4年目第四節 アダマヘレヴの制作と薬物中毒者
アダマヘレヴの制作作業は順調なのか行き詰っているのかわからない。
まだ金属製のぐにゃぐにゃとした物体でとてもZoeちゃんの使っている立派な剣のようなものではない。
やはり創造主やクオリーラといった超高度な技術を持つ者しか作れないものなのだろう。
そう考えながらもひたすら熱しては叩いて剣先の整形をする...という工程を繰り返し行っている。
最近は内部の構造が完成したのか金色の内部を垣間見ることができるようにはなった。まだ外装はぐっちゃぐちゃだが...
時折Eudokiaが見に来る。その度に"こんなんでホントにあの武器になるのか?"
とか侮辱してくる。
うるさいなと思いつつくそ真面目に決められた工程を繰り返し行う。
節はじめの日であるが特に変わった出来事や襲撃はなく平和な1日だ。
記:5503年第四節1日
朝起きて作業場に向かう途中、いつも南側に置かれている例のポッドになにやら荷物が詰め込まれている。
いつもだと荷物が詰められ始めるあたりで武装を解除してポッドに乗れと通達が来るのだが来なかったのでZoeちゃんに聞いたみた。
どうやら試験的にサクリーンを使って買い出し業務をやるようで今回はSophiaが行っているみたいだ...
なんだか何か起きそうな予感がする。
今日も熱しては叩いてを繰り返す作業が続く...
最近原型種の面倒見れてないな...
記:5503年第四節2日
最近は平凡な、というよりつまらない日々が続く
朝起きて 朝飯を食べて ちょっと入植者と喋って作業場に引きこもって熱して叩くを繰り返す。気が付くと日が暮れているので日が暮れたら夜飯を食べてシャワーを浴びて寝るという日々の繰り返しになっている。
その影響で原型種の面倒を全く見ていない。
原型種が最近自室で寝なくなったので今日は作業前と作業後に原型種の面倒を見る事にした。
そうでもしないと飼い主のことを忘れられて今までの苦労が台無しになる。
作業が終わってから温泉を貸し切りにしてもらって3匹を極限まできれいに洗った。
温泉貸切って何か"文句"あるのか、独り言を言ったらすり寄ってきた1匹をモンクと名付けた。
記:5503年第四節3日
何やらホワイトボードに警告文が張られている。
"ディープブルーの薬を見つけたらすぐスーパーポッドに入れて施錠をすること!"
何が起きたのか医務のDaughertyに聞くと現場監督が興味本位にディープブルー配合の娯楽用の薬を摂取したみたいでその影響かディープブルー中毒になり冬眠状態になる事件が起きたみたいだ。
空き時間に現場監督がいる病室に行くと現場監督は真っ青になりながらも快適そうな表情でぐっすりと寝ている。
死んではいないみたいだが死んだように寝ている。
真っ青になったのはディープブルーの作用だ。
他の薬物中毒が摂取しないように例の警告文が張られたみたいだ。
原因は遠回しに自分...らしいが...
記:5503年第四節4日
珍しく2時に便意を要して起きてしまった。
起きるとなかなか寝付けない体質なのでちょっと散歩した。
散歩をしていると見慣れない人が夜間警備をしていた。
Murall というがっしりとした体格のハゲ。
なんだかどこかで見た事あるような顔つきだ。
ホモガキが襲撃してきた襲撃部隊の生き残りで治癒したら奇跡的に生き返ったらしい。ここのコロニーが快適だから入植するとこっちへ入植したみたいだ。
早朝に起きてMurallと喋っていたら生活リズムが狂ってしまった...
コロニー内の結婚式を行うという放送で起きた。
結婚式会場はコロニー内で最も豪勢な客用のもてなし部屋。
もちろん全入植者が集まるのでキャパオーバー...部屋はぎちぎちだ。
クーリンの茶髪のヨネダとレイが結婚した。
入植者は喜んでるが結婚式会場が狭すぎるのは問題だ。
記:5503年第四節5日
生活リズムが狂った影響か眠れない。
ふと放送が入る。
"メカノイドの襲撃だよぉ...万が一のために避難と南側に徴兵してね"
いつもの戦線エリアに行くと見知らぬシルキーラが入植している...
濃い茶髪、緑の瞳...オリアンが威嚇している。猫みたい...
"あぁ、初見だな。アタシはラシェル。アレテイア教会の奴隷だった者だ。よろしく"
なんだかダウナーな雰囲気の変わった入植者が入った。
アレテイア教会...亜人工業に並ぶ高度な文明を持つ派閥だ。
次に制作を頼まれているまたまためんどくさそうな設計をしている強力な武器、"シェフェットレールガン"もここが開発したとされている。
その派閥出身ということは中々博識そうだ。
朝、Zoeちゃんからポッドに乗るときの注意点とかをいまさら聞きだされた。
どうやら搭乗しているSophia連絡が取れずに心配になったようだ。
自分が搭乗しているときはこっちからの連絡は一切出なかったくせに...
食料と燃料、着陸時の衝撃さえ注意すれば何とかなると説明した矢先に連絡が入る。
"何とか到達したけどほとんど価値がつかないよ..."
Zoeちゃんに何を積載したのか聞くとバイオコードで使い物にならない武器類や蛮族が使ってた古典的な武器。
これじゃ全く価値がつかない趣旨を伝える。
Sophiaが餓死しないか心配になる。
二人で不安がっているとラシェルが割って入る。
"低品質な古典的な武器といいバイオコード付きの使えない武器類、そんなタダの鉄くず、引き取ってくれるだけマシさ。"
言い方は悪いが適格な言葉であった。
Zoeちゃんは彼女の略歴書を見ていたみたいであったが性格に難がありそうだとぼやいていた。
昼寝をしてしまった…
夜、第一段階の宇宙船開発の研究が終了。
ここで宇宙船にAIチップが必要なことが分かったらしい。
AIチップの場所は同盟国から教えてもらうしか方法がなく、通信機を使ってラットキンのアイリスがどこからか聞きだしている。
久々に遠征だ。どうやらAIチップの場所が特定できたみたいでそのAIチップを摂りに行く為に武装部隊が必要みたいだ。
なぜ自分が巻き添えに...面倒だがPaigeがいるので話相手がいるからまだマシか。
夜に出発しどこかでテントを張って休憩し明日の夜にはAIチップの場所に到達できるだろう。エルフたちは歩行スピードがかなり速い...いや常に早歩き位の速さで歩くのでついていくのが大変だ。
記:5503年第四節6日
今回の遠征コースはきつい。
山岳の未開拓の岩山のような部分もあるきつい参道をのぼるルートだ。
自分だけスーパーポッドを使えばよかったと後悔している。
エルフたちの体力であれば大丈夫なルートであるが自分の体力ではかなりきつい。
原型種連れてくるべきだったと後悔した。
途中途中エルフたちに補助してもらいながらもやや遅延ぎみで目的地に到達した...
しかし目的地には前哨基地があった。
相手はウーンドワード将軍家、ラビのガチ武装部隊だ。
対エルフでも危険度が高い連中だ。
火の海にすれば問題ないと思い容赦なくラーヴァランチャーをぶっ放す。
火の海になったところはラビが迂回するようになった。
しかし問題が起きる。
使い慣れていないラーヴァランチャーが暴発した。
エルフたちや自分はもろとも火だるまになった。
エルフたちから怒りのげんこつを何発も浴びた。くそ痛い
トリガーに指が引っ掛かりさらに1発発射されてしまう...
建物は全焼し崩壊した。ラーヴァランチャーで放火した火災は収まる気配がなかったのでAIチップの捜索は翌日にすることとなったがSanfordはバリアスカーフを装着し崩落した火災現場をわざわざ見に行っている。
寝静まったころにSanfordが大声を上げる
に"ーし"ーや"ーま"ぁ"ぁ"ぁ"
Sanfordからきついビンタを1発食らう。
やけどに響く1発だ。
これでラーヴァランチャーが使えなくなるだろうなと確信した。
記:5503年第四節7日
やけどで全身ひりひり、エルフからの集団げんこつで全身がズキズキ痛む。
そのなか自力で下山させられた。
エルフたちは全員やけど、自分があんな愚行に出なきゃあんな風にはならなかった。
好意を寄せていたPaigeは一切声をかけてくれなくなった。
エルフたちは自分らが持ってきた薬草を傷口に練りこんで自己治療をしてある程度回復したが自分は例外だ、あちこちヒリヒリズキズキ痛む。
夜中に島田ハウジングに到着したが...地獄のような状態になっていた。
外郭の畑が火の海になっているのだ。
エルフたちにまたお前かと問い詰められたが必死に違うと言い切った。
エルフたちが消火活動に必死になっている隙に自分の部屋に逃げ込んだ。
ラーヴァランチャーがあんな危険な代物だとは思わなかった。
申し訳ない。
記:5503年第四節8日
どうやら病室に運ばれたみたいだ。けがの具合がデイ部よくなったがやはり打撲した痛みは残っている。
昨日の大火災は岡山家の襲撃による放火が原因だ。
自分ではない事をエルフたちが知ったのか問い詰めた事については謝ってきた。
病室を出るとラーヴァランチャーがないことに気付く。
Zoeちゃんからラーヴァランチャー使用禁止を通達された。
そりゃエルフたちを燃やした上でAIチップを損傷させたんだからそうなるわな...
ラーヴァランチャーは許可した時のみ使う方式となった。
やけどや打撲の傷みがひどく当分の間はアダマヘレヴの制作作業は無理そうだ。
リハビリがてら散歩をしていると墓が増えていることに気付く。
ワンダル・マクネアー(24)
聞いたことない入植者名だ。おそらく奴隷商から買ったサクリーンだろう。
入植して数日で死亡するなんて運のない人だ。
エルフを燃やした事はもうコロニー中に広がり半ば犯罪者扱い。
最近居心地がいいと思ったが今は最悪だ。
ストレスの発散先が原型種と戯れる事くらいしかなくなった。
しんどい。
記:5503年第四節9日
今日からアダマヘレヴの制作作業を再開する。
やけどとケガで数日間動けなかった分を取り戻したいところだが焦りは禁物、一つのミスが失敗に直結する。
作業を開始したか否や外からガラガラとすさまじいクラッシュ音。
放送が流れる。またクーリンシャトルが墜落したらしい。
救助活動は無視しそのまま制作作業を続行した。
エルフからの風当たりも悪くなったからにはコロニー内でだれか味方をつけたいものだ。
記:5503年第四節10日
冷蔵庫脇に新たな共同間が設置されたみたいだ。
前の節で既に完成していたようだがコロニーの北側なんて滅多に行かないので気付かなかった。
完全な和室で土足禁止...にもかかわらず土足で上がられた痕跡がある。
既に薄汚い部屋と化している。
部屋の中にクーラーが見当たらないが隣が冷凍庫だからか部屋は異様なくらい寒い。
中には大量の武器の棚と電源の入っていないコタツが2台、隅の空間にはバッテリーが6台直列に配置されて奥には大きな画面のテレビ。
そして部屋の中心には何とも不気味な巨大なろうそく(電気式)
自分が入った時には誰もいなかったが汚れ方からして結構入植者や来訪者が出入りしているのかもしれない。
キャラバン隊同行禁止になったのでしばらくの間はアダマヘレヴの制作に集中できそうだ。
記:5503年第四節11日
Zoeちゃん達から一報が入る。
荷物が多すぎて移動ができなくなったらしい。
Eudokiaとエーヴ、その他数人が援助に向かった。
あれこれあってSanfordの機嫌がものすごく悪くなったらしい。
機嫌を戻す方法を戻るまでに考えておいてくれと連絡だ。
Sanfordはビールが大好きということは知っているのでビールで気を紛らわせたらと提案しておいた。
記:5503年第四節12日
午後、いつも通りにアダマヘレヴの制作作業をしていると外から何やら物音が聞こえる。
Eudokia達が戻ってきた。
大量のエルフ装備と古代エルフの死体を2体持ってきた。
事情を聞くとどうやらエルフ神聖王国にキャラバンが襲撃されたらしく、Zoeちゃんが襲撃部隊をアダマヘレヴで容赦なく蹴散らし、それが原因でSanfordの機嫌がものすごく悪くなった様だ。
持ち帰ってきたエルフ神聖王国装備の状態は死体の液体が染み込んだ程度で状態は悪くはなく修復すれば使える状態だ。
大量の貴族衣装や軽装アーマー、タイツスーツを洗濯室に運んで洗濯機を一斉稼働させた。
ピッチピチのタイツスーツをムッチムチなエルフが着ている...想像がはかどる...
洗濯機を一斉稼働させるのは久々な気がする。
その間にエーヴとMurallが死体にリザレクトシーラムを使用し蘇生した。
古代エルフ派閥種とは異なりすぐ逃走しようとしたがすぐに囚人部屋に入れた。
これは勧誘するのに時間がかかりそうだ。
記:5503年第四節13日
アダマヘレヴの制作作業はある程度終盤だ。
剣先の形も整いだいぶ剣っぽい形になった。
もう振り回せば実用できるレベルであるがまだ装飾やクオリーラ用の回路などが構築できていない。これではただの屈強な剣だ。
ここで手を抜いたら不良品が出来上がって最初からやり直しになる。
またZoeちゃんから連絡が入ったみたいだ。
どうやらまたエルフ神聖王国にアンブッシュされたらしく同じ結果になりさらに機嫌が悪くなったみたいだ。
ビールをキンキンに冷やしておくとかAdeodataが言ってたがホントにビールで気を紛らわせる気でいるのか...
記:5503年第四節14日
節終わりに完成させてやると奮い立った。
朝から仕上げの作業をする。
特殊素材でできた超鋭利な刃先に気を付けつつ柄の部分の仕上げと回路の接続を行っていく。
回路部分はある程度モジュール化した上で少々回路に細工を施した。
Zoeちゃん曰くビーム打つ時のチャージの時のエネルギーの瞬間的消費が激しくかなり疲れると言っていた。
クオリーラのエネルギー回路は電気工学に非常に似ている。
独学ではあるが電気工学の知識を使い瞬間的なエネルギー消費が少ないように回路を改良しておいた。
うまく機能するかはわからないが...
夕方、ついにコロニー内製のアダマヘレヴが完成した。
とてつもない長い時間がかかった。
明日Eudokiaに手渡して慣らしをしてもらおう。
今日は平和であったものの記憶に残る1日になった。
Eudokiaが武装化すればある程度コロニーの安全がある程度保障できるだろう
記:5503年第四節15日
にしやまのRim生活記 にしやま @Nishiyama5610
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