つまりは2本目の柱ですわね。

ノーアウトのランナーをきっちり刺したその瞬間に、この試合は勝ったなとそういう雰囲気になりました。



スコアは1ー0ではありますが、同じような打球が片方はホームランになり、片方はシングルヒットで盗塁失敗。



勝敗がつくには十分過ぎる分岐点となった。





次の日。



ウェブが上手にボールを動かして打者を打ち取る技巧派なら、ローテーション2番手のピーターソンは100マイル越えのスピードボールを武器にするパワーピッチャーである。



言わずもがな、コントロールはお察し。野球ゲームの数値で言うと、30あるかないかである。



地元メディアからは、ピーターソンのピッチングは毎イニングスクラッチを削るようなもの。


彼の登板日にスタジアムへ行く事は、宝くじを買うのと同じ、外れても文句は言えない。


などとコミカルに比喩されている。



アメリカの西海岸の都市生まれで、ソノマザ・ジャイアントという異名でアマチュア時代を過ごした身長2メートル男である。



もう、腕とか胸板とかが逞しく、何度もバスケットやアメフトのプロチームの関係者にスカウトされていたくらい身体能力が高く、8年前のドラフトでシャーロットに1巡目指名されてから、大いに期待されていた。





変化球の持ち球がないまま、マイナーで投げていたくらい、猪突猛進なピッチングスタイルでしたから、若干芽が出るのに時間はかかったものの、とある球種を覚えてから、彼は一気にメジャーレベルの選手になったという。





試合前、いつものように、おじさん2人を引き連れてクラブハウスに出勤しますと、食堂のベランダに向かう窓を覆う真っ白なカーテンが風にユラユラとなびいてまして。



誰か居るのかと覗いてみますと、そこに居たのはソノマザ・ジャイアントその人であった。



椅子を1脚持ち出し、それに座ると、手元には大きなスケッチブック。大きな手で持った2Bのえんぴつを走らせ、彼はなんとも上手な絵を書いていたのだ。



クラブハウスから見える、シャーロットのスタジアム。



1塁側にあるクラブハウスからの眺めですから、グリーンオブシャーロットの文字の最初の3文字が見えないくらいの角度でして。



厳かで豪快。それでいて美しい湾曲したデザイン。柱1本1本がしっかりと立っており、雨風にさらされて少し黒ずんだ部分とかも、しっかりと表現されていたり。



コンクリートのデザインや質感が変わっているところとかも、丁寧に描写されている。



とてもコントロールが良くない方が書いたスケッチとは思えませんでしたわ。




「ピーターソンちゃん。すごいですわね!あなたが書きましたの?」



「おっ、アライさんじゃないか。俺はいつも先発登板する時にはこうやって絵を嗜んでいるのさ」



「そうなんだ。めちゃくちゃ上手だね。この角度からなんて難しそうだけど」



「最初は下手だったさ。リンゴを描いたらオレンジになったり、犬を描いたらニワトリになったりしたもんだが、練習すれば上手くなる。ベースボールと同じさ」



「なるほどね。これが君のルーティンというわけか」



「マウンドに上がると、ついつい熱くなって自分を見失ってしまうからね。絵を描いて体と心を落ち着けてから試合に臨むんだ。今日はアライさんの援護を期待して投げ続けるぜ」



「おう、任せろ!俺もグラウンドというキャンパスに、アーチという名のスケッチを描いて見せるぜ!」





「ん?どういうことだ?」





「意味なんかないさ」




「フフッ」




なんてこと。苦笑いされながら、鼻で笑われてしまった。





そして試合が始まる。



ニューヨークメッズとの2戦目。



先発のマウンドに上がったピーターソン。今シーズン4勝目を狙う試合。



初球。



スローカーブだった。



100マイルオーバーの直球と並ぶ、ピーターソンの代名詞。75マイルのスローカーブ。



それが真ん中低め。相手の1番バッターもこのボールが頭に入っていたようで、十分に引き付けながら叩いた。



頭上に打球が上がる。




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