英霊送りの渡し船

フライジン

第1話 英霊送りと竜殺し


ここは、天国。

正確には、天国へ向かう為のあの世の中継地点『港』である。


ここには多くの者達がやってきて、空を翔ける船『天翔船』に乗って天国へ行く。


これは、その船の一隻『エインヘリアル』。 英雄を乗せて天国へ向かう為の専用船。


その船長である少年『エイン=ブレイブ』の物語である。


・・・

・・


【港 船着場】



『……………ここか。』


エイン「………ヴェイル=ジーク様、ですね?」


ヴェイル『……ああ……あんたは?』


エイン「……この船の船長をしている、エインと申します。この度は、お疲れ様でございました……」


ヴェイル『よせやい、「お疲れ様でした」なんて。俺は全然疲れてないし、むしろ気分が良いんだ!もっと明るく頼む!』


エイン「!……わかりました!では、そろそろ出航なので、こちらへどうぞ!」


ヴェイル『おお、よろしく頼む!』


・・・

・・


エイン「それでは、出航ーっ!!」



天翔船が空を行く。


今日も天国の船着場を目指して。




ヴェイル『…おお……聞いてはいたが、すげえな………。本当に空を飛んでやがる………どういう仕組みなんだ……?』


エイン「さぁ?」


ヴェイル『さぁ?って、わかってないのか?』


エイン「ですね。正確な原理は分かりませんが、どうやら「神様の力」をお借りして動いているらしいですよ?」


ヴェイル『神様、か………天国に行けば会えるのか?』


エイン「うーん……なかなか見かけることはありませんが……きっと会えますよ。」


ヴェイル『………それは、俺が英雄だからか?』


エイン「……それもありますね。」



ヴェイル『………なぁ、一つ聞いて良いか?』


エイン「質問ですか?なんでもどうぞ!」



ヴェイル『……俺はなぜ、「英雄」って呼ばれてるんだ?』



エイン「…………え?」


ヴェイル『……いや、な?……なんで俺みたいな奴が英雄って呼ばれてるのか、それを知りたくてな。』


エイン「……なるほど…………少しお待ちください………」



舵輪の横から、紙のような物を取り出す。



エイン「えーと………ああ、ありました!」


ヴェイル『ん?その紙はなんだ?』


エイン「この紙はヴェイル様の『履歴書』みたいな物です。ヴェイル様の情報が、大まかに載っているのですよ。」


ヴェイル『あー………そういえばあったな、そんなの。港に初めて来た時に作らされたな。』



エイン「さて、ヴェイル様が英雄とされた理由ですが………」



エイン「どうやら、『危険な竜の討伐』が大きいみたいですね!」



ヴェイル『………ああ、そうか………』


エイン「生涯に倒した竜の数は………100を超えていて、ついた二つ名は『竜殺し』……!」



ヴェイル『………そうか。』



エイン「………どうかしましたか?暗い顔をして。」



ヴェイル『………竜には、良い思い出が無くてな。』



エイン「………そうなのですか……?」



ヴェイル『……せっかくだ。少し話すか……』



ヴェイル『……俺は確かに「竜殺し」だ。だが、最初からそうなりたかったわけじゃない。』



ヴェイル『俺は元々、小さな村の農家の一人っ子でな。当時はよく畑の土をいじってたもんだ。なんだかんだで、この頃が一番幸せだったかもな……』



ヴェイル『……俺が15歳になったころだ。両親と喧嘩してな。理由は今思えば些細な事だったが、家を飛び出して、近くの街まで家出したんだ。』



ヴェイル『………その街で宿とって、一晩過ごして、頭が冷えて、村に帰ろうとした時だった。』




ヴェイル『「村が竜に襲われた」って聞いたのは。』



エイン「!!」



ヴェイル『………急いで村に戻ったさ。でも、何も残っちゃいなかった。何もかも焼かれてた。畑も、家も………両親も………。生き残ったのは、俺だけだった………』



エイン「…………」



ヴェイル『……俺は、竜を憎んだ。だから強くなって、竜を殺して、殺して、殺して。気がつけば竜殺しの英雄だ。』


ヴェイル『そういや結局、死ぬまで竜と戦ってたな。まあ、他にやる事も無かったからな。』



エイン「……そう、ですか………」



ヴェイル『………でもさ。』



ヴェイル『一番憎いのは、俺自身なんだ。』


エイン「!」



ヴェイル『勝手な理由で家を出て、親に謝りもできずに一人生き残って。あげく生きてる間は竜を殺すことしかしなかった。』


ヴェイル『………父さんは、母さんは……俺をどう思ってたんだろうな………』


エイン「…………」



ヴェイル『……悪いな、暗い話をしちまって…』


ヴェイル『……って、なんでお前が泣いてるんだ!?』



エイン「………ずいまぜん……聞いてたら、こっちまで悲しくなってきて………」



エイン「ずっと……辛かったんでずね………」


ヴェイル『………まあ……そう、かもな……』



カーン………カーン………



ヴェイル『……ん?鐘の音……?』



エイン「あっ!もうそろそろ天国へ到着する合図です!」



ヴェイル『……そうか、いよいよか………』



ヴェイル『………ありがとうな、エイン船長。色々と話しちまって………』



エイン「いえいえ………ん?船着場に誰か居るみたいですよ………?」



ヴェイル「………え…………?」



・・・

・・


【天国 船着場】



ヴェイル『…………』



「…………」


「…………」


ヴェイル『………父さん………母さん………』


ヴェイル『………お………おれ………』


「………ごめんね。」


「……ごめんな。」



ヴェイル『!!』


「……一人にさせてしまって、ごめんね……」


「辛い時に、いてやれなくて、すまなかった…」


ヴェイル『そ、そんな事は……!』




エイン「ヴェイル様。」


エイン「ここは天国。時間はたっぷりあります。ゆっくりと、一緒にいてあげてください……」


ヴェイル『…………』



ヴェイル『………父さん、母さん……こっちこそ……ごめん………』



ヴェイル『そして………ただいま………!』




「………おかえりなさい、ヴェイル……!」



「…………大きくなったな………!」


ヴェイル『………うん………!』


・・・

・・


【港 エインの家】


エイン『……………』


エイン『……ヴェイル様、家族と会えて、良かった……』



机の上の写真を見る



エイン『…………』



エイン『……さて!次の仕事も、頑張らなくちゃな………!』






続く

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

英霊送りの渡し船 フライジン @agedori15

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ