第8話 試験開始

酒呑童子の謎の自信から一カ月がたった。勉強のほうは酒呑童子が教えてくれるんだがまぁわかりやすい。それに、俺が元からゲームとかで知っている内容もあったのですんなりと頭の中に入った。実技のほうは、まぁ、酒呑童子の能力が能力だ。かなり楽に突破できそうだ。あ、そうだ。この前酒呑童子が日本刀くれた。能力的になにか近距離武器に力を乗せた方がいいらしい。


そんなこんなで今日は試験の当日だ。俺は電車で都内にあるとある森林に行こうとしている。都内といっても東京の西のほう。山のほうだ。正直今まで東京にも自然豊かなところがあるとは思ってもみなかった。


「でも、都心から電車で二時間以上かかるって遠すぎだろ」


「しょうがないだろ。向こうとしても都心で目立ったことしたくないだろうし」


愚痴をはいた俺に反応した隣の人は酒呑童子だ。普段の角生やした姿なら秒で周りの人に逃げられて警察呼ばれるだろう。酒呑童子はそのままの格好で行く気満々だったが俺が止めた。よく今までばれなかったなと心の底からい思う。というわけで少し変装させてみた。まず和服だと目立つので試しにパーカーを着させてみた。

意外と似合う。まぁ、顔とスタイルはテレビとかに出ててもおかしくないくらいには整ってるしな。そしてせっかくなのでフードで角を隠そうとしたが、角が邪魔でかぶれなかった。というわけで帽子をかぶせてみたのだが、それがとても似合ってて、いかにももてる男みたいになってしまった。ここまで来るまでに三回はスカウトされたぞ。なんかうらやましいな。


というわけで、電車に揺られながらなんとか目的地最寄りの駅に着いた。


「で、ここからどこにいけばいい?」


「ここから1時間歩いたところにあるすたれた神社だ」


「え?まだあるの?」


「人里から離れてればそれほどばれにくいしな」


「おいまじかよ…」


三十分後


「なんか案外すぐだったな」


「ああ、なんかお前鍛えすぎたみたいだわ」


予定より早く神社に着いた。


「で、こっからどうすれば?」


「中に入る。そしたら五芒星の人か化物がいて案内してくれるはずだ」


「そうか。じゃあ行くか」


そうして俺たちは本殿の扉を開けた。するとそこには、人と化物がたくさんいた。おそらく受験者だろう。


「こいつらがみんなライバルってわけか」


「ああ、がんばれよ」


それにしても化物ってたくさんいるんだな。酒呑童子か教わったから存在は知っていたけど、酒呑童子みたいに人に近い化物とか、かまいたちや鵺みたいに動物感が強い化物、この建物に入ったのが不思議なくらい大きな化物もいる。


すると、どこからか


「受験者の皆さん。本日はお集まりいただきありがとうございます」


声が聞こえた。年齢も、性別もわからない。不思議な声だ。


「この声は、一体どこから…」


俺が警戒していると


「安心しろ。五芒星側のだれかだろう。きっと、契約してる化物がそういう系なんだろう」


「そうか」


「早速ですが皆さんには試験を受けてもらいます。まずは筆記試験です」


すると、上空から札が次々と落ちてゆき、それが地面に触れた瞬間、机と椅子になった。


「ほう、これも化物の能力か。ところで酒呑童子」


「なんだ?」


「なんでほかの受験者、こんなに動じないの?結構すごい子と起きてない?」


「いや、お前は一カ月しか勉強してないから驚くだろが、みんな半年は勉強してるしな」


「半年⁉」


「中にはお前みたいにすでに化物と戦ったる者もいる」


「そうなんだ…」


「では、化物の皆さんはこちらの扉から実技試験の会場のほうで待っていただき、受験者のみなさんはお好きな席にお座りください」


すると、また札が一枚、中心に落ちてゆき、それは地面に着くと扉になった。


「じゃあ、向こうで待ってるから、頑張れよ」


「ああ、がんばってくるわ」


酒呑童子は他の化物とともに扉から出ていった。扉に入りそうにない化物も扉に近づくと急に小さく吸い込まれていった。


「不思議なもんだな。さて、こっちも準備しますか」


近くの席に座ると、そこには一枚の紙が裏にしておいてあった。裏返そうとしても何か力が働いて動かない。ここまでくるともう俺も驚かないわ。


「では、皆さん準備できましたか?制限時間は五十分。よーい、スタート!」



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