ーヒミツの花園🥀ー あたら夜🌙物語シリーズ
虹うた🌈
プロローグ〈前編〉 オカルトラジオ📻♪
―――なあ、お前ら
随分前のスレになるが、オカルトラジオのスレを覚えているか?
ああ、そうだ。途中で書き込みが途絶えてしまった、あの伝説のスレッドだ。
これから俺は、そのスレの真実と、それに関わった人達の
私はネット上のとある電子掲示板にそう書き込みをし、スレッドを立ち上げると古びた日記帳を開いた。その日記帳にはびっしりと文字が書き込まれていて、何度も捲り返してヨレヨレになった紙からは、使い込まれた様子が伺い知れる。
私は栞が挟んであるページに視線を戻し、キーボードに向い文字を打ち込み始めた。
この話を語るには、そう―――
まず最初に書き込まれた、このスレの話からするべきだろう。
◇ ◇ ◇
なあ、皆にちょっと聞きたい事があるんだが……
ラジオの深夜番組で、”秘密の花園”っての聴いたことあるか?
・発信している局は不明、周波数は666。
・放送日時は毎日、深夜の2時~3時の間に放送されている。
・あと、ラジオパーソナリティで、
もし、聴いたことがある奴や何かを知っている奴がいたら、教えてほしい。
―――何でもいい。情報を書き込んでくれ。
・
・
・
………そうか、お前らでも知らないか。この板なら誰か知っている奴がいるかと思ったんだが、駄目か。うん?どうしたのかって?
いや、ちょっとな……。別に、書き込むほどの事でもないと思うんだが……。
………そうだな。
いつも刺激的な書き込みを読んでいるお前らからすれば大して面白い話とも思えんが、そこまで言うのなら俺の身に起きた、ちょっと変わった出来事を書き込んでみるとしようかな。面白い話って保証はしないが、それでも良ければ、まあ……ネタだと思って読んでくれよ。―――それじゃあ、書き込みを始める。
俺が初めて、そのラジオ番組を耳にしたのは、ある初夏の夜だった。俺はその日も大きな病院の横にある駐車場で、いつも通り仮眠を摂ろうと車のシートを倒して横になった。
時刻はAM2:15分頃。
俺はタクシーの運転手をしているんだが、夜7時頃から運転し続けて、ようやく客足が引く時間帯だ。再び客足が動きだす朝方まで、ここで待機を兼ねて休憩するのが俺のルーティンなんだ。
耳に寂しさを感じてカーラジオのスイッチをオンにすると、深夜番組らしく懐かしの昭和音楽を流す番組や、お笑い芸人がパーソナリティを務める若者向けの番組が流れてくる。
………だけど、どの番組も気分じゃないんだよな。
どれも今の気分とは少し違う気がして、俺はチューニングを何度か押して幾つかの番組を通り過ぎていった。そして―――とある番組で耳を止めたんだ。
その番組は若い女性のパーソナリティーが一人で切り盛りをする、『秘密の花園』という名の落ち着いた雰囲気の番組だった。背もたれに身を預けながら暫く目をつむって聴いていると、中々どうして興味深い番組だ。
今、気になっている時事ネタを分かり易く解説してくれたり、パーソナリティーのお勧めの観光スポットの紹介などは、まるで本当に出向いた気分になった。
選曲も抜群にいい。
今日は洋楽の日なのか、聴き覚えのある洋楽が何曲か流れていった。彼女は曲の紹介だけではなく、唄っているミュージシャンの紹介や曲を
だが、何より俺をこの番組に釘付けにしたのは、女性パーソナリティー「葉月」の声や喋り方だった。大人の女性が持つ、しっとりと落ち着きのある喋り方の中に若い女の子らしい華やかさも混じっていて……色気と可愛らしさが同居しているっていうのかな?一人、真っ暗な車内で彼女の声を聞いている内に、彼女が俺一人に話し掛けているんじゃないかって不思議な感覚になるくらい、俺の中で彼女に対する親近感が湧いてくる。とにかく、魅力的な声だったんだ。
『―――それでね。私、びっくりしちゃって……』
スピーカーの向こうの彼女が、楽しそうにクスクスと笑っている。いつしか俺は、仮眠を摂るのを忘れるくらいに、このラジオ番組……いや彼女の声に夢中になっていた。
『………今夜も、エンディングの時間になってしまいました。うふふっ、楽しい時間ってあっという間ですね。今夜も最後まで私のお話を聞いてくれて、ホントにありがとう。お仕事、お勉強、本当にお疲れ様です。でも……頑張ってるあなたは好きだけれど、あんまり無理はしないで下さいね。
――――それじゃあ、今夜はここで。また明日、絶対に逢いに来て下さいね♡』
本当に寂しそうな彼女が………「おやすみなさい」を言葉にした後で、優しいエンディングテーマが流れて番組は終ってしまった。彼女の声が耳に残ってしまった俺は、高まった胸の鼓動を治めようと外に出て煙草に火を
「めちゃ……可愛いやん、あの子」
その日から俺は、この深夜ラジオ”秘密の花園”を心待ちにしているリスナーの一人になったんだ。
◇ ◇ ◇
それから暫くの間、俺は純粋に番組を楽しんだ。彼女に逢える時間は心に癒を与えてくれる最高の時間だった。
あの放送を聴くまでは―――な。
『………すっかり夏ですね。もう月末か~…あっという間の一ヶ月だった。皆さんは、どんな日々を過ごしましたか?素敵な日々だったなら、私もホントに嬉しいです』
俺は、今夜もいつもの駐車場で、彼女の声を聞きながら車のシートに身を預けていた。番組はエンディングを迎え、彼女のしっとりとしたエンディングトークに耳を傾けている。
『私?私はね……実はとっても嬉しいことがあったんです。どんなことかって?ふふっ……それは恥ずかしいからナイショにしときます』
今日のエンディングトークは、いつもとは少し違っていた。彼女のプライベートを感じるトーク内容に思わず俺は、おいおい!まさか彼氏でもできたんじゃ……!?って苦笑いを浮かべながら聞き入っていた。
『それじゃあ、今夜はここで―――また明日、絶対逢いに来て下さいね♡』
スピーカーの向こうからは「おやすみなさい」の彼女の声と、優しいエンディングテーマが流れてゆく。
今夜の彼女も――――最高だった。
俺は一人、彼女の余韻に浸りながら目を閉じ、そのまま車のシートに体を預けながら、ゆっくりと眠りに落ちてゆく……。それが俺の日課だった。
だがその日は、先ほどのトーク内容が気になって中々寝付けなかった。すると、番組が終了して暫くの静寂が流れた後にスピーカーから異音が響いた。
『………ジ~ジジ………ジ………ジジジ………』
それは昔のオートチューニング機能が付いていないラジオを手動で調節している時の音に似ていた。俺が不快な気分になって、オーディオを調節しようと手を伸ばしかけた時だった。
『………ジジジ………ジ……… 聞こえますか?こちらは………』
スピーカーから急にオッサンの低い声が響き、伸ばし掛けていた俺の手を止める。
『こちらは………村、まだ村に残っていジジ………村から逃げて下さい!繰り返します。まだ村に…ジジジ………皆さんは直ぐに村から逃げて下さい!………今、私達は化物に襲われています!ジ………ジジ………の被害は甚大です!もう大勢の……ジジ………ジジィ………!
死人………ジ… 私も……ジジ…… 直に…… ジジィィィィイイ~!!』
音が割れていてよくは聞き取れないが、ラジオの向こう側は相当に切迫している様子だった。その様子に、俺は思わず音量を大きくしてゴクリと唾を飲み込む―――!
『誰が助け………っ!……… ジジ………こちらは…… …村です!私を含め、もう何人が生き残っているか分かりませんっ!誰か――――――ッ!』
遂にガラスが割れたような音が響き、続いたのは女性の甲高い悲鳴と、男性の争うような声!何かが倒れたような大きな音―――!
そして次の瞬間………!
先ほど話していたと思われる男性の……耳を覆いたくなるような断末魔の叫び声が車内に響き渡った……。
「オカルトラジオ📻♪〈後編〉」へ続く。
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