49.眠れない夜の話

 眠れない夜。

 結局最低なことばかり考える。

 限界なんだろうな。

 あとひとつなんかあったら、もう耐えられないだろうなって自分でわかる。

 もう次は手術したくない。

 もう何かがわかったら殺して欲しい。

 そう思う。


 永い夜が明けると、雨になった。

 本当に、世界が私を祝福しているとしか思えない。

 目を閉じると、どこかの緊急アラームのような音が、壁の配管を伝ってぼんやり鳴り響いてきた。

 ここは本当にいろんな音がする。

 酸素を作る音、乾燥しすぎな空調の音、誰かの寝息、機械の起動音、遠くのエラー音、ぴこんぴこんぴこんぴこん、足音、カートを引きずる音、カーテンを引く音、サイレンの音、何かの保留音なのか私の幻聴なのかも定かではないが時折保留音みたいなメンデルスゾーンの花も聞こえてくる。

 こんなのはすべて私の日常ではなくてちゃんと元の生活に戻るんだってなんとか踏ん張って来たけど、最後の最後に折れてしまいそう。


 誰かが出て行き見守るのも、多分あと2回。

 今日は何も考えたくない。

 せめて今夜は、眠れますように。


(続)

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