4年目第三節 激しさを増す襲撃、気怪現象
朝からシルキーラ族のオリアンが課長に何か猛烈に説得している。
"絶対に使わないほうがコロニーの為になる"とか言っていた。
ハイテク派閥の亜人工業に居たことがある彼女が反対するほどのもの。
そんなに危険なモノを作ろうとしているのか...
午後、Eudokiaの拉致によってほぼ敵対していると思われるエンテレケイアが来訪。
いつものようにリーダーのアイリーンも一緒だ。
彼女はここで宿泊するのがお気に入りになっているみたいだ。
夕方、けがをした襲撃者の完治が終わったのか笑顔のUNEIの人達はニッコニコでコロニーを後にした。
敵対している派閥の人間を治癒してもどうにもならないと思うが、何か賭けがあるのだろう。
接客や来訪客への会話は自分は基本的に禁止されているがエンテレケイアのアイリーンが興味を持っているのか話しかけてきた。
どうやら原型種やレクイーン関連の話だったみたいだが話が難しく理解ができなかった。
とりあえず原型種はニアメーア達が手懐けて自分に押し付けてきた趣旨と調教というよりしつけの方法を軽く説明しておいた。
アイリーンは自分のペットに興味深々だ。
お偉いさんと話すのは非常に疲れる
記:5503年第三節1日
早朝から現場監督が複雑そうな物を組み立てている。
エンジンのついた金属製のテントのような物体だ。
現場監督に聞くとスーパーポッドという乗り物らしい。
課長の指示で作ってるから用途はわからないと言っていた。
貨客混載の空飛ぶ車...とは聞いているみたいだ。
おそらくオリアンが昨日猛烈に説得していた危険な装置だろう。
完成し燃料を投入されたスーパーポッドはポンコツ王ことEudokiaが尾根自治体に買い出しを兼ねて試運転をするようだ。
Eudokiaといくらかのシルバーを載せたスーパーポッドは中はほぼ満タンでEudokiaが少々窮屈そうだった。
エンジンが起動し垂直に離陸まではいいものの、数十メートルをゆっくりとホバリングしながら移動...早歩き位の速さだろうか、滅茶苦茶遅いのである。
偶然にも隣にオリアンがいたがオリアンは"やっぱりダメだろ"みたいな妙な表情をしていた。
夕方、隼人がAdeodataに告白をしていたが拒絶されたみたいた。
隼人はがっかりとしている様子だ。
コロニー内で恋愛、いいのやら悪いのやら...
記:5503年第三節2日
(3日の日記が書かれていない)
最近日中が暑すぎるので昼夜が逆転している。
昼間はクーラーの効いた部屋の中で寝て夜間の涼しい時間帯に作業をする日課が多くなった。
朝、キャラバン隊の交渉係としてスーパーポッドに乗って買い出しに行ってくれと頼まれたが眠い時間帯なので断った。
あんな狭いポッドなんて乗りたくない。気分が悪くなる。
なんだかEudokiaの機嫌が珍しく悪い。
Eudokiaがぷんすこしながらキャラバン隊を組んで出発した後もなんだか女性陣が イライラしている様子、サイコドローンかな...
数時間後、連絡が入る。
どうやらEudokiaが何を売買すればいいのか判断ができなくなったようだ。
Sanfordと自分で通信機越しに指示を出す。
最近クーリンたちがエルフ神聖王国の個体を撲殺した影響かSanfordの元気がないのでビールを買ってくるように指示を出した。
Eudokiaはどうもポンコツっぷりが最近露呈している
記:5503年第三節4日
昨日の夜からどうも頭痛がして眠れない。
どうやら男性向けのサイコドローンも起動しているみたいだ。
女性向けのサイコドローンは結構強力なのかあのLeach姉貴が緊張性ショックで倒れたみたいだ...
男性用サイコドローンはクエストによって設置されたらしくZoeちゃんとエルフの部隊がサイコドローンを壊しに出発した。
自分たちが苦しくなるのに誰がこんな馬鹿げたクエストを受託したのだろうか...
記:5503年第三節5日
頭痛がして眠れない。
朝、頭痛がすっと収まった。
おそらくキャラバン隊がサイコドローンの装置を壊したのだろう。
これで平和になるはずだ。
昼前、買い出しの要請がきた... スーパーポッドで行くみたいだ。
しかもそこそこ遠い海峡野営地イヤだよあのポッドで何時間も移動するのは...
前回拒否した分今回は断れなかった。
満載のスーパーポッドに押し込まれ轟音とともに飛び立つ。
シートベルトを硬く締められ身動きもほぼ取れないまま何時間も同じ体制で移動することになる。
ただただ10センチ四方の小窓からゆっくりと動く地平線の流れを見る他何もすることがない。
頭がおかしくなりそうだ。
記:5503年第三節6日
酷い轟音の他足が痛み始めた...
どうやらエコノミークラス症候群になったみたいだ。
必死に足を動かすが動かせない。シートベルトはまだ拘束状態。
そろそろ外に出たいものだ。
コロニーと電話でもするかと受話器を取っても誰も返答しない。
ある意味拷問に近い体験だ。
飛行開始から約15時間、1か所目の地点の海峡野営地に到着した。
着陸はかなり乱暴でドアが衝撃で開くレベル...腰が砕けるかと思った...
ここはまだ敵対で取引ができないのでシルバーと手紙を置いてすぐ出発。
つぎの目的地はエンテレケイア管轄の鼻区、さらに9時間飛行することになる。
シートベルトの拘束さえなければ多少は楽だが...
これ体格の大きい種族が乗ったらかなり大変だろう。
9時間後、大きな衝撃と共に鼻区の正面に着陸。
衝撃でドアが開くのはご法度。
鼻区のクオリーラたちやアイリーンが心配して駆け寄るがこれは仕様だというとそそくさと作業に戻る。
人工種族の中でもクオリーラは特に美しい、この派閥の都市に来ると目線に困る。
どこもかしこもスタイル抜群の美少女だらけなのだから。
来たところで大したものも売っていない状態、思い返してみればここの都市は常に食料不足や資金難になっていると聞いていた。
海峡野営地で殆どシルバーを使ってしまった、いや、置いてきたので取引はできないまま無駄な燃料を使うだけという結果になった。
夜、コロニーに無事に到着しシャワーを浴び寝床に就く前に
緊急徴兵だ。
男子制支配戦線「ドィスバ」から襲撃だ。
規模のなかなか大きいみたいで戦闘のできない入植者以外は全員南側に招集とのこと。
足がむくんで痛い。
原型種をたたき起こし指定された場所に向かう。
結局Zoeちゃんが無双して終わったが。
日を跨ぐ深夜の時間帯に襲撃してくるのはやめてくれ。
記:5503年第三節7日
夜間の襲撃の影響で寝坊し15時近くまで寝てしまった。
また昼夜逆転しそうだ。
夕方散歩をしているとモヨの死体の近くに危なそうな薬がボロボロ落ちていた。
3おじ達が摂取するとマズそうだったので報告をあげて置いた。
夜、Eudokiaがモヨの死体を持っていた。
がそれは死体ではなかった。
Eudokiaが余剰になったリザレクトシーラムを試しに使ったそうだ。
まだ完全に回復はしていないものの仮に回復しこっちに入植すると3人目のモヨかつ貴重な医術を得意とする入植者になりそうだ。
30代のモヨの女性で仮面を外してみると顔が結構童顔でかわいい。
最近自室の祝言が洗濯物であふれている事をSanfordに伝えた。
彼女は深刻そうな表情をしていた。
散乱している衣類はほとんど人間用だ。
寒冷地用のパーカーや防寒着が多い。
ここは熱帯なのでそんな服はキャラバン隊で使うくらいしかない。
エルフや人工種族は体格上人間の服を着ると一部箇所のボタンが飛んだりへそが見えてしまったりするので着用できない。
クーリン達は自前のクーリン仕様の服しか着ない上で損傷すると自分たちで直して使っている。
消去法で考えると着られるのは熱帯地向けの一部シャツかつ少ない人間とモヨのみという状態。
洗濯物のほとんどは殆ど襲撃者の死体からはぎ取った衣類。
襲撃される度に洗濯ものがネズミ算方式で増えていく。
だいぶ問題だ。
記:5503年第三節8日
コロニーではまた別の問題が起きていた。
放置していた家畜スペースが満タンになってしまっている事だ。
餌をとにかく置いてあるだけの状態であったが何があったのか鶏が大量に繁殖。
ロバもキャラバン隊で使うとはいえとんでもない数になっている。
増えすぎた鶏は卵を産むメス以外はうるさいだけの雄鳥だ。
鶏をどう処分するかが問題になっていた。
いちいち屠殺して解体するのも癪らしい。
Eudokiaに"雄鳥をそのまま焼き鳥にしてしまえばいいのでは"と提案したところ
>>>なんと通ってしまった<<<
北側の余ったスペースに燃えない素材でフェンスを作るように頼んだ。
Zoeちゃんが少々乗り気ではなさそうだったが...
記:5503年第三節9日
寝坊した。昼過ぎに起きてしまったが誰も怒らなかった。
15時過ぎ、見慣れないキャラバンが来訪した。
神聖キツネ連合のキャラバン隊だそうだ。
陸田が呼んだらしい。
キャラバン隊は武装しているものの結構装備がボロボロ。
聞いた話によると古代エルフにアンブッシュされたみたいだ。
古代エルフの肉要らない?とか言われたけどそんな物騒なものここのコロニーに置いたら何が起きるかわからない...(恐怖)
夜、シャワーを浴び終わったあとEudokiaから買い出しに行ってくれと言われた。
またスーパーポッドで行くらしいが今回は前回の海峡野営地より倍近く遠いエンテレケイアのカードゲーム村に行くらしい。
何時間かかるのやら...
記:5503年第三節10日
(11日はスーパーポッドに拘束されており日記を書くことができなかった)
酷い目に遭った、まさかまる1日以上かかるとは思わなかった。
ポッドの轟音に慣れ足はむくんで痛くなるものの睡眠をとることができるようになった。
慣れって恐ろしいね。
着陸の衝撃で目が覚めると周りは寒冷地帯
一桁台の気温だろう...非武装かつダスターコートとシャツ、軽装備のズボンとスーパーポッド搭乗に支障がない軽装備で来てしまったので滅茶苦茶寒い。
ここでラーヴァランチャーがあれば多少は温まれるのに...
着地の衝撃でディープブルー配合の薬が壊れていないか心配であったが無事であった。
早速暖房の効いた屋内に案内してもらい取引、少々不穏な表情をしていたがEudokiaからの取引依頼というと納得してくれた。
"あの王様まだこの惑星にいたんだ、消息不明になって新しい聖王が派遣されたって聞いたから。それにしてもニンゲンなんて珍しいね。派閥は...エンテレケイアじゃないのか...裏切ったのね、あの王様"
"だけどウチ、今ちょうど資金難で買い取れないんよね"
倉庫を物色させてもらい非常に品質の良い新品のエルブンコンパウンドボウや変なモノを発掘した。
"メカノイド向け オーバードライブモジュール"
それらと薬を物々交換を行い無事取引が成立。
"あのおマヌケ王によろしく言っておいてね~商人さん"
なんだかEudokiaの名前を出したらからかわれるようになった気がする。
少々燃料の残量に不安があるが島田ハウジングにもどるようにオートパイロットを仕掛けた。
記:5503年第三節12日
早朝、大きな衝撃と共に見慣れた光景が広がる。島田ハウジングに到着したみたいだ。
足がむくんで動けない...すると細い腕が強い力で自分を引っ張る。
赤い瞳のセミショートボブの金髪のかわいい顔をした古代エルフだ。
"自己紹介がまだだったね。私はMaya...エルフの凄腕狩人、ここに入植させてもらったの...よろしくね"
あとから聞いた話だがMayaは古代エルフの元カシラだ。恐ろしい。
物々交換で手に入ったエルブンコンパウンドボウはLeach姉貴が使いたがっていた武器だとうっすらと記憶があったのでLeach姉貴に渡した。
"覚えてたんだ...ありがと"
ちょっとだけLeach姉貴の顔が優しい顔つきに感じた。怖いけど。
現場監督に例のオーバードライブモジュールを渡す。
現場監督は不穏な表情をしながら"事故起きても保証しませんよ"と言い、研究室に向かった。
足のむくみが気になったので医務室に向かうとMarinaがいた。
可愛い顔してるのに何で仮面付けてるの?と聞いたら
前の派閥の方針でそれが癖になってるとの事だ。
診察結果はタダの血行不良によるむくみだった。
動いていれば治るだろう。
スーパーポッド、慣れてきた自分なら乗り方や衝撃など耐えられるけど慣れていない入植者とか弱い入植者が乗ると事故になりそうだ。
記:5503年第三節13日
久々の島田ハウジングの自室で睡眠できた。狭いとはいえ寝心地が最高だ。
原型種は言葉をしゃべらない、ギシギシ言っているがある程度こっちの言葉は理解しているみたいで主人に従順だ。毎日ではないが汚れない程度に体を洗ってあげることもしばしばある。そのたび自分の体が性的に刺激されるのがあれであるが...
原型種は胸の先や股間のアレなど特定の部分が無いものの体を洗ったりするときはスタイルの良さや胸の柔らかさを感じたりできる。あのスタイル抜群のクオリーラや地味に体形の言いニアメーアやシルキーラの源流の種族なだけある。
流石に原型種とはヤれないが...
仮にこの惑星Rimから脱出するとなるとこの原型種たちをどうするか悩みどころだ。
何気に愛着があるし連れて帰っても不気味がられる以外が使いどころがありそうだが...
地球に人工種族が流れ込んできている時代、連れて帰るのも可能なのかもしれない。
宇宙船の容量の問題もあるし島田にでも相談してみようか悩みどころだ...
記:5503年第三節14日
日食が映える朝...作業場に入る前に南東の方向からものすごい音が聞こえた。
数分もしないうちにコロニー内に放送が入る。
"汚染された船の一部が南東に落下しました。近づかないようにお願いします"
Zoeちゃんが防護マシンの無力化と撤去に急ぐ。
外が騒がしいと集中できない。失敗の原因になる。
ここ最近はポッドでの買い出しのほかに重要な任務を任されている。
Eudokiaの専用武器、アダマヘレヴの制作だ。
自分はもともと製品加工の工場に勤めていたのでそういった知識が少々ある。
コロニーの中では最も最適とされて武器の作成を任された。
いや、もっと最適解な人物はいたかもしれないが...
めちゃくちゃ複雑な設計図と超高価な原材料...失敗は許されない。
とはいえもう2週間ちかく原型を加熱しては叩いてを繰り返しているが
まだ半分の工程も終わっていない。完成まで1週間はかかるだろう。
仮に完成したとしてもたかが人間が模造したものなのでハッタリだけのものが完成するリスクもある。
リスクも犯しながらもこのくそメンドイ工程を繰り返さなければいけないとなると意地でも完全品を完成させたいものだ。
アダマヘレヴを制作するという重大任務もそうだが最近は宇宙船の研究も開始したようだ、宇宙船の研究は今まで以上に複雑な工程が多く時間を要すものらしい。
入植者全員が研究を少しずつ進める方針が出されたが頭の弱いエルフたちがどうしようもなさそうだ。
自分は例の重大任務があるので研究には参加できないが早いうちに宇宙船研究は終わってもらいたいものだ。
宇宙船研究が終われば宇宙船を建設して反応炉を起動させ、準備が整ったら地球にトンズラするだけ、簡単なようで簡単じゃない気がする。
先の見えない日々が続きそうだ。
記:5503年第三節15日
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