第31話 納得④

 あ~、なんで自分の理想の休日なんて言ってしまったんだろう。別に、タイプの女でもないのに。しかも後ろ姿なんて、マズいよな。


 沢村と会って、話をした数日後、なぜか、俺は後悔をしていた。話をしている時は夢中になっているので、何でも言ってしまっているが、後からあの話題ってどうなんだ?あの返事って大丈夫かと、ひたすら、反省会はんせいかいが始まった。まぁ、年上の人と話をして、盛り上がったまでだ。まっ、いっか……次、気を付けようと解決かいけつさせた。


 ただ、楽しかったよな。


 それが、少しさみしくもあり、せつなかった。これ以上、進むことは出来ないと分かったから。ここで止まり。沢村自身も分かっていたようだ。“だから自分からは連絡は出来ない ” と、言ったのだ。

 ちょっとの可能性かのうせいでもさぐってみた。別に、進むことではない。仮に想像そうぞうだけしてみた。怖いもの見たさじゃないけど。


 40かぁ。いや、年齢ねんれいを取っ払ってみると、どうだろう。お互いに、好きなことやって、料理をする時に一緒に作ったりして。また、自分の時間を過ごして、ご飯を食べる時に話してみる……良いよな。そういうの理想だな。ジムだって、偶然ぐうぜん、一緒になったとしても、“ 頑張ろう、じゃあまた ” で、バイバイしてそう。


 あんまり、ベッタリとかは無さそうだし、一日中考えてたとかも無さそう。だって、美味しいもの作って、ジム行って、観葉植物かんようしょくぶつだろ。あ~、でもトキメキが無いか、これじゃあ友達って感覚か。


 今度は、周りの影響えいきょうを考えてみた。俺の友達……職場の同僚、先輩……


「お前、本気か? 相手、40はキツいだろ。止めとけって、もうその歳だと結婚だぞ。お前にその責任が持てるほど、本気じゃないだろ」

 ―― これは、俺の友達。きっと、いい子がいるって年齢ねんれいを言ったら、こんな反応になるんじゃないかな。

「ん~、そうだな。お前、子供とかいいの? 相手が40だと不妊治療ふにんちりょうとか考えるだろ、もし結婚とかすると……金が、かかるな」

 ―― これは、俺の職場の先輩。より、現実的だ。色々と経験をしているがゆえに、こういうアドバイスをくれそう。

「やめといた方が良いんじゃない。今、そんなことで悩んでるってことは、そこまで好きじゃないんだよ。相手の為にも、期待させない方が良いよ。友達のままでさ」

 ―― これは、俺の職場の同僚どうりょう。そうだよな、自分のことしか考えてないからダメだよな。相手に期待をさせたらダメか……。そうだよな、後から、すみませんでした、何でもありませんって言えないもんな。


 人を好きになった。


 ただ、それだけのこと。なんで、年によって、こんな悪いことをしているような気持ちになるんだろう。相手は40で、俺は30。ただ、それだけのこと。ただ、相性あいしょうが合えばいいってもんじゃない。近い年齢だったら、話が合って、盛り上がって、もう、俺たち運命じゃんなって、浅はかなこと言って。それだけで、付き合っちゃう?って軽く言えるんだろうけど、こんなに足がすくむような気持ちって、なんだろう。


 あ~、ダメだ。どんなに考えても、嬉しさや楽しさよりも苦労が大きい気がする。俺には、厳しそうだ。はぁ、あんなに楽しかったのに、今は憂鬱ゆううつだ。


 俺は、ジムの後に広い公園で過ごした。広場の前の階段で、季節が暖かく柔らかな風を感じていた。遠くから笑い声が聞こえる。違う場所だけど、同じように過ごしているかな。そんなあわい期待もあった。


 寒かった季節に出会って、一緒に過ごした時は、あっという間だった。彼女は、気づかないうちに、俺に影響えいきょうを与えて変えた。徐々に、お互いのことを知りたくなって、でも知ったら知ったらで怖くなって、先に進めなくなった。


 出会った時に、戻りたい。あの頃に、戻ればそのままでいい。一緒に買い物して、それで料理を教えてもらって、話した最初の頃。どうせ、みのらない恋なら、これまで頑張ってきたこと、やってきた楽しかった時間って何だったんだろう。


 進むのも怖い、だけど離れるのはもっと怖い。一緒になれないけど、友達ならいられる? 年齢を言った時の、沢村のさびしげな表情ひょうじょう脳裏のうりに、焼き付いていた。



















































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はじまりの後 水上絢斗 @mizuaya-710

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