第27話 ユヅキ:第3世界:海に潜む恐怖
海の世界――この選択をした瞬間から、胸の奥でざらつく違和感はあった。
けれど、“一番苦手なものを克服しよう”なんて、少しは思ってたんだ。
視界が切り替わった瞬間、とぷん、と。
水に落ちる感覚がした。
俺を囲んでいる結界の周囲は水だ。
水の上に転移したのか……結界を張っておいて良かった。
【結界(快適保障付き)】で結界内は水も入ってこないし新鮮な酸素も循環している、焦ることは無い。
どれだけ深いのかと下を見て……──
目の前が真っ暗になった。
比喩ではない、本当に暗くなった。
理解が及ばず、焦って魔法で光の玉を浮かべる。
そこは赤くてうねうねうごうごしていて……まるで体内のような……。
……、……食べられてるー!!
一瞬で頭の中が真っ白に染まる。
パニックになった俺は、ユヅキの武器として持っていた銃に魔力を装填して引き金を引いた。
バドゥゥゥン!!
レーザービームのような光の柱が射出され、赤いグロテスクなぐにょぐにょが爆裂四散していく。
チート全開!魔法で飛んで脱出!
急いで海面に出て空へ飛ぶ。
下を見下ろすと、体の半分を吹き飛ばされてもまだ生きている上に徐々に再生していっている巨大な魚がいた。
どっっと心臓が脈打ち、気が付けば引き金を何度も引いていた。
まるで俺の心情を表しているかのように様々な属性のレーザーが巨大魚を襲い、ぐちゃぐちゃのバラバラになって原型をとどめなくなってようやく再生が止まった。
辺りは血の海になっており、肉片や骨なんかが辺りに浮かんでいる。
どっどっどっ、と心臓が煩い。
深い深い海はその底に何かが潜んでいることを推測させ、広くどこまでも続く水平線は陸地が無い絶望感を突きつけてきた。
巨大魚に食べられるなんて、そんなのトラウマにならないわけがない。
俺は……俺は──海洋恐怖症なんだよ!!
限界を迎えた俺は即座に箱庭に戻り、その場に崩れ落ちる。
そして同じようにリオもその場に崩れ落ちた。
「っ……無理、無理無理無理……!」
リオは額を押さえて震えている。そりゃそうだ、俺の体験は数秒遅れで全部、リオの脳に流れ込んでるんだから。
ユヅキが恐怖を覚えれば、リオも例外じゃない。
他の分身たちは、何が起きたのかわからず慌てて駆け寄ってきた。
「どうしたの!?」
「2人共、顔が真っ青……です!」
その声に反応する気力もなく、俺とリオはただ肩を寄せ合って震えていた。
しばらくして、シロとクロが心配そうに寄ってきた。
小さな鼻先が頬をつつき、もふもふの毛並みが指先をくすぐる。
そのぬくもりで、ようやく現実に戻ってこられた気がした。
それでも、まぶたを閉じるたびにあの赤い光景がちらついた。
次にこの世界へ行くときは、もう少し、冷静でいたい——。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます