第30話 スタジアム奪還作戦開始
紺のセーラー服を着て、その上から重苦しい防弾チョッキをつけた。
毎度分厚くて動きづらい、けどこれが命を守る役割を果たすんだ。
導電グローブと、ブーツも装備する。
自動拳銃はグリップが前後に長いから、慣れてないと握りにくい。オートパトロールロボット(通称:APR)の装甲を貫けるほどの威力がある。実際、この目で装甲が障子の紙みたいに穴が開くのを見た。
「永嶋司令、APR殲滅チーム、ブリッツ、シャッテン、オペレーターの小林集合しています」
小林さんが永嶋司令と通信中。
シャッテンは、スナイパーライフルを背負い、他は同じ装備をして凛と立つ。
「はッ、了解――これより任務地に向かいます。今回の任務は2人で前線に出る形となりますので、1台ずつ確実に慎重に行動不能にしましょう」
ナハトは来られないんだ……ううん、信じないと、任務の途中からだって合流できるから、乗り越えられるって信じて戦おう――。
スタジアムまでバンが走る。
瓦礫を踏み越え、時折ガタンと上下に揺れる度に体も動く。
オペレーターの小林さんが運転を行い、永嶋司令は本社から指揮を執る。
シャッテンは瞼を閉ざしてジッと黙っていた。
外がどうなってるのか後部座席からじゃ見えない、私はスタジアムに到着するまでA-eyeを使って任務内容と詳細を読み取る。
スタジアム周辺の死亡者数は72人、APRは10機いたけどそのうち3機は既に自爆している。半数以上が自爆による影響で死亡、ガードテクノロジー社の警備員も8名が負傷し、避難もまともにできてない――だって、極めて絶望的な状況だ。
だとしても、私達はAPR殲滅チームだから人命救助の優先度は低い。
人を助けるにしても、まずはAPRの動きを止めないと話にならないから、私達のできることを、しないと――。
「間もなくポイントに到着します。ブリッツさん、シャッテンさん、まずは徒歩で向かい、スタジアム内部に入るまで通信禁止。外のAPRと接触を避けることです。これは二次被害を防ぐためでもあります。いいですね?」
「了解です」「了解」
スタジアムから2㎞離れた場所にバンが停車する。
「それでは、お気をつけて」
任務が始まった。
「さて、行きましょうブリッツ。まずはスタジアムまで向かう、ということでしたね」
スナイパーライフルを背負ったシャッテンは、腰ベルトからサブの自動拳銃を抜く。
「うん、スタジアムまで2㎞、APRに傍受されないよう目的地まで無線なし」
瓦礫を踏み歩き、どす黒く焦げた塊から漂う悪臭に耐えながら歩いた。
スタジアム周辺の建物は比較的低い。倒壊の被害よりもAPRの自爆被害が甚大で、転がってる黒焦げはどれが人で、機械なのかA-eyeも識別できない。
近くの公園は遊具もベンチも全て焦げ、真ん中の窪んだ場所には自爆して跡形もないAPRの破片が散らばってる。
コアが割れ、どろどろと黒ずんだ液体が飛散してる……どう塞いだって入り込んでくるほどの生臭さが風に乗って漂う。
「暴走した警備ロボット、と思っていたのが東セキュリティ本社に入ってから見た様々な光景のせいで、疑わしくなりました」
「そう……だね。コアの中身が血みたいだし、ニオイも」
「えぇ、ガードテクノロジー社も東セキュリティ同様どこまで把握して、何を隠しているのか怪しいものです」
「うん」
『kyuuooooooonn!!』
甲高い機械音声がどこからか聞こえて、反射的に拳銃を構える。
A-eyeは特に反応を見せず、目的地までの距離と私達のバイタルを流すだけ。
APRとはまた違う音だと思う。
「スタジアムから、でしょうか」
「多分」
道路を叩く複数の足音が近くから聞こえ、A-eyeが注意を促す。
シャッテンと共に建物の陰に隠れて、周囲の状況がどうなってるのか確認してみる。
丸みのある四角い胴体と赤いモノアイ、全長2mサイズに4足型(蜘蛛のように歩く)APRがいた、それも3機。胴体左右に箱があって、そこから二又のテーザーガンを射出できる仕様。
APRはスタジアムを目指して進んでいく。
「スタジアムに向かってる?」
「先ほどの鳴き声に反応してるようですね。これは、スタジアムに入って早々銃撃戦になるでしょう」
「うん……行こう」
コアを抜くにはある程度時間が必要だから、まずは1機ずつ確実に脚と目を壊すこと。
スナイパーライフルに持ち替えたシャッテンと一緒に、スタジアムまで一気に駆けて行く――。
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