第43話 ボス討伐

オーガ、それは恐怖の象徴と呼ばれるとか。


身長は三メートル近く、その体格はまるでボディービルダーのように引き締まっている。


全身は赤い皮膚に覆われ、その顔は鬼そのもので凶悪の一言だ。


武器も何も持たず、ただ己の肉体のみで全てを破壊し、その体は生半可な攻撃ではビクともしないらしい。


「あれがオーガかぁ……こわっ」


「B級の魔物ですからね。獣化した私ならどうにか戦えますが、今は解けてしまっていますし」


「うげぇ、獣化したシオンより強いの? そっか、B級って言ったもんね。あー、こんな時シグルドおじさんがいてくれたらなぁ」


シグルドおじさんなら、きっと一刀の元に斬り伏せるに違いない。

それくらい、あの人の強さは異次元だし。


「ないものを嘆いても仕方ありません。さあ、どうします?」


「とりあえず、アレの相手を一般の兵士にさせるわけにはいかないね。よし、予定通りに俺達で倒すとしようか」


「そうですね」


「というわけで、みんなに下がるように伝令をよろしく。その間に、俺は魔法の準備をしておくから」


ユルグさんとシオンが頷き、再び戦場に戻る。

俺はその間に魔力をためることに。

そして数分で、ユルグさんが戻ってきた。


「いつでも平気だそうだ。あとはお主の合図待ちだ」


「ありがとう。あれ……シオンは?」


「殿を務めるそうだ。逃げる時に無防備になり、脱落者が出ないように」


「あっ、確かに。でも、それだと魔法が」


「自分のことは気にするなと。魔法は避けるので、信頼してくださいとな」


「そう言われちゃ止められないなぁ……それじゃ、全員退避!」


「「「はっ!!!」」」


皆が頷き、俺達の方へ駆けてくる。

当然、魔物達はそれに向けて走り出す。

そこでシオンが割って入り、追ってくる魔物達を仕留めていく。

そして、兵士達が俺を通り過ぎていった。


「シオン! もういいよ!」


「放ってください! 必ず回避しますので!」


「……わかったよ! 凍てつく氷の針よ穿て——アイスニードル!」


地面から氷の針が穿ち、追ってきた魔物達を串刺しにしていく。

そんな中、シオンが跳躍し……俺の隣にやってくる。


「まったく、心配かけないでよ」


「ふふ、すみません。ですが、これで一網打尽に出来たかと」


「そうだね、引きつけてくれたし……ただ、アレは倒せないか」


「グォォォォォ!」


全身から血を流しながらも、オーガが吠える。

その視線は、俺を見つめていた。

どう考えても怒り狂っている。


「ひぇ……明らかに俺を見てるね」


「主君をやらせはしない」


「どれ、オレも手伝うとしよう」


「オ、オイラも!」


三人が俺を守るように前に出る。

こりゃ、ビビってる場合じゃないね。

俺は作戦を素早く立て、行動を開始する。

まずはオルガさんとユルグさんが、果敢に攻めていく。


「オォォォ! 舐めるなっ!」


「ま、負けないっ!」


「二人とも、あと少し頑張って! シオン、まだ!?」


「……いけます!」


再びシオンが獣化モードに入り、俺を抱えて一瞬でオーガの近くに迫る。

大きさは三メートル近く、その肉体から繰り出される攻撃は二人を蹴散らす。

まさしく、暴力そのものだった。


「二人とも、下がって!」


「くっ……」


「は、はい!」


シオンとバトンタッチし、二人が俺の元にくる。

まずはヒールをかけ、今度は氷魔法の準備に入った。


「ガァァァァァァァア!」


「うるさいですね!」


その間にも、オーガとシオンの戦いは熾烈を極める。

オーガの拳は大地を砕き、土煙がまう。

シオンは紙一重で躱し、抜刀術にて応戦する。


「しっ!」


「ガァァ!」


「か、硬い……!」


やっぱり、見た目通りに物理攻撃が効きにくいんだ。

シオンの仕事は時間を稼ぐこと。

俺の魔法が貯まるまで、そして二人のために隙を作るために。


「やはり、オレも加勢に……」


「ううん、ユルグさんには大事な仕事があるよ。そのための一撃を待とう」


そして、待つこと数分……シオンが一瞬、俺へと視線を向けた。

それは作戦の合図だった。


「二人とも!」


「おうっ!」


「い、いけますっ」


「——ハァァァァ!」


そして次の瞬間……オーガの左足に、クレハの抜刀が決まる。

オーガの太ももからは血があふれ、確実なダメージを与えた。


「はぁ、はぁ……」


「ガァァ!? ……ガァァァァァァァア!」


怒り狂ったオーガが右拳をクレハに向ける。

そこにオルガさんが盾を構えて割り込む!


「ぐぅぅぅぅ!」


「ガァァ!」


「ひ、引かない!」


オルガさんが勢いに押されて下がっていく。

だが、これで奴の腕は伸びきった。

つまり、切れやすいということだ。


「ウォォォォ!」


「ガァァァァァァァア!?」


伸びきった腕の関節に、ユルグさんが拳を叩き込んだ。

それによって、オーガの腕が鈍い音を立ててへし折れる。


「はっ! どうだ!」


「グガァァァ!」


「ぐっ!?」


なんと折れた腕で、ユルグさんを弾き飛ばす。

だけど、十分に時間は稼げた。

これであいつは機敏には動けない。


「氷の滝よ、敵を凍らせろ——アイスフォール」


オーガは足を怪我しているので、上からくる氷の滝を避けることはできない。

それでも片腕で防御をし、氷の滝を受け止めようとした。


「いくらなんでも、そんなものでは防げないよ」


「ガァァァァァァァ………ァァァァ」


俺の放った魔法は、徐々にオーガを凍らせていく。


そして、そのまま……物言わぬ魔石になったのだった。




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