第43話 夜伽の灯火

 アバロタイトの膨大なエネルギーを使い閃光を打放とうとしていた白虎を、すんでのところで阻止したチェンと青龍。

 しかし臨界に達したアバロタイトのエネルギーが暴走し、大爆発を起こす。


 かつては荘厳でタオの都の象徴でもあった白亜の宮殿はすっかり荒れ地となり、天まで届きそうな白亜の塔はガレキの山になってしまった。


 もはや原形をとどめていない白虎の残骸の上で、僅かに光り輝くアバロタイト。

 その輝きを、虚ろな顔でチェンが見つめていた。

 隣には、毛づくろいならぬ鱗づくろいをする青龍。アバロタイトの変質もすっかり収まり、もとの姿に戻ったようだ。

 白龍の姿は無く、おそらく手に持っていた龍玉と自らの命を引き換えに、大爆発からチェンと青龍を守ったのだろう。

 龍玉の破片なのか、白龍の残存粒子なのか、チェンと青龍は輝く霧に包まれていた。


 「お〜〜〜い」


 ロンの呼ぶ声。

 バサラの船が白亜の宮殿跡地に横付けされ、ロンとハナが降りてきた。

 コルルも青龍を見るやいなやバサラの船から飛び降りると、青龍の周りをグルグル回り心配そうに匂いをクンクン嗅ぎ回った。そんなコルルが面倒くさいのか、青龍は相手にせず鱗づくろいを続けている。


 「チェン、無事で良かった! あの爆発で死んじゃったかと思った〜〜〜」


 涙を流しながら駆け寄ってきたハナが、チェンに抱きつく。


 「うぅ〜。ハナ、苦しい〜〜〜」


 「ハナから、だいたい話は聞いたぜ。大変だったんだな」


 「ああ………。でも、全部終わった。オマエ達から奪ったタイトの宝石、返すよ。ゴメン」


 「ああ」


 白虎の残骸の上で輝くアバロタイトを、見つめるロン。


 巨大な建造物を消し飛ばすほどの大爆発、巻き込まれたはずのチェンと青龍には傷一つ無い。当然のように抱く疑問を、ハナがたずねた。


 「あの大爆発は、バサラ様が乗る機械をチェンが倒したからなの? だとしたら、何故無事でいれたの!? バサラ様と白龍様は………」


 首を横に振るチェン。


 「あの凶暴な機械の動力は、私達から奪ったタイトの宝石だったんだ。それを引っこ抜いて機械を破壊したら、タイト宝石のエネルギーに誘爆して………。白龍様が、私と青龍を包み込んでくれたんだ。きっと全ての力を振り絞って、助けてくれたんだと思う」


 「そう………。じゃあ、バサラ様は………」


 静かにうなずくチェン。


 「バサラ様………? あのデカいネコ型ロボットに乗り込んで、街を襲った奴か………?」


 ハナとチェンが、強く抱き合った。


 「ん………?」


 何も事情を知らないロンは、抱き合う二人を静観しながらガレキに座り込んだ。


 『グラグラグラ』


 「うわわ〜〜〜!?」


 座り込んだガレキが動き出し、ロンは驚いて飛び跳ねた。

 モゾモゾ動くガレキを、恐る恐るどかしていくロン。


 『ガバッ ガシッ』


 「うわ〜〜〜っ、死体が動いた〜!?」


 ガレキの中から手が飛び出してきて、ロンの手をつかんだ。

 仰天するロン。

 ガレキの中に埋もれていたのは、ルカンだった。


 「誰が死体じゃ〜! いやしかし、死ぬかと思ったわい。青年よ、恩にきる」


 「ルカン様、ご無事で! このお方は、ルカン様。この国の、副将軍だ。皆、粗相の無いように」


 「おお〜〜〜、チェンよ。いつかこうなるとは思っておったが、バサラが持ち込んだ兵器でタオの都がこの有り様。まさかこれほどとは………。ゲンブ殿は!?」


 バサラの船の上で横たわるゲンブの遺体に、目線を送るチェン。そして瞳を閉じ、首を横に振った。

 ルカンは、全てを悟り落胆した。



 ゲンブの遺体は、ガレキの上に寝かされた。

 白亜の宮殿の残骸を集め、ゲンブの火葬が行われる。

 ルカンが祈りをあげ、その隣でチェンが目をつぶり手を合わせている。

 その炎は、冷たく殺風景な白亜の宮殿跡地をやさしく照らしていた。

 揺らめく炎に照らされたチェンの頬には、僅かに涙が輝いている。


 火葬が終わり、燻る火を見つめるチェン。

 父親と別れを惜しむチェンの後ろ姿を眺めながら、ロン達は焚き火の火をおこしていた。


 「俺達の船に飛び込んで来た時は、とんでもないオテンバ娘かと思ったけど、あの小さな背中………、まだ幼いのかな………?」


 「あの子は厳しい父親に育てられ、龍騎士としては一人前だ。西方の調査活動まで、一人でこなすほどじゃ。しかし、中身は年端もいかぬ女の子。家柄や父親の死、東の国の運命を背負うには、ちと………酷かのう………。はぁ〜〜〜」


 廃材を焚き火に焚べるルカンが、ため息を上げる。


 「どうされました?」


 ルカンのため息から、今回の事意外にも悩ましい事情があるようだ。ハナがたずねると、ルカンは再びため息をつきながら話し始めた。


 「はぁ〜〜〜。バサラ将軍の反乱で、龍騎士隊は壊滅状態。バルハラの東方を治める白龍様なき今、もし帝国軍が攻めてきたらハオは陥落してしまう………」


 「ヨルムンガンドのように、なっちまうのか………。何か防ぐ手立ては、ないのか?」


 「東の国は、険しい大自然に囲まれておる。更には北方の帝国本国とは、バルハラ山脈で隔てられておる。そうやすやすと攻めては来れぬのだが………。早く軍隊を立て直さなければ………」


 「私が戦います!」


 チェンが勇ましく声を上げた。


 「なっ、何を無茶な。帝国に一人で敵うわけもなかろうに。それに、父であるゲンブ殿を失ったばかりであろう」


 ルカンの目には、勇猛果敢であった武人ゲンブの生き写しのように見えた。しかし、しょせん浅はかな少女のたわごとと受け流した。

 それでもチェンは、食い下がらず熱弁する。


 「帝国軍がタオを攻めるのであれば、“悪魔の手”と呼ばれる拠点基地をつかうはずです。そこは昔、ヨルムンガンドを攻める為に作られた拠点で、バルハラ山脈にへだたれた帝国本土と鉄道で結ばれ、補給は全て鉄道に頼っています」


 「そうか! 悪魔の手と呼ばれる基地をたたけば、東の国への進行を防げれるのか!」


 興奮するロンを落ち着かせながら、ルカンが返事をした。


 「待て待て! チェン一人で、拠点基地を落とせれるわけなかろう…。あそこは、龍騎士隊が総攻撃をしても、苦戦する場所だぞ!」


 コッホんと自信満々に胸をたたき、ルカンを諭そうとするチェン。


 「時間稼ぎをするだけです! 破壊するのは、帝国本土と基地を結ぶ鉄道です」


 「しかし、どうやって…? アソコは、帝国領。深紅のフレア率いる、紅蓮の薔薇部隊の縄張り。東の果てまで名が知れるドラゴンライダーと、戦うことになるぞ」


 「大丈夫です! 竜が手出しできない、速さと高さで行けばいいのです! ねっ!! 皆、協力してほしいの」


 いったいどんな策があるのか自信満々に話をしたチェンは、ロンとハナに甘えるような視線をおくった。


 (ほへ………?)


 何のことか分からず、あっけらかんとするロンとハナ。

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DRAGON RIDER @orion23

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