乙女おとめ

自分は何かとんでもなく恐ろしいモンスターに詰められて、気絶してしまったようだ。

夢の中でまどろみながらも、微かな力で握り続けていた記憶の断片を脳内で無意識に反芻させながらゆっくりと意識は覚醒していく。

それでも寝起きで白く濁った脳内に溺れていると、それはもう衝撃の人物と目がバッチリ合ってしまった。

咄嗟に開きかけていた瞼を閉じる。

頭がさっきより重くなってくのが明確にわかる。

それでもこれはきっと悪い夢だと信じてもう一度横になろうとすると、首筋に感じるのは人間の体温と酷似した感覚。

背筋を冷たい汗が伝っていく。

まさか、と思い横を恐る恐る覗けば、そこにあったのはりっぱな太い太ももだった。

「あら、ようやくお目覚め？なんてとろいのかしら。もう私の胃は空っぽよ。」

ああ、この世で一番最悪な目覚めだ。

そして不一女（ふかずめ）　嬢（じょう）の初膝枕はされる側で終わったのである。

「見なさい。キミのためにずっと膝枕しっぱなし、正座しっぱなしで私の華凛な御足に痕が四か所もできた。こーれはお高くなるわね。」

「ぇ、何が.....ですか？」

「そこはキミ、慰謝料に決まってるじゃない。」

スッと細い人差し指と親指で硬貨の形を作り出す『おとめ』を見て、私はこの世に産まれ落ちて初めて「自殺」という文字が脳内に浮かび上がってきたのである。

コイツやべぇぞ！

何故、

勝手にコイツのテリトリーに連れてこられ、勝手に膝枕をされて、私が慰謝料を支払わなければいけないのか。

ふつふつと湧き上がる怒りという感情に、嬢は慣れていなかった。

それでも、まだ理性は働いていたのか

一刻も早くコイツのもとから離れようと体に力を入れた途端＿＿＿＿＿

「は......？何してるん「うるさいわねぇ、キミの脳内。キンキンキンキン....鼓膜が痛いわ。」

「さっさと黙れ、って言いたいわけ。」

「口閉じなきゃキスできないのよ。ご存じ？....それとも

舌、入れてほしいわけ？」

そのとき譲はなんとなく、なぜ『おとめ』が女生徒たちから評価が高いのか、分かった気がした。

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「どう？私の全部が口付け（キッス）に詰まっていたでしょう？」

「は、はいぃ…蕩けましたぁ…」

「もう、キミは私の虜だから。」

⭐︎___ 嬢、堕ちる！！！