第二十二章

夜が訪れてトニーとジェシカは一緒にベッドに横たわったがトニーはジェシカの髪を撫でてジェシカが瞼を閉じて眠りに入ると寝返りをうって背中を向けた。抱きたいのは山々だけどジェシカは初めてだったから、まだ痛いかもしれない、と思ってのことだった。

だけど目を閉じても…眠れないでいた。トニー自身はアイドル時代に沢山の女性と関係を持っていたけど経験がなかった女性を相手にしたのはジェシカが初めてで、どうしたらいいのかトニーは解らないでいた。それでも、ジェシカにとって自分が初めての相手だったということが目眩がするほどトニーには嬉しかった。

ジェシカは、浅い眠りに落ちては目を覚ましを繰り返していた。トニーは背中を向けている。やっぱり疲れていて今夜は、もう抱いてくれないかしら…

夜中、ジェシカは何度めかの浅い眠りから起き上がりトイレに行って戻り月明かりの中、トニーが背中を向けて横たわっているのを見ながら自分が着ているバスローブを脱いでトニーの背中にピタリとくっ付くと右手を彼の腰に置いた。

今夜は抱いてくれなくても、こうしていたかった。

トニーは起きていたのでジェシカが背中に、くっ付いた感覚に気付いていた。…寝返りをうってジェシカの方に向いたら…また抱きたくなる…イヤ、今だって抱きたくてたまらない。トニーの心臓の鼓動が、めちゃめちゃ早くなってきた。それは背中にピッタリくっついていたジェシカにも伝わっていた。

「トニー?起きているの?起こしちゃった?」ジェシカが囁いた。

「ううん、もともと起きてるよ」

トニーが静かに答えるのを聞いたジェシカは、

「トニーが寝ちゃったのかと思っていたから寂しかったわ」と言ってトニーが着ているバスローブの中に手を滑らせトニーの胸を撫で、バスローブの紐をほどくとトニーの股間に手を伸ばして、ゆっくりと、固くなってきた、それを優しく握った。

「うわ、ジェシカ、ちょっと、ちょっと待って…そんな…あ、暴発しちゃうから順を追って、ね」トニーは焦り、そっとジェシカの手を外させ、ようやく寝返りをうってジェシカの方に向いた。

「わっ♡バスローブ脱いでたんだ」ジェシカが裸になっていたことに気付いて自分もジェシカに脱がされかけたバスローブを脱いでから抱きしめた。

「ジェシカが、その…まだ痛いんじゃないかと思って、今夜は我慢しようと…」抱きしめて背中を撫でながらトニーが囁いた。

「心配してくれて、ありがとう…今は、もう痛くないのよ。最初は痛いって聞いていたし。その…、入ったら何回かは痛むのかもしれないけど…そんなこと平気よ。我慢なんてしないで大丈夫よ」

ジェシカもトニーの背中を撫でながら囁き返した。

「…でも、それはトニーが疲れていなければ、ね」

「疲れてなんていないよ」

トニーは微笑んで月明かりの中で頬を染めるジェシカをじっと見つめて囁いた。

「ジェシカ、綺麗だ…」

「ありがとう…トニーも…素敵よ」

月明かりが、だんだんと朝日の明かりに移り変わる頃、互いの激しい息遣いが静かな夜明けが訪れた部屋の中に響いた。

「トニー、大好きよ…」そう言いながらジェシカは気絶するように寝入ってしまった。

トニーは着けていた避妊具を素早く処理して眠っているジェシカを抱き寄せ、

「ジェシカ、俺も」と囁いて自身も眠りに落ちていった。

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