最終話 エピローグ 2/2


「うわっ、すっごい人だね……っ!何口なにぐちから出るんだっけ?」


「西口。―――ああ、あっちの方だな」


 駅の改札口は多くの人達で賑わっていた。忙しそうに行き交う人達の間をうように、桜たちは今日の遠出の目的地であるセントラルホールへと足を向ける。


 二人が―――手を繋いだのなんて、何年ぶりだろう?

 お互いがはぐれない様にと、さりげなく握ってくれたケンタの手が嬉しかった。


 駅を出れば、目的地はもう直ぐそこ―――『小中学生の絵画コンクール』の入賞作品の展示会場が、二人の目的地。



「さく姉―――っ!けん兄―――っ!こっちこっち!こっちだよ―――っ!」



 会場に到着すると、直ぐに絵美ちゃんが二人を迎えてくれた。


「絵美ちゃん!久しぶりだね、元気にしてた?」


「さく姉―――っ!―――うん!今日は遠くまで来てくれて、ありがとう!」


 二人の姿を見つけた絵美ちゃんが駆け寄ってきて、桜に抱きついた。腕の中で嬉しそうな笑顔をみせている絵美ちゃんと会うのは、約一年ぶり。――――随分、大きくなった気がする。


「うん!絵美ちゃんの描いた絵が、入賞したんだもん当たり前だよ!すっごいね、絵美ちゃん!」


「うふふ…… 絵美、がんばっちゃった!」


「桜ちゃん!ケンタくん!―――お久しぶりね。二人共、遠くまでありがとうね」


 絵美ちゃんを追いかけるように声をかけてきたのは、絵美ちゃんママだ。そしてママの横には四歳になった弟のゆいくんと、桜たちを見てニコニコと目を細めている絵美ちゃんパパがいる。


「はいっ!お久しぶりです!今日はご招待いただいて、ありがとうございます!」


 ペコリと頭を下げると、桜とケンタの姿を見た絵美ちゃんママが大袈裟おおげさに目を丸くしている。もう、すっかりお姉さんとお兄さんになったのね―――!なんて涙ぐんでいる姿は、まるで久しぶりに会った親戚みたい。


 あの騒動―――「桜と絵美の遭難事件そうなんじけん」から、もともと仲の良かった山崎家と下崎家に加わって、絵美ちゃん一家も家族ぐるみの付き合いをするようになったのだが、そんな絵美ちゃん一家がお父さんの仕事の都合でやむなく遠方の大きな街に引っ越してしまったのは、一年ほど前の話だ。あの時は三家族全員で、オイオイ泣いたものだった。


 そんな絵美ちゃん一家から桜とケンタ宛に手紙が届いたのは一ヶ月前だった。中には絵美ちゃんが全国小中学生絵画コンクールに入賞したという嬉しい知らせと―――絵美ちゃんからの招待状、そして入場券が入っていた。


 そして二人は今日、連れ立って絵美ちゃんの晴れ舞台を見に来たのだ。


「けん兄ちゃん、こっちこっちぃ~!」


「お、おい――!慌てるなって、結。絵は何処にも、いったりしないからさっ!」


 早速ケンタは結くんに腕を引っ張られて、会場の中に連れて行かれそうになっている。そういえば―――物心ついた時から結くんは、ケンタにべったりだった。


 桜と同じで一人っ子のケンタも、弟が出来たみたいで嬉しかったのだろう。すっかり、いいお兄ちゃんが板についている。


「ふふっ―――相変わらずケンタにべったりだね、結くん」


「ちょっと結―――っ!今日の主役は私なんだからね!けん兄を独り占めにしたらダメなんだよ!」


 ―――ああ。ケンタにべったりなのは、もう一人いました。



  さっそく桜たちは絵美と結に連れられて、絵美が描いた入賞作品を鑑賞―――


  題名は…………


 『大好きな、お姉ちゃんとお兄ちゃん』


 その絵の中では、楽しく川遊びをしている四人の姿が生き生きと描かれている。その絵を観た瞬間、桜はじ~んと感動してしまった。四人で過ごした楽しかった日々が思い出されて、思わず目蓋が熱くなる


「…………ふふっ、絵美ちゃん。これはズルいよ、私たちの絵だったんだね」


「うん!だって、すごく楽しかったから、絵を描くとしたら四人で遊んだ時の絵がいいなって思ったの」


 そう言ってくれた絵美ちゃんの笑顔を見て、桜はこの子のお姉ちゃんになれて本当に良かったと思った。


 一頻り絵美ちゃんが描いた絵を鑑賞した桜たちは、他の受賞者たちの絵を鑑賞して回った。最初は四人一緒に回っていたのだが、どうしてもトイレに行きたいと結くんが騒ぎ出したので、暫くの間は桜とケンタ二人だけで絵を観て回ることになった。しかし―――じっくりとそれぞれの絵を観たい桜と、適当に観ているケンタとでは進むスピードが全然違う。気が付けば二人は、離れ離れになっていた。


「もう!ケンタのやつ、どこまで行っちゃったの!?せっかく久しぶりの二人っきりのお出掛けだってのに!」


 そうなのだ。


 実は桜は、この二人だけのお出掛けを密かに楽しみにしていた。ちょっとしたデート気分で、めったに履くことのないスカートまで履いて、精一杯してきたのに、ケンタのヤツからは一言もない。



 まったく、もう!


 こんな美人を一人っきりにするなんて、どういうつもりよ!



 などと一人でプリプリしながらケンタを探していると、会場の隅っこの方―――佳作の作品が並んでいるコーナーでケンタの姿を見つけた。


 ――――!あほケンタ発見!ばっかケンタ!あんたの目は節穴なのか!?などと、どやしつけてやろうと近付いていった桜だが、様子がおかしいことに気が付いて足を止めた。



 ケンタは一枚の絵の前に立っていた。


 そして食い入るように、ずっとその絵を見つめている。



 桜は暫くの間、少し離れた場所からそんなケンタの様子を観察していた。絵には全く興味が無いケンタにしては、珍しく真剣な面持ちだ。

 しかし、いくら待っていてもその絵の前から離れようとしないケンタの様子に、桜が不安になりかけた時だ。ケンタがポツリと、こう呟いた。



「―――みんな元気そうで、ほんとによかったっす」



 …………はぁ?



 ケンタはそれだけ呟くと、絵の前から離れていく。


「ちょっ、ケンタ待って―――!」


 桜はそう呼び止めようとして、声をかけるのを止めた。何故ならケンタの目の端に、光るものを見たからだ。



 …………泣いて、る?


 ま、まさかぁ~ ケンタに、そんな絵心あるわけ…………!



 動揺する桜を残して、ケンタの背中は消えてしまった。一人取り残されてしまった桜は、ケンタが温めていたその場所に立ち、その絵に視線を向ける。



 ―――――――ッ!



 最初に目に飛び込んできたのは、一人の少女だった。


 その少女は、最高の笑顔で空に向かって両手を広げている。そして、その少女の周りを三人の女性と一匹の大きな犬が、嬉しそうに歩いている。


 一人の女性は、鳶色とびいろの髪と瞳をふわりと躍らせていたし―――もう一人の女性は、長い黒髪を気持ちよさそうに風になびかせていた。そして最後の真っ白な髪の女性は、車椅子を押しながら楽しそうに笑っていた。


 そう―――両手を広げている少女は、車椅子に座っていたのだ。そして四人の周りを嬉しそうに駆けまわる大きな犬。



 そして、そんな四人と一匹が歩いているのは―――


 包み込む様に広がる、一面の向日葵ひまわりの中。





 題名 『仲間へ――』


 作 中学三年 金森いずみ



 目が覚めるような黄金色のその世界には、幸せがいっぱいに満ち溢れていた。




 ――――ありがとう。元気そうで、ほんとによかった。



 そんな言葉が、桜の心の中に浮かんだ。


 だけど何故、そんな言葉が浮かんだのか桜には分からなかった。何故なら、その絵の中にえがかれている人達に、桜の知り合いは誰一人としていない。


 でも溢れてきた涙が、桜に言葉をつむがせる。



「……ありがと、―――ありがとうね。元気そうで、本当に良かったです。

 でも―――ふふっ、みんなだけなんてズルくないですか?」


 

 その一枚の絵は、不思議と桜を幸せに満ち足りた気持ちにしたのだった。







             〈終〉









 ☆あとがき☆



桜「うえ――っん!虹うたさん、よがっだよ~!でも何が良かったか分かない~!」

  (ノД`)・゜・。


虹「うわ―――っん!桜ちゃん、私も何故だか嬉しくて涙が止まらないよ~!」

  ( ノД`)シクシク…


剣「おいおい―――お前ら、なに泣いてるんだ?」

  (;´Д`)


桜・虹「「うっさい、あほケンタ!自分も泣いてたくせに――!」」

  (≧◇≦)💦


剣「べっ!べべべべべ、別に泣いてなんかねぇし!!」

  Σ(゚Д゚)💦


桜「ぷぷぅ~~~~!わたし、見ちゃってたんだからね!」

  ( ̄m ̄〃)ぷぷっ!


剣「くぅ~~~~っ、言っとけよ桜っ!ほら、虹うたさん!最後なんだから読者の皆様に、ご挨拶しなくちゃだろ!?💦」

  (≧◇≦)💦


虹「あっ!う、うん―――そうだねケンタくん!💦 え――コ、コホン……!


 読者の皆様におかれましては、益々ご健勝のこととお慶び申し上げます。本日はお日柄も良く……カクカクしかじかでぇ……本日をもちまして二人の新たな門出の~」

(*''ω''*)カチョコチ…


桜・剣「「ちょ!ちょっと、まて―――い!結婚式か―――い!?」」

  (≧◇≦)💦


虹「えぇ~?違うの~~~?」

  ( *´艸`)


桜・剣「「♡だっだ――れが、こんなヤツと―――っ!?♡」」

  (////////)💦




 さてさて、皆さま。夫婦喧嘩は犬も食わぬと申します―――

 お邪魔はここまで♡


 もしよろしければ、☆と💗そして――作品とわたくし虹うた🌈のフォローで応援を、よろしくお願い申し上げます。(*_ _)ペコリ




     💗読者の皆様へ💗


 最後までページを開いて下さり、本当にありがとうございました。


 〈イチ〉へと続く〈ゼロ〉の物語は、いかがでしたでしょうか?

 0は1へと続き、1は2へと続いてゆきます。


 これからも続く物語を、どうぞ宜しくお願い致します。










 (=゚ω゚)ノ☆☆☆ 関連する作品ご紹介コーナー ☆☆☆



  この物語に関連する小説をご紹介させて下さい。



       【虹恋、オカルテット】

        (第一期 完結済)

作品へのリンク:

https://kakuyomu.jp/works/16817330668484486685


        🌼あらすじ🌼


 如月ユウ、金森いずみ、黒木紅葉、黒木青葉の四人が奏でるオカルト青春ラブストーリー。高校生になった紅葉ちゃんと青葉ちゃん、そして――いずみちゃんの恋と青春の日々を見逃すな!でっす(笑)


 交通事故で記憶を失ってしまった高校二年生の如月ユウは、真っ白な青春を過ごしていた。しかし、そんな日々の中でユウはある車椅子の少女と出逢う。そしてその少女――金森いずみの紹介で知り合ったのが、「城西の魔女」こと黒木紅葉と、その妹「氷雪の女神」こと黒木青葉だった。

 記憶を取り戻す為に「魔女と女神」の所属するオカルト研究部に入部することにしたユウだったが―――ユウを待ち受けていたのは、想像もしていなかったオカルトすぎる恋と青春の日々だった。


 

 そして、そして―――!


 「虹恋、オカルテット」通称――「虹オカ」の第二期の連載が、近日スタート!


 連載スタート:2月9日(日)


 投稿時間:AM10時10分


 その後の公開予定:毎週日曜日の同時刻

 (週一話のペースで、ゆっくり公開していきます)


 ※注意事項

 第一期から箱(本)が変わりますので、ご注意くださいね。



 みんなっ、せ~~~~~のっ!



 全員「「「「「「「「「 ぜったい、逢いに来てね~!! 」」」」」」」」」



   それでは皆さま、またお会いしましょう!


   またね―――!(^_-)-☆



   2025年1月26日   虹うた🌈

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『💛そのヒーロー達☆激カワ&激強?!💗💙』女子小学生達が異能力を駆使して神様とガチバトル!お狐様?関係ないよ!大切な人を傷付ける神様なんて、ぶっ飛ばしてやるんだからっ!☆虹恋🌈シリーズ-零の物語- 虹うた🌈  @hosino-sk567

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