第10話 死なないように

俺が試験監督の声に従って扉をくぐると、そこは暗い森林の中だった。俺は腕時計を見ながら不思議に思った。

今はちょうど午後の一時。真昼間のはずだ。いくら森林の中とは言え空が真っ暗なんてことはあり得ない。不思議なもんだな。


「おい、晴人!」


聞き覚えのある声が聞こえてきた。そちらを向くと酒呑童子がこっちに走ってきた。


「お前、筆記のほうは合格できたんだな」


「ああ、お前が教えるのうまかったからな」


「お前も飲み込み早くて助かったよ」


俺たちはお互いを見あってほほ笑んだ。


「それでは、筆記試験合格者の皆さん。続いては実技試験です」


筆記試験の時と同じ声がまた聞こえてきた。


「実技試験では、この森林にいる100の人工の化物を祓ってもらいます。一体一体はそこまで強くないですが、奴らは集団行動を好みますので、油断したら一気にやられるでしょう。そんな化物の討伐数や、この森林での立ち回り、ほか受験者とのかかわり方などを総合的に判断し、合否を決めさせていただきます。とはいっても死なない限りは大抵合格…おっと、これは言ってはいけないんでした。忘れてください。では、頑張ってください」


「死なないように?」


「ああ、俺もさっき他の化物から初めて聞いたんだけど、人口の化物って、一度倒して契約の切れた人にも容赦なく襲ってくるらしい。大抵そういうやつって気失ってるからその時点で終わりらしい。まぁ、そこは野生の化物と変わらんか」


「そうか…少し怖いな」


「どうした?怖気てるのか?安心しろ。お前は強い。それに、俺もいる」


「…だな!」


「それでは、実技試験、開始です」

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