お茶のお供たちさまざま

 手元にあるフォションの紅茶缶が、皆ことごとく賞味期限が8月なので、飲んでしまわないといけない。

 まあ、紅茶というものはちょっとやそっと賞味期限が切れたところで飲めなくなったりはしないと思うけれど。


 しかし夏なので暑いし紅茶は熱いのであまり飲み進まず、いたずらにお茶のお供を買ってきてうかつに氷をどばどば入れた麦茶などで消費していた。本末転倒。


 お気に入りのお菓子屋でスペキュラースなるものを買ったところ、ぎっしりと小さな缶に二段小さめのサブレが詰まっているというものだった。

 これはしばらく保つなあとおもっていたものの、さにあらず。

 なんだか複雑な味のスパイスが入ったサブレ的な硬めのクッキー、もしくは滑らかなビスケットなのだが、なんかこう口に入れた瞬間と噛んで溶けていくときと最後の余韻で香るスパイスに推移があるため、うっかり二枚三枚と行ってしまってとても危険な食べ物であった。

 メインは多分シナモンなのだが、サブを固める何かが複雑で馥郁。

 一旦食べだしたら止まらなくなり、だいたい二日で食べ尽くしてしまったが、そうしてなおスペキュラース欲が止まらぬ。


 あまりにたべたいので思い立ってお菓子行脚にご近所に繰り出した結果、大体似ているという噂のロータスビスコフを代理として買ってきた。


 しかしまたこれも罠であったのである。

 四角い箱を開けたところでそれに気づいた。

 なんとあの赤いビニールで個包装かと思いきや、ややホロホロとした感じのでかい四角いクッキーが白い箱の中にずらりと三十四枚遮るもの無く並んでいたのだ。


 今、ねずみのくには夏。それも最高にむしむしと暑い、全てが腐る、そんな季節。

 こんなもの一週間も置いてしまえばドロドロに湿気を吸いかびるんるんでるんるんになってしまうことはまちがいない。


 しかし三十四枚だ。三十四。個包装ならまだしも人に配ることもできようものを。


 更に言えばどうもスペキュラースのスペキュラース性はシナモン以外のところにあったらしく、エンドレス手が止まらない、というほどではない。

 というか、甘い。甘い。まずいものではないもののこう、ブラックコーヒーと合わせる系の食べ物だ。 日本のお菓子屋の作ったものと比べてはいけなかった。


 困惑し、立ち尽くして天を仰ぎ、只今絶賛なんかいい感じの消費レシピを募集中である。



 これは食べ切れないとビスコフが消えるまでピエールマルコリーニのダッグワーズとチョコレートを冷蔵庫にしまい込んだのでこちらもブルームが出る前に食べること。

 忘れ去ってはならない。

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ごはん備忘録 渡来みずね @nezumi

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