第16話 魔法の言葉
どうも、中華風ファンタジーを普段書いている人間、
おまけを除いて、今回が最終話となります。ここまで読んでいただき、ありがとうございます。のろのろ更新でしたが、ようやく最終話にたどり着きました。
今回の話は、中華風ファンタジーって、あくまで”中華風”だ、という話です。今までの話と同じようなことを言っていますが、苦労話の内容は今までのトピックに当てはまらないので書いていなかったエピソード二つです。
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まずは一つ目の話。中華風ファンタジーといえば漢詩ですよね! 中国発のドラマやアニメ、ゲームなどでも難解な漢詩が出てくると、狩野緒は涎が出そうなほど喜びます(日本人には書けないあの独特さというか、難解なのがたまらん)。
だがしかし漢詩を引用しようとすると、漢詩を作った人物が物語内の世界に実在していることになってしまいます。中華風ファンタジーって言ってるのに漢詩の作者は実在するんだ……と思ってしまい、読むうえでのノイズになってしまうかもしれませんね。拙作には実在の登場人物はいないため、引用できませんでした。
他にも、例えば呉越同舟を引用したいと思ったとき。この世界にも呉と越あんの? となってしまいます。呉と越が登場する時代物ならば良いのですが、登場しないとなると出すのは難しいですね。漢詩、という名前も同じように、漢があったことになります。ですので、拙作の小説では”詩”とだけ書きました。
慣用句も同様です。小説の中に”馬子にも衣裳”という言葉を登場させたのですが、途中で、馬子ってこの時代にいるのか……? と考えてしまい、結局”人は衣裳により、馬は鞍によって引き立つ”という慣用句を引用しました。馬子にも衣裳のほうが伝わりやすいのに……。
挙句の果てには、オリジナル漢詩を作って登場させた~い! と思ったりもしたのですが、漢詩は押韻など様々な決まりがあるため断念しました(漢代は古体詩なので、唐の時代に作られる漢詩の形よりは自由っぽい)。しかし、なんとか詩っぽいものを登場させたい私は、小説で苦し紛れにこういう文を登場させたりしています。
「鳥は一声囀り、樹木は青青たり……」
それっぽい単語をなんとか並べていますね。いろいろ調べたうえで書いているのですが、私の力ではこれが限界でした。悲しい。
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二つ目は、ひげです。当時の男性は基本的にひげを生やしていたっぽいですね。仙人だとか、三国志登場人物だとか、ぼんやり思い浮かべるとき、ひげが生えているイメージがあります。
現代の価値観だと年配の雰囲気が出てしまう(私の中ではダンディというイメージが強いです)ため、ごめんよと思いながら拙作の登場人物のひげを剃らせていただきました。(登場人物の中にはひげが生えにくい人もいます。)古代中国では髪やひげをそる刑罰があったらしいので、苦痛だったかもしれませんね。ちなみに、比較的年配の登場人物はひげを生やしたままです。
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ということで、苦労話エピソードは以上となります。ひげよりも漢詩に大分苦労していますね。
今までのエッセイでは、私の苦労話をしつつ、中華風ファンタジーって書くの難しそうだけど調べるのにも限界があるので、ある程度折り合いをつけていこうという話をしていたつもりです。
今回のエッセイ16話でも、書いてるのは中華”風”ファンタジーなので、歴史に忠実に書こうとしすぎると苦労します。調べるのはほどほどにしていこう(自戒)と言いたいですね。
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結びに。中華風ファンタジーは、画数の多い漢字の登場人物や用語から、難しいと思われることがあります。しかし、一度はまれば書くのも読むのもとても楽しいジャンルです。ジャンル振興という面からみて、ハードルや敷居が高くなりすぎないようなジャンルであってほしいな、とは思いますね。
何か困ったら、魔法の言葉――自分が書いて(読んで)いるのは”中華風ファンタジーだから”――と言えばいいと思います。私の宇宙では音も鳴るんですよ、ってね。
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