真夏の逃避行

一条 遼

第1話

唸る蝉の声、纏わりついて離れない

噎せ返るような暑さと湿度の中

ふと、空を見上げた。


深く深く、沈みこんでしまいそうな程の青い空が

疲れきった自分に沁みる。


一切曇りのない空、それだけ。

ただそれだけなのに、何故か無性に悲しくなった

哀しくなって心が揺らぐ。


その波紋は心臓の辺りから少しずつ、少しずつ

広がって、頭の先から足の先まで響いて

跳ね返って心臓へ、気がついた頃には目頭へ。


ただ暑い夏のとある日に

空を見上げただけなのに

虚しさと切なさで涙が止まらない。



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