られた。


「だって私達のことが見える人間なんて、初めて会ったんだもん」

「びっくりしたよね。個性的なファッションしてるし」

「それは関係なくない? まあ意志強そうな感じとか、頼もしくて良いよね」


 知らぬ存ぜぬで通用するはずだった。

 実際、ほとんどの人がそうであるのだから。

 知ってしまいたくなかった。見えません。聞こえません。ハイ終わり。これで良いはずだった。ただでさえ周囲に変人扱いされているというのに、頭までおかしいと思われてしまったら終わりだ。


「こっちからしたらバレバレだったわ。目の泳ぎ方とか相当だったじゃない」

「いるよね、いかにも噓ついてる時の顔になっちゃう人。私、そういうの我慢できないんだよね笑っちゃってさ」

「ほぼゼロ距離で睨んでたのが効いてた気がするけどね。顔と顔ちょっと重なってたよ。あれなんて言ったっけ、ベン図?みたいに」


 自ら選んだことなのであれば、まだよかった。

 でも、この状況はそうではない。突如として襲い掛かってきた不測の事態であり、拒否できるならありがたく拒否させていただきたい、はた迷惑な状況だ。


「こっちだって望んでこうなったんじゃないもの。だからアンタにどうにかしてもらおうと思ってるんじゃない」

「正直、疑いようのない地縛霊だもんね。もうちょい可愛らしい感じだったら良かったんだけどなあ」

「自分達で言いたくないよね。一応、精神的には安定してるからセーフかなと思ってるけど」


 突然の変化にすぐに順応できる人はそういないだろう。

 私もそうだ。でも、ただ変化しただけじゃない。有り得ない事が起きているのだ。

 合成だ、AI生成だ、画面越しならばそれで片付けられた事が、目の前で事実として突き付けられてしまった。


「扉開け閉めする必要ないから便利っちゃ便利だけどね」

「誰にも聞かれないからカラオケし放題だしね。そういうところは割と楽しいじゃん」

「アカペラだけどね。あと私達には聞こえてるしうるさいよ」


 ……本当にうるさい。

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