47.私って薬アレルギーあったんですか!?

 頭痛に慣れてきました。

 こんなことにも慣れてしまうのだから、人間って本当に強いんだなと思います。

 お腹がさばかれている状態なので、正直上体を起こすのも手すり頼みの激痛だったのですが、そこに頭痛もトッピングされて普通に痛くなく生きるのって本当に奇跡みたいなことだったんだなを毎日噛み締めています。


 朝イチで、左手首の管が抜けました。

 点滴用のシリコンの管がずっと左手に固定されていたのですが、そろそろ定期点滴もなくなるので取りましょうとなりました。

 本当にもう祝祭。地味にずっとテープで固定されてるの辛かった。

 腸管はまだ通ってないけど、ビバ管外し。自由って最高です。

 歩行訓練中止になって、本来なら入れるはずのシャワーも禁止。

 もう六日目の体です。髪縛れてるからギリ耐えてるけどこれも地味にきつい。

 けど、管が外れた今、もうシャワーも目前です。

 あとは頭痛、頭痛さえなんとかなれば! うぉぉぉ!


 頭痛はとにかく、安静にすることでしか回復の方法がありません。

 今日もなるべく静かに、ぼんやりと、ちょっと色々考えちゃう時もあるかもしれないけど、おだやかに、ゆっくりと過ごすことにしま。


「初心者さん!!!!!????? 薬飲まないで下さい!!!!!!」


 私の病室ではあまり聞くことのなかった、全力ダッシュと引き裂くようなカーテンレールの音のあと、看護師さんが文字通りベッドに飛び込んで来ました。

 なになになに。ステイステイステイ。落ち着いて落ち着いて。腸管はまだ通ってませんごめんなさいごめんなさい。あわわ。


 この時私は、いくつかの薬を同時に服用していました。

 まず腸管を出すためのマグミット(腸の中身に水分を増やす薬)、漢方、鉄剤、頭痛を止めるためのロキソニン、頭痛の痛みが出て来ちゃった時に次のロキソニンが入れられるようになるまでの時間調整のカロナール。

 中でもマグミットと鉄剤の相性があんまりいいものではないらしいので飲む時間の調整が必要なのと、ロキソニンの時間調整が厳密なため、薬のほとんどを看護師さんに管理していただいていました。(ありがとうございます本当にお手数をおかけしました)

 けれど、入院生活も後半。慣れて来たので今日から薬を自分で管理しましょうかということで、朝カロナールをごそっと袋で手渡されていたところでした。

「カロナール回収します!」

 どどどどどういうこと?????


 カロナールって、市販薬でもよく見る風邪薬ですよね。

 あんまり個人的に飲んだことはないけど、ロキソニンより時間管理がゆるいので、頭痛をおさえる薬として昨日からレギュラーメンバー入りした子でした。

 そんなカロナールくんが回収され、なんだろうと思っているところにお医者様と別の看護師さんが駆け込んで来ました。

 あー、既視感。これあれだ。髄液の説明された時と同じ空気感だ。

 俺、何かやっちゃいましたかね?


 初めて見る男の先生は、コピー用紙を一枚テーブルの上に置き、なるべくゆっくりを心がけているのだろうなという緊迫した声で説明してくれました。

「初心者さんの肝臓の数値が、十倍に跳ね上がってます」

 あちゃー。


 用紙には、私の血液検査の結果が数値で並んでるようでした。

 腕には二十四時間何かしらが刺さっていたし、血液もそれなりの回数抜かれていたのでかなり慎重に管理していただいていたとは思うのですが。

 昨日までのワタシの肝臓のとある数値7が、今日は80になっていると記載されています。

 ちなみに基準値の上限は11とかです。いや80て。おもろ。なになに。私しぬ?


 どうやら私、薬にアレルギーみたいなものがあったみたいです。

 異様に肝数値に影響受けやすいらしい。

 自宅でカロナール使ったことなかったし、使ってても正直全然なんにも反応がないので気づかなかったっぽいよね。

 いやー、血液検査中にカロナール飲んでてよかった!!!!!!!!!


 これから点滴(つっこんで放置するやつじゃなくて、注射の超でかい版)をぶち込んでいきます。これで数値が下がらなかったら、薬以外の原因を突き止めなければなりません。

 それは、つまり。

「最悪の場合、入院延長になる可能性があります」

 あちゃー。


 お医者様から謝罪をされましたが、薬にアレルギーないって思ってたし、こんなのわかんないですよね。

 それにしても私、入院してからやたら頭を下げられる場面が多いなぁ。

 逆に今回わかって良かったです。今後の薬との向き合い方も変わってくるしね。

 なんとか点滴で肝数値を下げて、無事に退院したい!

 というわけで、午前中取れて歓喜していた点滴用の管は無事左手にカムバックと相成りました。

 おかえり。一緒に暮らそうな、チュッ。


(続)

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