乙女おとめ

廉堂文

第1話 『おとめ』と『じょん』

「え、嬢はまだおとめ先輩と付き合ったことないの?」


「ないけど、誰その『おとめ』って人。」


「え〜知らないの⁉︎残念だね〜!」


「残念って…。そんなにすごい人なの?どんな人なのか気にはなるけど。」


「そっか〜、知らないのか〜」


「なんなのよ、教えなさいよ!」



桜舞い散る華の季節、乙女たちは恋に心を奪われている。


ここは知る人ぞ知る女子校、私立天園学園。

当然、女子校には男子はいない。

しかし、彼女たちは恋に燃え、華を咲かせるであろう年ごろの乙女。

では、誰に恋をぶつければいいのか_____


こうして今日も百合が咲く。



結局、どんな人なのか教えてもらえなかった。

なんなんだその「おとめ」って人は。人気みたいだけど、可愛いのかな。

いろんな人取っ替え引っ替えしてるとは耳にしたことはある。

でも女子が女子で遊びまくってるって…、変な話だ。

できることならお目にかかって見たいものだなぁ。

おとめちゃんにさ。



「ご機嫌麗しゅう、お嬢さんレディー


ああ、

向こうからやってきたみたい。私って運がいい。ほんとうに。


「あら、やっぱりキミが噂の子みたいね。確か、『じょー』....いや、『じょん』だとか言ったかしら。」


やっぱり訂正。私って全然運が良くない!

名前間違えてるし!私の名前は「嬢」だし!

ていうか、『じょん』って…何その犬みたいな名前!人間につけれるものではないと思う!!

しっかしまぁキャラが濃いよ!

だってもう声が濃い。言ってることも濃いけどさぁ!


でも、...ああ、スタイルいいなぁ。

顔は、別に特徴的でもないし、美人!可愛い!って感じでもないけれど。

強いて言うなら、整えられた不細工…、もしかしてとんでもなく失礼?

まぁ、平凡顔の私が言ったって説得力なんてないけど…。


「ふーん。キミ一年ってカンジ?どうりで青臭いと思った。先輩に挨拶されても返してくれないのね。ああ分かった性格悪い感じね?」


そういうのって初対面でぶちかましていいモノなの?

え、こういう場合ってなんて返せばいいの?

あなたも大概ですよーって言えばいいの?

助けてドラ●もん…!


「あーーらやっぱり、図星な感じなのね。ま、見た瞬間から分かってたけど。私の目はごまかせっこないのよ。だってほら、吊り目にとんがった顎。ひん曲がった口。カッサカサで潤いの『う』の字もない唇。その目は私のドコを見てるのかしら。そんなに舐め回すように見るなんて、卑猥ね。私たち初対面のハズなんだけれど。.....そうね、なんとか言ったらどうかしら。ああ、不愉快!こんなに腸が煮えくり返りそうになったのは三度目!そうだわ、そのひん曲がった口を私がキスでもして舌でムリヤリこじ開けて差し上げましょうか?」


狂ってる、キチガイだ。

こんな人のどこがいいんだよ。

怖いよ、何なんだよ。帰りたいよ。

助けて今こそ防犯ブザーが必要な時。

怖くて口が開かないよ。引っ付きすぎて開けようとしたら唇の皮剥けそう。

口が開いたところでなんて言えばいいの?

ヤバい、思考がまとまらな過ぎて倒れそう。

意識が…


「あら、挨拶も返せない性悪小娘のくせに一丁前に気絶かますなんて、やるじゃない。ただの負け犬にしては爪痕残せたんじゃない?浅すぎてどこを引っ掻かれたのかあっという間に分からなくなったけど。あら、そういえば、今日は両親がいなかったんだっけ。キミ、運いいよ?おめでとう、初対面のくせに素晴らしい美貌とスタイルをお持ちのおとめ様の部屋に入室できるわよ。泣いて喜べ。」




天園学園一年 不一女ふかずめ じょうは、初対面の『おとめ』に抱きかかえられた。





⭐︎______私ってばどうなっちゃうのーーーー!!!!????

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る